「川岸さん…来るまで、先生も蘇生を繰り返して…。でも…基子さん…。…先生…、すみません、でしゃばって…。」
「川岸さん…、辛いだろうが、哀しいだろうが…。…そして、悔しいだろうが…、午前11時25分、ご臨終です。」
椅子に座って立ち上がることが出来ない川岸の肩に、
そっと医師は右手を置いて、それから基子に対して両手を合わせ一礼をして、
ゆっくりと病室のドアに向かう。
ドアに近づいた医師の目の前に、自然にドアが開き、
血相を変えた愛子が姿を現した。
真正面で医師の顔を見て、
医師は暗い表情のままで愛子に一礼をして部屋を出る。
そんな医師に愛子が…「先生…。」と声を掛けるが、
医師は、振り向き様に愛子に軽く会釈をして廊下に足を進める。
ドアを閉め、ベッドに振り返るその愛子の目に飛び込んだのが…。
椅子に座り、ぐったりとベッドに覆い被さっている川岸の姿。
「川ちゃん…モコ…、そんな…。」
車を運転中、愛子は嫌な胸騒ぎばかりを感じていた。
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