「琴~そんなに急いじゃ転んじゃう~!全く~!」 「元気で何より、なぁ琴ちゃん。」
「ママも~川じぃも早く、早く~!パパ、パパ~!」
「そんなに急がなくっても、パパはちゃ~んと待っててくれてるって~!」
栄二の墓前に川岸の課長昇進の報告である。
都会で墓を持つと言う事はそう簡単ではない。
その多くは建物中に墓を設けると言うケースもある。
だが新谷栄二の場合、昔ながらの寺にある叔父の健三郎の墓の趣に惚れ込み、
どうせ、都会で自分の墓が建物の中の小さな空間にあるよりは、
大空の下、尊敬する叔父健三郎と共に…。
と言う思いで、生前からその意思を叔父に伝えており、
健三郎もその意思を快く受け入れたのであった。
墓を綺麗にして清め、あらためて線香と花などを供え、
墓石の上から栄二の好きなブランデーを注ぎ、
手を合わせ栄二に課長昇進の報告。
「栄さん、事の成り行きで、俺…栄さんの跡…引き継ぐことになったんだ。見守ってくれるか…。」
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