「思い出してるの、あの日の事…。」
「…ん…???」
「あれから…5年…よね…。」
「…ん…???…んん…。」
気付かない内に、知らず知らずに左手の薬指を見つめてた。
「そう…あれから…5年…。」
忘れようとしても、「忘れさせない…」と、
別の自分が私の体を占めていた。
悲しい…なんてものじゃなかった。
いつも傍にいてくれた、優しく抱いてくれてた人が、
ドアを開けても、部屋のどこを見渡しても、
もうその姿は何処にもいない。
冗談混じりのあの声も聞こえない。
それでも、家の中には、正にそこにまだ住んでいるかのように、
夫の生活全てが存在していたのだから…。
夫の茶碗、夫のタオル、歯ブラシにコップ。
そして、一番はクローゼットの中の夫の衣類。
必然的に鼻をくすぐる夫の匂いに、
何度胸に抱きしめ…、その度に涙で顔を苛めた事か…。
時には、そんな哀しみが、
自分の感情を抑え切れずに、
部屋のあらゆるものを乱暴に掻き乱した事さえあった。
最悪の時には、薬を飲んで死のうかとも…。
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