こんにちは、犬の管理栄養士です。
今日の内容は今年1月に愛媛大学の研究チームから発表された、非常にショッキングな論文(調査結果)に関する6回目となります。
要約(原文)をご覧ください。
【論文要約】
原産国による汚染パターンの違い
地域ごとの特徴を分析する
ペットフードに含まれる汚れの傾向(地域的な特徴)をさらに詳しく調べるために、統計的な手法(主成分分析)を用いて分類を行いました。
その結果、乾燥したご飯(ドライフード)については、作った国による明確な違いは見られませんでしたが、水分の多い柔らかいご飯(ウェットフード)については、はっきりとした2つのグループに分かれました。
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米国産グループ: アメリカで作られた製品のグループ
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アジア産グループ: 日本、中国、タイで作られた製品のグループ
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アジア産のご飯に見られる「特有の汚れ」
日本やタイで作られたウェットフードには、特定の「鎖の長い成分(PFUnDAやPFTrDAなど)」が高いレベルで含まれていることが分かりました。
過去の報告でも、アジア周辺で獲れる魚介類からはこれらの成分が比較的高く検出されており、その影響がペットのご飯にも現れていると考えられます。
この傾向は、2000年代以降、化学物質の生産拠点が欧米からアジア(特に中国)へと移り変わってきた歴史的な背景とも一致しています。
中国から広がる「新しい成分(F-53B)」の影
分析を進めると、アジア産の製品から、地域特有の汚染物質である「9Cl-PF3ONS」という成分が見つかりました。
これは、中国のめっき工場などで、従来の汚染物質(PFOS)の代わりとして独自に開発・使用されている「F-53B」という物質の主成分です。
この物質は魚などに対して有害な影響を及ぼすことが分かっており、分解されにくいため、工場の排水などを通じて環境を汚染することが懸念されています。
F-53Bの使用は公式には中国国内に限られていますが、中国だけでなく日本やタイで作られたペットフードからもこの成分が検出されました。
これは、中国産の原材料が直接使われたか、あるいは汚染物質が国境を越えて広がり、アジア全体の材料供給網(サプライチェーン)が汚染されている可能性を示唆しています。
日本周辺の環境と「魚」の関係
日本の河川や海を調べた調査では、特定の成分(PFNAやPFUnDA)が日本の環境における特徴的な汚れであることが報告されています。
実際に、日本近海で獲れるカツオやタラ、食用エビなどの体内からも、これらの成分が主要な汚れとして見つかっています。
また、人間の血液を調べた研究でも、日本人は他国に比べてこれらの成分の濃度が高く、それは「魚介類を食べていること」と深く関係していることが分かっています。
私の知見:【アジアを飲み込む「見えない汚染」の正体】
今回の分析結果は、私たちが日々直面している「原材料選びの難しさ」そのものを表しています。
管理栄養士の視点から、特に注目すべき「アジア特有のリスク」を深掘りします。
■ 「国産」に隠されたサプライチェーンの濁流
日本で作られたウェットフードから、中国特有の成分「F-53B」が検出されたという事実は衝撃的です。
これは、たとえ国内の工場で丁寧に作っていても、原材料や添加物、油脂などの調達ルートがアジア全域に深く依存していることを証明しています。
汚染に国境はありません。
安価な原材料を世界中からかき集める「グローバルな供給網(サプライチェーン)」そのものが、意図せずとも汚染物質を日本国内へ運び込んでいるのです。
■ 日本・アジア特有の汚染物質「PFNA」と「PFUnDA」
次に、今回の論文でアジア産のフードから特異的に見つかった成分について解説します。
これらは「長鎖(ちょうさ)PFAS」と呼ばれ、特に蓄積性が高いことで警戒されている物質です。
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PFNA(ペルフルオロノナン酸):炭素の鎖が「9本」
かつて日本国内に大きな「フッ素樹脂(ポリフッ化ビニリデン:PVDF)」や「フッ素ゴム」の原材料となる化学物質の製造工場があったため、濃度が高い傾向にあります。 -
PFUnDA(ペルフルオロウンデカン酸):炭素の鎖が「11本」
炭素の鎖が長ければ長いほど「水よりも脂(生物の体)に馴染みやすい」という性質が強くなります。
そのため、海水に溶けている量よりも、魚の体内に「濃縮」される度合いが非常に高いのが特徴です。
何を作るための拠点だったのか?
以下の製品を製造する過程で、PFNAやその原材料が使用・排出されていました。
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ハイテク機器の部品: リチウムイオン電池の接着剤(バインダー)や、半導体の製造装置に使われる特殊な樹脂。
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耐食塗装: 化学プラントのパイプの裏打ちや、太陽光パネルの背面の保護フィルム。
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家電・自動車: 厳しい環境下でも劣化しないパッキン、シール材、電線の被覆など。
「東京湾」や「大阪湾」で濃度が高い
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製造工程での排出: 2000年代半ばに規制や自主削減が始まるまで、これらの工場から排水を通じて河川(特に大阪の淀川水系など)に流れ出していました。
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製品の「消費地」としての影響: 東京湾などの大都市圏は、これらのフッ素製品を使用した工場や家庭からの廃棄物・排水が集まる場所です。
コーティング剤が剥がれたり、洗剤や撥水剤が流れ込んだりすることで、底泥(海の底の土)にPFNAが蓄積しやすくなります。
■ 「脂に馴染む」=「細胞に入り込む」恐怖
PFNAやPFUnDAのような鎖の長いタイプは、とにかく脂に馴染みやすいため、愛犬・愛猫の細胞膜や内臓の脂し、なかなか離れません。
排出機能が人間ほど発達していないペットたちにとって、これは人間以上に「一度入ったら出ていかない汚れ」になります。
カツオやタラ、エビなどからこれらが見つかっている事実は、日本の海が過去の工業排水の影響から逃れられていない現実を突きつけています。
■ 代替成分「F-53B」の影と、産地選びの重要性
さらに、かつての有害物質(PFOS)の代わりに中国で開発された「F-53B」が検出されたことは、一つの毒を遠ざけても新しい「正体の分からない毒」が忍び寄るイタチごっこの現状を物語っています。
だからこそ、産地を厳選することは大事です。
同じ日本の魚でも、工業地帯に近い海域ではなく、外洋を回遊し、厳しい自然の中で育つ「知床の鮭」のように、どこを泳いできたかが明確なものを選ぶ。
PFNAのような「地域の汚れ」から愛犬を遠ざけるには、それしか方法がないからです。
【まとめ】
今回の調査結果を読み解く中で、私は言葉にできないほどの無力感と危機感でいっぱいです。
「中国産の未知の成分」が検出されたことも確かに衝撃です。
しかし、それ以上に私の胸を締め付けるのは、「国産なら安心」「近海の魚は体に良い」と信じて私たちが選んできたものが、実は正反対の結果を招いていたかもしれないという事実です。
かつて水俣病の歴史の中で、漁師である夫が、病に伏せる妻を想い「精がつくから」と獲りたての魚を毎日食べさせ、結果としてその愛情が妻の症状をさらに悪化させてしまった…という悲しい実話があります。
今のペットフードを取り巻く状況は、これと全く同じではないでしょうか?
「国産だから」「天然の魚だから」と、高価なフードを買い、愛犬・愛猫の健康を願って毎日お皿に盛り付ける。
その私たちの「愛情」が、実は過去の工業化の代償である長鎖PFAS(PFNAやPFUnDA)という消えない汚れを、愛犬や愛猫の小さな体に蓄積させていたのです。
これまでスーパーや専門店で「国産」というラベルは、一種の聖域でした。しかし、今回のデータが突きつけたのは、「日本の海そのものが、かつてのハイテク産業の製造拠点としてのツケを払わされている」という現実です。
東京湾や大阪湾といった、私たちの生活圏に近い海域ほど、かつて世界を席巻したフッ素樹脂製造の残滓が色濃く残っています。
「どこで作られたか(製造国)」以上に、「どこで育ったか(原材料の産地)」、そして「どの部位か」を執拗に問い続けなければならない理由が、ここにあります。
良かれと思って選んだ食事が、愛犬・愛猫を内側から蝕んでいるかもしれない。
この事実に気づいたとき、私たち家族にできることは「絶望」することではなく、「選び方を変える」ことだけです。
「なんとなく国産だから」という思考を捨て、科学的なデータに基づいた「真の安全」を追求すること。
それが、今の時代を生きる愛犬・愛猫たちへの、本当の意味での愛情なのだと私は確信しています。
では、これほど広範な汚染の中で、私たちは一体何を基準に選べばいいのでしょうか?
次回は、さらに衝撃的なデータ「一日の摂取量」から算出された、愛犬・愛猫たちの健康リスクの正体に迫ります。
私たちが良かれと思って与えているその一食が、実は国際的な安全基準を大きく超えているかもしれないのです。
最後まで読んでいただき感謝でいっぱいです。