BABYMETAL試論 | 真面目に脱線話@リンガランド英語塾

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英語や芸能など、思いついたことを適当に書いていくという、そういうブログです。

唐突で少なからず戸惑ってしまった。知人が「BABYMETALはいいよな」と言った。久しぶりに飲みに行った途中の電車の中のことだ。BABYMETALは名前は知っていたものの、どんなバンドかは知らない。でも、酔ったいきおいもあって、なんとなく「ああ、BABYMETAL、いいですよね」と答えてしまった。



その方は私よりひとまわり以上年上で、ビートルズの洗礼を受けたこともあり、私など足下にも及ばないほどロックやメタルなど洋楽のことにくわしい。この世代はけっこうな金額を音楽につぎ込んでいて、耳が肥えている。知らないのに話を合わせたのには、「この人がいいと言うのだから、まあいいのだろう」と思ったというのもあった。



とはいえ、次に会うときに話題になっても困るので、うちに帰ってからBABYMATALをYouTubeで見ることにした。



YouTubeの検索トップに来たのはGimme Chocolate!!(ギミチョコ!!)という曲。再生回数はこのときすでに3000万回を超えていた。



さっそく再生。イントロは速いテンポで軽めに入る。「なるほどアイドルっぽいなあ」といった印象だったが、そのあとに予期していないことが。聞こえたとおりに書き起こすと、「あたたたたた ずっきゅん! わたたたたた どっきゅん!・・・」という少女2人の叫びから始まる。



「なんだこれは!」といった感じになった。虚を突かれたというか、度肝を抜かれたと言うか。私はてっきりメタル好きの若い女の子たちがバンドを組んだのだと思っていたので、予想が裏切られた(たぶん、これが多くの人にとってのBABYMETALの原体験だろう)。



少し興味が出てきて、ネットで調べてみた。私にとっては「発見」の連続だった。



BABYMETALは「さくら学院」というアイドルグループから選抜されたアミューズ所属の3人のダンス&ボーカルユニット。つまり、幼い頃からプロとしての訓練を受けてきた生粋のアイドルたちだ。



BABYMETALの遍歴や活動についてはWikipediaに詳しいので書かないが、何より驚いたのは、Wikipedia日本語版以外にも英語など21カ国語版で載っていることである。つまり、デビューしてそんなに経っていないのに、もちろん「世界中で人気」は言い過ぎにしても、人気が複数の国にまたがっているというのは驚異的だ。デビュー時、3人はまだ中学生だったということなので、世界のショービジネスにおいても1つの快挙だろう。



調べていて腑に落ちたことが1つだけある。それは、BABYMETALが最初から「アイドルとしてメタルで成功させよう」といった明確な目標で突き進んでいたのではないことだ。



BABYMETALはアイドルの枠内で行われた実験から始まる。「メタルのアイドル」でなく、あくまで最初は「アイドルがファッションとしてメタルを取り入れてみる」という実験だ。実験は成功するが、だんだんと引力はメタルのほうに引き寄せられていく。やがて、国境をまたいだメタルファンに「発見」され、人気を博してしまう。



ところで、本ブログでは何度か主張したことがあるのだが、現在は「ローカルアイドル」の時代だ。



ローカルアイドルとは「地元のアイドル」のことだが、広義で言えば「声優界のアイドル」「鉄道ファンのアイドル」「大学のアイドル」など、ある限られた場の中で限定されたアイドルもローカルアイドルだと言える。



最近、本ブログで石原さとみさんのことを取り上げたとき(→過去ログ)、私は「石原さとみは(「アイドル女優」ではなく)女優界のアイドルである」と定義した。現在は松田聖子的な「国民的アイドル」が成立しにくくなり、限られた場でアイドルを輩出するというのが主流になりつつある。



そういう意味では、BABYMETALは「メタル界のアイドル」と言っていいだろう。他のローカルアイドルと違うのは、「メタル界」がイギリスをはじめ世界中に一定の領域を持ち、国境をまたがっていることである。



BABYMETALが「メタルを取り入れたアイドル」から「メタル界のアイドル」へ変質したとき、国境をまたいだ活躍になる条件がすでに整っていたのである。





ただし、本来メタルはKawaiiとは相容れない、暴力性や死の衝動の肯定といった負の要素を積極的に表現するものだ。いや、だからこそ、Kawaiiをそのまま体現した少女にメタルのファッションを取り入れることに面白さがあったわけだが、メタル自体もいつのまにかKawaiiが成立する土壌が出来ていたという幸運も重なっていたのだろう。



こういったことは理解できる。たとえどんなコアなファンしかいない分野でも、長く続いていくと、流行に敏感な人に「発見」されて紹介され認知さて、やがてライトなファンがついてきて、だんだんその分野自体も「ライト」を取り入れていくようになる。そして、コアと大衆に分かれてお互いが刺激し合い存続する。



もう1つ留意しなければならないのは、メタルがKawaiiのすべてを排除しているわけではないことだ。たとえば、Kawaiiの側で成功したきゃりーぱみゅぱみゅのミュージックビデオには、目玉や骸骨といった「グロ」が少なからず取り入れられている。



Kawaiiを尖鋭させていくと、その先にあるのは「死の衝動」である(長くなるので、ここでは触れない)。だから、原宿のKawaiiが、サンリオに収まらず「グロ」の一歩手前まで行くのはごく自然なことだ。だから、Kawaiiの最先端が「死」や「暴力」を肯定するメタル的なものに近づくのは、まるでおかしなこととまではいえない。



そのように、メタルもKawaiiも過渡期にあったことが、BABYMETALが広く受け入れられる素地となったのだろう。



加えて、日本人には世界で認められた日本人を評価したがるという長年の伝統がある。



BABYMETALがメタルという国境のない場=世界的な場で成功したことで、「世界的なアイドル」として評価を高める。



そうやって、メタルという場で成功したアイドルは、日本人にとっても誇るべき人気アイドルとして(この場合はメタルファンという制限なしに)人気者になっていく。



ただし、BABYMETAL成功の裏には、日本のエンターテイメント業界で磨き上げられてきた仕掛けと工夫がある。



YouTubeで見ると、BABYMETALの音楽を支える演奏はかなり高いレベルにあり、楽曲も(X Japanを含んだ)メタルの名曲の構成を取り入れた作り込んだものであろう。また、メインボーカルの中元すず香さんの歌唱力も、その年齢からすればそれなりに高いレベルにある。しかもダンスユニットの一部として踊りながら歌っていることが考えれば、ハイレベルなパフォーマーである。



つまり、日本のアイドルの公式である「未成熟さを応援したくなる」を逸脱して、パフォーマーとしてそれなりの高いレベルを維持していることが、何よりも成功の土台となっている。



ただし、それだけでは「メタル界のアイドル」は成立しない。アイドル然としたボーカリストが成功しても、あくまで「愛らしいボーカリストの成功」であっても、「アイドルの成功」ではない。



それを成立させているのが、まだ15歳のダンス担当の2人だ。レベルの高いダンスを見せながら、一貫してKawaiiを演じている。(世界レベルで見れば)凡庸な「アーティスト」にも流れかねないBABYMETALを、「アイドル」側に引き寄せるのがこの2人の役目だろう。



極論すれば、ダンスという一見音楽とは関係ないところで、BABYMETALの「アイドル」のほとんどを作り上げているのがこの2人だろう。この2人はそれぞれがショービジネスに携わる者として強い個性を持ちながら、踊っているときはまるで双子のようにシンクロ度の高いみごとなダンスを見せている。



そして、2人のダンスは日本的なKawaiiを巧みに表現している。いわば「Kawaiiのプロ」である。





日本においての「アイドル」の成功は、多くの人が応援できる未成熟さを持ち合わせているかどうかにかかっている。たとえば、誰もが納得する完全無欠の美少女がいたら、その少女は「美少女タレント」であって「アイドル」ではない。「アイドル」には多くの人が愛すべきだと感じる「欠点」や「媚び」が必要である。



このアイドルの公式は、多くの場合、海外では通用しない。たとえば、欧米であればパフォーマーはエンターテイメントとしてレベルの高いパフォーマンスを見せるものである。「自分のドジを見せて親しみを持たせる」というのは、大衆の心をつかまなければならない政治家には役に立つかもしれないが、ショービジネスに必須ではない。



BABYMETALはそういった「欠点に萌えさせる」という日本のアイドルの戦略ではなく、「ライブで楽しませる」というプロのエンターテイメントを成立させているから、海外でも評価されうるわけだ。



もう1つ留意すべきなのは、日本においてアイドルを消費する年齢が高齢化していることだ。従来のアイドルは若い男女だけのものだったが、子供を作らない人が増えたこととあいまって、中年以降になってもアイドルを消費するニーズがある。



かつてのアイドルファンの形態は性欲に支えられた「熱狂」だったが、現在のアイドル消費は「父のようにアイドルを応援する(その究極がAKB選挙のCD複数買い)」「母のようにアイドルを応援する」に変質してきている。いわば、「付き合いたい願望」から「育てたい願望」への移行である。日本のBABYMETALファンの多くは、海外を舞台に活躍しようとしている自分の娘を応援するように、3人を応援しているのではないだろうか。



ただし、世界はいろんな面で日本化しており、日本的なショービジネスのあり方も海外でもちょっとずつ広まっている(アメリカで2011年に起こったRebecca Black旋風など、その典型だろう)。日本のアイドルがそのまま海外で通用するとは思わないが、それなりの工夫によって面白い成果を見せることは大いにありうる。



日本のショービジネスにとってこのBABYMETALという「発見」は大きなものだ。世界にまたがっているメタル界でアイドルが成立するのなら、金脈はほかにも見つけられうる。ただし、それは「○○でアイドルしてみた」というレベルではダメで、BABYMETALのようにその場を熟知し、高いレベルで表現できる技術が必要になる。



BABYMETALの成功は、アイドルにメタルをやらせたからではなく、アイドルという器でメタルを表現したことにある。しかも3人が若くして高いレベルにあったパフォーマーであるからこそ可能なのであって、たとえばAKB48から誰かやらせてみようなどといったことをやると、台無しになりかねない。



それくらいBABYMETALのKawaiiは本質的であり、日本のショービジネスにおける可能性である。




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