大阪はなぜ衰退したか | 真面目に脱線話@リンガランド英語塾

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先週末、大阪市民による住民投票がおこなわれ、橋下徹市長が提案した大阪都構想が僅差で否決された。



反対が過半数となった理由は、「大阪を変えたい」という若年層や現役世代より、現状維持を求める年配者など行政のサポートを必要とする人たちの数が勝ったとされる。大ざっぱな総括としては、おそらくそれでいいのではないかと私も思う。



なぜ熱も冷めた今になってこの件を取り上げることにしたかと言えば、橋下市長の今回の挫折が日本にとっても大きな意味を持ち、今後のことを考えてもその影響は小さくないからである。



橋下市長が「都構想」をぶち上げた理由は、もちろん大阪が長い期間にわたって衰退しているからだ。



人口の推移を見ると、1960年代に300万都市だった大阪市は、70年代に入って徐々に人口を減らしている。



これは、関西においてすべての中心機能が集中していた大阪市が、いち早く都市機能の分散に舵を切ったことが大きいだろう。この頃の人口減少は「衰退」ではなく、意識的におこなわれたものである。





当時は東京にせよ大阪にせよ、人口集中がひどく、そのせいで都市機能が麻痺することが本気で懸念されていた。だから、都市機能を分散させる政策をとったこと自体は仕方がなかった面はある。



深刻なのはバブル経済が崩壊して経済が落ちこんでも、方針転換することなくこの政策を惰性で続けたことだ。1978年に横浜市に抜かれて、人口が260万人台まで落ちこんで経済が停滞しても、大阪市は手をこまぬいて対策らしい対策を立てなかった。



実際、バブル経済期に本気で首都機能の移転を考えていた東京は(東京都自体は、移転に反対であったが)、その後、石原都知事時代に方向を大きく転換して、また集中のほうに舵を切って成功した。現在は東京駅周辺や品川・渋谷・新宿などで再開発が進んでおり、地価も他の都市を引き離して大きく上昇している。



大阪の衰退に輪を掛けたのは、おそらく自動車産業を中心とするエレクトロニクス産業を市内から分離したことではないだろうか。



現在の日本経済を支えている最も大きな柱が自動車であることにおそらく異論はないはずだ。自動車はエレクトロニクスの固まりであり、素材やエネルギー面からも産業の裾野が大きく、経済的な恩恵も拡がりやすい。



実際、東京以外の大きな都市を見ると、横浜市には日産、名古屋市にはトヨタ、広島市にはマツダがある。自動車産業があるだけで、その都市は経済面でも、また雇用の面でも大きな恩恵が受けられる。




もちろん、大阪にもダイハツという立派な自動車会社がある。だが、ダイハツも本社を大阪市から60年代に大阪府池田市に移転している。同じ大阪府内であっても、大阪市自体は直接的な恩恵は受けられないことになってしまう。



大阪にはダイハツ以外にもパナソニックやサントリーなど日本を代表する企業がいくつもある。だが、その中でも大阪経済を支えるべきパナソニックも本社は大阪市ではない。三洋電機と合併して新たに自動車の心臓部となる電池をにぎったところで、提携すべき自動車会社が周りになければ、結局は本社の集まる東京に、実質的な本社機能を移転するしかなくなってしまうわけである。





大阪市は機能分散、とくに工業関連会社の本社や大規模工場を大阪市内に集めなかったことによって、経済力が弱まり、徐々に都市としての活力が奪われていった。



また、ダイハツはトヨタや日産やマツダといった会社ほど規模も大きくはなく国際性もまだこれからなので、今のところその恩恵を地元に広く行きわたらせるほどの力がない。



ちなみに、大阪市に本社を持つシャープが高い技術力を持ちながら、情勢からちょっとだけズレた経営方針を変えられずに衰退していったことも、もしかしたら関係あるのかもしれない。大阪や奈良にこだわり、創造性の醸成に必要な「他との接触」を実質的に断って、独善的な考え方に陥ったことが大きかったのではないかと私は疑っている。



大きな雇用機会のある産業を外に出せば、中に残るのは主に「住人」である。働き盛りの住人が多いうちはいいが、高齢化が進んで退職者も増え、また不景気による失業者まで増えると、行政サービスが肥大化する。



金融や行政は残ったが、都市機能を維持するのに最も大事なのは雇用である。失業者を吸収するような新たな産業を生み出す力はなく、この状態が続けば、収入は減っていくのに支出が増えていく一方になってしまう。



だから単純に考えて、これから大阪市に活力を与えるためには、これまでの道の逆をたどっていけばいいとわかる。



周りの都市と合併して「大阪市」の領域を広げて、優良な企業の本社や工場をできるだけ市内に集中させて、国際性のあるオフィス街を作る。そうすれば、少なくとも理屈上は大阪市は活力を取り戻せるはずである。



これに本気で取り組んだのが橋下市長だった。まず、大阪府の有力都市、堺市と合併して、全体を「大阪都」に組み替えて司令塔を一元化し、関西の中核として都市機能を集中させようとした。



だが、堺市との合併も大阪都構想も住民の反対で頓挫した。そして、大阪都構想の否決を受けて、先週末に橋下市長は政治家の引退を宣言するに至った。橋下氏は精神的にタフな人物だし、政治家として若くまだまだこれからだが、今回の挫折で文字どおり力尽きたのではないだろうか。



関西は首都圏や名古屋圏とは違いそもそも中央集権的ではない。京都や神戸や堺など個性的な都市に囲まれており、いわば「大阪とアンチ大阪」で形成されている。そのため、「あえて大阪を外す」という発想も出てきて、東京のように機能を集中させるための核を作りにくい面もある。



「大阪都」は大阪復興の第一歩、都市機能集中のための手続きに過ぎない。それすらできないのだから、その「先」を考えると絶望的な気持ちになるのも理解できる。





今回、橋下構想が頓挫したことも小さくないが、さらに深刻なのは橋下構想が必要だと多くの人がわかっていながら、大阪市にはそれすら取り組むことすらできない状態にある点だろう。



これは、最初に述べたように「これから」を求める市民より、現状を守りたい市民が多いからにほかならない。そうなると、どんなに明るいビジョンを持った政治家が大阪市に現れても、改革はできないということを意味する。



これは大阪に限ったことではない。日本中の多くの都市や町がこの状態に陥っており、どんなに強い改革の意志を持った人材が現れても、それを発揮する環境が作れなくなっているのである。



ただし、だからといって日本全体が暗礁に乗り上げているわけではない。改革の意志というのは若者の特権などではなく、すでに現役を退いた年配者も同様に持っているからである。問題は「どうやって説得するか」にある。



都構想反対派の試算では、大阪都にするために少なくとも600億円ものコストがかかるという。大阪の未来より自分の寿命を意識している年配者にとっては、「自分が生きているあいだに、それが回収できるとは思わない」と感じれば、大阪都に賛成する気持ちにはならないだろう。



だが、その600億円によって自分の孫の世代に大きな恩恵があるとわかれば、その中にも賛成に回る人たちが出てくるはずだ。



橋下陣営がやるべきだったのは、「こんなにメリットがある」という都合の良いことをだけを言い立てることではなかったはずだ。「こんなメリットとデメリットがある。だが、目の前のデメリットは、○年後にはこんなメリット、×年後にはこんなメリットが生まれる可能性がある」などと、できるだけ公平・正確に伝えて、有権者を説得しようという姿勢のほうが求められていたのではなかったのだろうか。



今回はそれを徹底しなかったために、既存政党の反対意見のほうが説得力を持ち、「現状維持はベスト」の人たち年配者の多くを動かすことができなかったような気がしている。この層を動かすにはしつこいほどの繰り返しが必要である。



大阪の問題はこれから東京を含むあらゆる都市でも起こっていくことになるし、二重行政をやっているのは大阪だけではない。上で述べた横浜や名古屋や広島、あるいは経済が好調な福岡であっても、いつかは起こってくる問題である。今回のことをひとごとだと考えずに、自分たちはどうするべきかを考えるきっかけにすべきだろう。



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