ただし「記事」とは言っても、文章で論じたものではありません。Paradoxes of Creative Thinking(クリエイティブ・シンキングのパラドクス)というタイトルのもと、13の英文が箇条書きで羅列されているだけです。
そこで、提示されている考え方について、訳とともに、自分なりに簡潔な解説を追加していこうと思います。
本ブログのクリエイティブ・シンキング関連の記事をよく読んでいる方や『クリエイティブ・シンキング入門』を一読したことがある方なら、おそらくすぐに「あれだ!」とピンと来るはずです。
「なぜパラドクスなんだろう?」と考えた方もいらっしゃるでしょう。このパラドクスとは、矛盾する2つの要素を同時に抱えるということです。
でも、「お前の考え方は矛楯が多い」とか「あなたの意見は矛楯している」と言われて、うれしい人などおそらくいないでしょう。
ところが、クリエイティブであるとは、一見すると矛楯しているかのように見える逆説的な複数の要素を、みずからの中に意識的に抱え込むことでもあります。また、そういった芸当ができる人が少ないからこそ、クリエイティブな人は世の中には少ないのだとも言えるのかもいしれません。
では、1つ1つ見ていきましょう。便宜的に、各英文に通し番号を付して、省略されたところも補ってから、提示いたします。
(1) To create, a person must have knowledge but be able to think naively.
「創造するには、知識があるとともに、子どものように考えられなければならない」
クリエイティブであるためには、その分野に知識があるというのは大前提です。以下のすべてのルールにも当てはまります。
ただし、ここで大事なのは、きちんとした知識がありながら、それと同時に、そこのことについて何も知らない子どものように無邪気に、そして自由奔放に考えることです。知識には「枠」がつきまといます。そして、知識を得ると同時に、私たちの思考は「枠の中」に収まってしまうのです。でも、それではダメ。
世の中で「天才」と呼ばれる人に、その分野の大権威でありながら、まるでいたずらっ子のようなきらきらして目をしていることが多いことに気づいている方もいるでしょう。そういったいたずらっ子の突飛さがクリエイティブな活動には必要です。
(2) To create, a person must be able to make the familiar unfamiliar.
「創造するには、慣れ親しんだことを、初めてのことのようにできならなければならない」
私たちは同じ行動をしていると、習慣的にいつのまにかそれを意識しないでできるようになります。これはこれで大事なことです。ただ、それ以外のことを考えられない環境下ではクリエイティブさから離れてしまいます。繰り返しの習慣のパターンをすこし変えるだけで、ものの見え方が劇的に変わることも珍しくはありません。
(3) To create, a person must be able to make the unfamiliar familiar.
「創造するには、初めてのことでも、慣れ親しんだことのようにできなければならない」
「初めてのことは面倒だからやりたくない」というのでは、新しい経験は増やせません。新しい経験をせず、既存の経験を繰り返すだけでは、考え方の進歩など望むべくもありません。
それに対して、新しいことを何でもチャレンジするという「習慣」があったとしたら、どうでしょうか。新たな経験がどんどん増えて、考える枠も増やせるはずです。そうやって、人が経験していないことを経験し、経験を厚みを増やせれば、ほかの人ができない発想や行動ができるようになります。
(4) To create, a person must expect the unexpected.
「創造するには、想定外を想定していなければならない」
それだけ「例外」を自分の想像力で想定できるかが、その人の思考の枠に広さを決めます。「こんなの予想していなかった!」と愚痴ばっかりこぼしている人は、現実の理不尽さを嘆くより、むしろ自分の想像力の貧困さを疑ったほうがいいのかもしれません。
(5) To create, a person must look at the same thing as everyone else but see something different.
「創造するには、世間的な見方をするとともに、世間とは違った見方をするようにしなければならない」
「世間一般が何を求めているか」は多くの人にわかるものです。でも、それだけでは世間並みの考え方しかできません。世間とは違った目を持っているからこそ、新しいことが成し遂げられます。大衆の目と改革者の目の両方を持った人と言えば、たとえばアップル社のスティーブ・ジョブズはその典型です。
(6) To create, a person must make connections between dissimilar things without being mentally disturbed.
「創造するには、共通点のないものどうしを内面で冷徹に関係づけなければならない」
本ブログでは何十回も言ってきたことなので捨象します。クリエイティブ・シンキングにおける基本中の基本です。
(7) To create, a person must be aware of experts but know how to ignore them.
「創造するには、専門家の言うことを聞き、かつ専門家を無視する方法を知らなければならない」
専門家とはその分野について自分以上の知識を持っています。でも、そのために自分のかたくなな枠があり、新しいものを受け付けなくなっています。専門家は利用すべきですが、専門家の意見を聞いていては、新しいものはいつまで経っても生み出せないでしょう。
クリエイティブに生きたい人は、専門家からは技術や情報は学んでも、意見は無視するくらいでちょうどいいのです。
(8) To create, a person must work hard but spend time doing nothing.
「創造するには、熱心に仕事に取り組むとともに、何もしない時間も作らなければならない」
専門家になるには、その分野の勉強や仕事をたくさんこなさねばなりませんが、それだけだと知識は散らかったままで、センスも摩耗します。何もしない時間があれば、体は動いていなくても、脳は勝手に知識の混乱を整理してくれます。
また、新たな発想は何もしないときにこそ生まれやすいものです。
(9) To create, a person must learn how to fail in order to succeed.
「創造するには、失敗の仕方を学んで、成功につなげなければならない」
成功するのに必要なのは、知識と経験です。とくに失敗の経験は私たちを成長させてくれます。失敗を怖がって新たなことに取り組まない人、失敗したことを認められなくて自己正当化ばかりしている人は、いつまで経っても成長できません。
失敗の経験こそが、その人にとっての本物の財産です。
(10) To create, a person must create many ideas with most of them bad.
「創造するには、ほとんどがムダになってしまうほどの膨大なアイデアを作らなければならない」
クリエイティブ・シンキングとはダーウィンの進化論のしくみを思考で起こすことです。クリエイティブなアイデアを生み出したかったら、とにかく数を出してみること。どんなにくだらないように思えるアイデアでも、心にブレーキをかけず、とにかくたくさん出すことが肝要です。
(11) To create, a person must be certain about uncertainty.
「創造するには、よくわからないということがどういうことかわかっていなければならない」
世の中には不確定なことがたくさんあります。不確定だからとそれを避けていては、新しいことは起こりえません。不確定とは可能性のことだからです。
(12) To create, a person must fantasize while still have rooted sense of reality.
「創造するには、現実的でありながら、空想的でなければならない」
成功者とは、子どものような空想家・理想家であり、かつ冷徹な現実主義者であり、すべてを疑がってかかる懐疑主義者でなければなりません。ハマルコ氏は、その典型例こそが、かのウォルト・ディズニーだと述べています。
(13) To create, a person must be confident while afflicted by self doubt.
「創造するには、自信満々でありながら、自らが信じられないことに悩まなければならない」
「みずからを疑いながら、みずからに自信を持っている」という相矛盾する2つの態度がある人が、大きな仕事を成し遂げるクリエイティブ・シンカーの最大の資質だと言っていいでしょう。
以上、クリエイティブであるための13のパラドクスについて見ていきました。これらのことができれば、誰であっても時代をリードできるクリエイティブ・シンカーになることは可能です。ぜひ1つ1つ自分の環境に合わせながら身につけていってください。
なお、このことをもっとくわしく具体的に知りたい方は、マイケル・マハルコ著『クリエイティブ・シンキング入門』をご一読ください。

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