信仰箇条は、キリスト教教会で信仰ルールをまとめたもので、いわゆる信仰告白が基本となっています。転じて「成功するための行動原理をなすもの」と考えてよさそうです。
筆者は『Innovation You』が好評のJeff DeGraff氏です。彼はイノベーションをシステマティックに発展させる方法を提唱して、企業経営に影響を与えているビジネスにおけるクリエイティビティ指導の専門家です(→外部記事リンク)。
St. Augustine, the brilliant Bishop of Hippo and Professor of Rhetoric at Milan, crafted the Christian Neo-Platonist world view of an unseen and untouched world residing above the earthly one scourged by the infidels and idolaters of the day. His catchphrase credo ut intelligam, "I believe in order that I may understand," encapsulated this worldview throughout the Dark Ages. Ironically, after centuries of aggression and regression, secular universities reignited science and empirical inquiry into the workings of nature. Renaissance Man cleverly turned the phrase on its head to become the rallying cry for progress ― intellego ut credam, "I think so that I may believe."
「ヒッポレギウスの主教にしてミラノの修辞学校教授だった聖アウグスティヌスが作り出したのは、当時の無神論者と偶像崇拝者によって攻撃され、現世を超えたところにある見ることも触ることもない世界という新プラトン主義キリスト教徒の見方であった。彼のキャッチフレーズであるcredo ut intelligam、つまり「私は知るために信ずる」は、暗黒時代の世界観を要約したものだった。皮肉なことに、侵略と抑圧の数世紀ののち、世俗の大学は科学と実証分析を再活性化して自然の営為へと高めていた。賢くも、ルネサンス的人間はそのフレーズを逆さまにして、intellego ut credam、つまり「信じるために考える」という進歩への切実な希求へと変えた」
すこしばかり難解ですし、キリスト教に関心がない方はどうでもいい内容でしょうから、ここは流してください。内容が気になる方は、キリスト教の主流が「考えるために信仰する」から「信仰のために考える」という態度に変わって、お金儲けをすることが悪から善に変わり、産業革命が起こって世の中が大きく前進したことだと考えてるといいのではないでしょうか。
このたとえは、もちろん人間の行動原理を示しています。たとえば、自分の才能を信じて「オレはビッグになる!」と行動を起こすのが「考えるために信仰する」で、試行錯誤を繰り返して「オレはビッグになる!」を徐々に達成していこうとするのが後者だと考えるといいのでしょう。
Enlightenment may be to some degree an article of faith but in substance it is an act of investigation and demonstration. This is particularly true when the emerging future is discontinuous from our familiar past as is always the case with radical innovation or accelerated change. Divergent experiments and experiences that explore new ways and means are prerequisites for the beginner's mind where the world is made anew.
「自己啓発はある程度は信仰箇条になりうるが、実質的には調査と発表をおこなうことである。これがとくに当てはまるのが、急激なイノベーションや加速する変化にはいつもついてまわるように、見えてきた未来が私たちの慣れ親しんできた過去と切り離されることである。新たな方法や手法を試す分岐点となる実験や経験は世界を一新するような初心者の精神が必須である」
これはクリエイティビティの解説です。イノベーションを起こす人は、その分野にくわしくない人物(=初心者)、あるいはほかの分野から自分の分野に見地を持ってこられる複眼の持ち主であり、その分野に詳しくないからこそ「子どもの目」で新しいことが成し遂げられるというわけです。
イノベーションを起こすにはそれまでの蓄積や経験をいったんなかったことにして、枠にないところから出発することが必要です。
If imagination is the laboratory of creativity, then investigation is its proving ground. It is only in the mind or other forms of simulation that we can make quick turns without hitting the retaining wall where our wheels fly off. Consider Einstein's midnight ride on a beam of light across the universe. The psychedelic imagery of that excursion took him to the theory of special relativity and transported us all to modernity. But he had to zigzag past the refutations with mathematical shoptalk and amaze the midway mob with demonstrations of dexterity. He survived the erratic weaving in and out of lanes until his heterodoxy became our orthodoxy. While the dream moves the somnambulist to walk, the body moves him from place to place and provides opportunities to stumble and awaken.
「想像力がクリエイティビティの実験室であれば、研究とはそれを立証する土台である。心の中だけに、あるいは別形態の模擬実験にだけ、固定された壁にぶつかってハンドルが飛び散るようなこともなく、速やかに順番を変わることができる。宇宙を横切る一条の光にアインシュタインが暗闇に乗ったことを考えてみよう。冒険の幻想的イメージによって、彼は相対性理論を訪れ、私たちすべてを近代へと誘った。だが、彼は数学的な四方山話から来る反駁を交わしながらジグザグに進み、その途中で大衆たちを起用に驚かせねばならなかった。彼は突発的な荒波が中も外も襲う中をやり過ごしてから、最後にやっと異端が正統に変わったのである。その夢がアインシュタインという夢遊病者を歩かせている一方で、その体は彼をあちらこちらに移動させてから、つまずいて目が覚める機会を与えた」
アインシュタインは、相対性理論という「大イノベーション」を起こして物理学者を驚かしましたが、そこからが大変でした。既存の考え方にしがみついて批判を繰り返す者、など様々な攻撃や無理解や罵詈雑言に悩まされます。そういったものを乗り越えたのち、彼の理論はやっと正当に評価されます。
頭で考えれば、「すごいものを作った」→「世の中が変わった」と単純な図式で済むことですが、この矢印の中にはとんでもない数の紆余曲折があります。先駆者の苦労は前だけではなく、後ろだというわけです。
If our situation is well considered, our goals clear and our means amply supplied, we are ready to start taking action on our tasks and initiatives. While big plans often inspire us to begin worthwhile expeditions, they often mislead us with our own assumptions that we know the country well. We can still hear Dr. Johnson admonishing the wayward traveler through the centuries, "The road to hell is paved with good intentions." So while it is useful to dream big and fix this destination in the heavens as a guiding light, it is provident to be careful and flexible in the paths we take so that we may arrive intact.
「もし現状がきちんと考慮されたら、目標が明確になり方法が十分に与えられて、日々の仕事や起業に向けて行動をとる用意ができる。大きな計画を立てると、価値のある旅を始めようとやる気が出ることが多い一方で、その国のことをよく知っていると思いこんで道に迷ってしまうことも多い。何世紀にもわたって、ジョンソン博士が頑迷な旅人に「地獄への道は善意で舗装されている」と警告するのをいまだに耳にすることがある。だから、大きな夢を持ち、天国への道を決めることが有益である一方で、無事に到着するために自分が選んだ道で慎重かつ柔軟であることは先見の明である」
未来のことばかり考えていても、やはり現状というものを考慮しないと、世間的な成功を得るのは難しいという記述です。新しいことを作るのも大変ですが、作ってからも大変です。
そんなことを言うと、最初に成功者への嫉妬から足を引っ張ることを思い浮かべますが、実はそれはさほど大きな問題ではありません。
「そんなことうまくいくはずない!」と言う人も、何も相手の足をひっぱろうとしているわけではありません。良かれと思ってアドバイスしたり支援しようとしているわけです。新しいことをやろうとする先駆者たちは、そういった「善意」とも戦わなければならないのです。
Never trust a plan without proof of concept. To test its validity, target specific goals and diversify the actions (Collaborate, Create, Compete and Control) taken to accomplish them. Instead of trying to find the optimum path to success, which will inevitably lead back to the status quo or incrementalism at best, widen the array to accelerate failure and quickly show small wins. Use the exploration phase to rapidly experiment and explore what really works and doesn't so that solutions are tested and true and momentum is maintained. Exploit the productive dynamics of innovation:
「コンセプトが証明できないような計画を信用してはならない。その有効性を調べるために、目標を絞ってから狙いを定めて、それらを実現するためにとるべき行動を分解しよう(協同する、創造する、競争する、抑制する)。成功に最適な道を見つけようとするのでは、必然的に現状に戻ってしまうか、ほんのちょっとずつ近づくくらいが関の山で、手順が拡がって失敗を増長するか、じきに小さな勝利が見えるだけだ。調査段階を活用して、何が有効で何が向こうかを速やかに実験・調査すれば、解決法が検査済みになって、勢いが維持される。生産的なイノベーションの力学を作っていこう」
筆者は、段階を追って調べることの大切さを力説します。成功しようと思って「これだ!」と思う道を進んでも、それは多くの場合すでに誰かが歩いた道である可能性が高く、その道を進んでも、先行者のマネに陥ってしまいます。「現状」か、せいぜい「先行者がやったことをちょっと改善してみた」といった程度です。
そして、筆者は成功の「信仰箇条」を次の5つにまとめます。
(1) Grander is Better: Goals should be important enough to inspire and motivate positive and new changes
「大きいほどよい…目標の重さは、前向きで新たな変化を刺激して高めるところのあるべきだ」
(2) Wider is Better: Take at least three highly differentiated approaches to the task or initiative
「広いほどよい…仕事や新規事業に対しては、3つ以上の全く異なる方法をとろう」
(3) Less is Better: Spend as little time and money as possible in this early phase so that there is little vested interest in keeping on with an unsuccessful approach
「絞るほどよい…この初期段階で費やす時間とコストをできるだけ小さくすれば、今の利益を成功に結びつかない方法につぎ込まないですませられる」
(4) Early is Better: Fail early and out of sight to get to the successes sooner
「早いほどよい…早く失敗して次に移れば、より早く成功に結びつく」
(5) Smarter is Better: Postmortem every aspect of the approach to quickly learn what works and what doesn't, and incorporate these key insights into future plans and actions
「合理的なほどよい…その方法をあらゆる角度から反省し、何が効いて何が効かないかを素早く学び、そういった重要な洞察を将来の計画や行動に組み込もう」
This approach requires successfully managing paradoxes: Have big dreams but run little pilots to proof the concept; launch radical and diverse initiatives but spend very little on them; intentionally accelerate failure early so that potential solutions are more viable and sustainable.
「この方法ではパラドクスをうまく生かすことが求められる。大きな夢を持とう。でも、ちょっとだけ実験してコンセプトを証明しよう。抜本的で多様な事業を始め、でもそれにはあまり時間やお金を費やさないようにしよう。意図的に失敗を増長して、潜在的な解決法を生じやすく維持できるようにしよう」
前回も言いましたが、クリエイティビティにパラドクスはつきものです。この場合は「大きな夢を持つ」と「少しずつ試しながら前に進む」という一見相矛盾する行動です。それができるかどうかで、その後が大きく変わります。
We start by believing, but we finish by seeing why we believe. Everything in-between requires work. As the old famers say, "You cannot plough a field by turning it over in your mind."
「私たちは信じることから始め、信じている理由を知ることで終わる。その間のすべてのことに作業が必要である。「心の中で掘り返しても、畑を耕すことはできない」と昔の農民も言っている」
筆者にとって成功とは、石油掘削や温泉掘削や金脈発見のようなものではなく、畑を地道に耕すことだというわけです。ちょっとずつ掘り返しながら、ちょっとずつ試す、失敗した次に生かす、その繰り返しこそが大事だというわけです。
ただし、それが大きな夢で裏付けられているかどうかが最も大事なことであるのは言うまでもありません。
なお、この記事は筆者の新刊『The Enlivened Self: The Art of Growing, Part Three』の要約抜粋だそうです。興味を持たれた方はよかったらご一読ください。

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