終身雇用は崩壊する | 真面目に脱線話@リンガランド英語塾

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「日本の労働生産性はなんでこんなに低くなったのですか?」と若い知人に聞かれた。「新聞によると、日本の労働生産性はアメリカの6割くらいしかないそうです。情けないです」・・・だそうだ。



労働生産性とは、労働者1人が1時間でどれだけ生産したかをあらわす指標である。労働生産性が高いということは、1人あたりが稼げていると考えても大筋合っている。



日本はかつて世界トップクラスの労働生産性を誇っていた。もちろんバブル期である。日本製品が世界中で売れまくっており、トヨタが編み出した「ジャスト・イン・タイム」という方法は、効率をとことんまで追求した究極の生産方式として世界中で絶賛された。



そのトップクラスだった生産性が、ネットで見られる2011年の資料によると、いまやOECD加盟国で19位。1位のルクセンブルクが126ドルあるのに対して、日本は73ドルしかない。なんとルクセンブルクのわずか58パーセントである。



では、「日本人が20年前より稼げなくなった」と言い切っていいかというと、もちろんそんな単純な話ではない。それは80年代後半の日本と、現在の日本の状況を比べてもらえればわかるだろう。



なお、労働生産性を国際比較する場合はドル換算するので、もちろん為替(円高とか円安とか)が関わるが、それを考慮するといろいろややこしいので、捨象して考えることとする。


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さて、80年代後半というと、まだ男女雇用機会均等法が施行されたばかりである。この頃は正社員の多くが男性であり、「女性は若い頃は一般職で働くが、結婚したら退職する」というのが一般的だった。だから、単純に「労働者1人あたり」で見れば生産額を積み上げやすかった。



でも、その実は、女性は家庭に入って夫を支えて、家事と子育てとコミュニティ活動を一手に引き受けていた。女性たちのこういった「専業主婦」としての労働は生産にカウントされない。



もう1つは、サービス残業の減少である。バブル期前まではサービス残業が当たり前の風潮があり、残業代以上の残業をやる人が多かった。しかし、バブル期になると企業も業績が良く、サービス残業を減らすようになった。そうなると、労働にカウントされない労働が減って、1時間あたりの生産性は低くなる。



反対に韓国の労働生産性が日本に接近しており、そのことで韓国経済を評価したり、日本経済を憂う人もいるが、韓国はサービス残業がかつての日本よりはるかに多いだけのことである。サービス残業が多ければ、労働生産性が高いのは当然だ。



もっと根本的なところで問題が2つある。



1つは、労働生産性は大規模工場になればなるほど高くなることだ(「規模の経済」と呼ばれる)。大工場で大量生産すればそこで働く人の1人あたりの生産額はうなぎ登りになる。円高によって国内工場が海外に移転されると、大量生産する場がなくなる。



そのぶんの人材を吸収したのが、飲食や販売などのサービス業である。サービス業は1対1の接客を基本とするので、1人あたりの効率は悪くなる。工場が国内から出ていけば行くほど、労働生産性は下がっていく。


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もう1つの問題点は、賃金の格差に関わる問題だ。私はこれが最も根本的な問題だと考えている。



それは、日本の労働者の賃金が、業種別ではなく、会社別の傾向が強いことだ。たとえば、同じ化粧品業界でも、A社とB社では給料に差があるといったことが多い。



こういったことを日本人は当たり前だと考えているが、実は欧米では事情がやや違っている。



欧米では、労働組合が会社別ではなく業種別になっていることが多い。この例だと、「B社組合」ではなく、「化粧品業組合」となる。そのため、A社とB社の業績が違っていても、業種内でなるべく差が出ないように上げさせてきたのである。A社の社員とB社の社員がほぼ同じくらいの給料になるということだ。



そうすると、業績の良いA社はまだしも、業績が思わしくないB社は会社が維持できなくなる。だから、B社の社員はA社に移ろうとしたり、別のC社をおこそうとして、なんとか収入を維持しようとする。



同時に、B社の社長は経営責任を問われて追い出されて、実績のある経営者にすげ替えられてしまう。でも、B社はやがてつぶれ、その代わりに新興勢力としてC社が現れる。



そうやって、業界が活性化していくわけである。



日本の場合、終身雇用と年功序列を守るために、業績の悪いB社の社員は「うちの社は今危機なので、我慢しよう」ということになる。これは、バブル期のように景気が良ければチームワークの強化につながり強みになるのだが、不況期になると「効率の悪い企業」や「無能な経営者」の温存へとつながる。失業率は下がりにくいが、業界全体は不効率に陥ってしまう。



現在の日本経済が抱える問題点はここに集約されている。業績の悪い企業がいつまでも命運を保ち、その代わりに若い企業が排除され、業界が活性化しない。



グローバル化が進めば、B社のライバルは、A社だけでなく、アメリカのX社や中国のY社も入る。でも、効率化の遅れたB社は民主党政権時のモラトリアム法によって温存されているが、これはいわば税金で仕事のないB社の社員を食べさせているようなものである。



これは日本の生産性低下の根本原因の1つとなっている。


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グローバル化がこれから後退することは考えにくい。大筋ではグローバル化は進む一方だと考えるべきだろう。すると、日本の企業形態がこのままで維持されるということは考えにくく、当然のこと、終身雇用や年功序列は崩れていくことになる。グローバル化において、業績の悪いB社は外資系のX社やY社に駆逐される。



では、私たちはこれからどうすればいいのだろうか?



結局は個人が能力を上げて、どんな場に行っても求められるような人材になるしかない。欧米のビジネスパーソンたちがクリエイティビティに注目するのは、「自分しかできないこと」という独自性が重要になっているからである。今後、クリエイティビティの重要性は大きくなるはずだ。



国の将来を考えるのに、最も重要なのは教育である。終身雇用や年功序列を前提とするような現在の集団指導的な教育のあり方では、日本の将来に明るい展望が見えるはずがない。前回も書いたように、日本人はもともとクリエイティビティにおいて抜きんでているのである。それを生かすことが重要なのは言うまでもないだろう。



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