TBS『報道特集』「ジャパンクライシス」(2010.12.25)を見た感想 | 真面目に脱線話@リンガランド英語塾

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久しぶりにTBSの『報道特集』を見た。



この番組は私が物心ついたころにすでにやっていた。近年、番組の質の低下が激しいTBSにあって、それなりにがんばっている硬派の報道番組だと言っていいだろう。



この番組は取材はちゃんとしているが(TBSのわりに)、こと政治や経済がからむと「トンデモ番組」になる傾向がある。



結論はいつも同じ。「日本経済はダメだ」「日本の未来は暗い」。そのほうが視聴者にウケるからというのが大きいのだろうが、それとは別に、TBSはどちらかというと日本の政治経済に対して一貫してネガティブなスタンスをとっている。日本の放送局なのに日本が大嫌いな不思議な会社だ(そういえば、オウム真理教と闘っていた坂本弁護士の住所を教えて、坂本一家惨殺からサリン事件のきっかけを作ったのもTBSの報道番組のスタッフである)。



軽口はこのくらいにして、今回の放送内容をまとめると次のようになる。



1.日本の若い層は内向きで、留学する学生も減り、エネルギーを失っている。

2.日本の家電メーカーにかわり、サムソンの存在感が大きくなっている。

3.技術が韓国に追いつかれていて、日本は生産性が低下している。

4.日本の地方経済の冷え込みがひどく、未来が暗い。

5.ソニーは欧米でサムソンに圧倒されているが、かろうじてアジアではトップを維持している。



これらに事実誤認はないが、番組の主張した論拠や結論は明らかに間違っている。なお、番組の結論は「日本はサムソンをはじめとする韓中企業に追いつかれて、日本経済は危機的状況にあり、日本の未来は暗い」というものである。



最後に、スタジオではTBSの久保田アナウンサーが「大学を休学して留学した1年は貴重な経験だった」と締めくくった(もちろん久保田アナの意見には異存はない)。



丁寧に解説すると長くなるので(「その7」くらいまでいきそう)、それぞれコメントをつける形にとどめる。



1は「最近の若い者は」のたぐいである。留学が貴重な経験になるのは事実だが、日本でかなりの勉強ができる現在では、留学はコストパフォーマンスがいいとは言えない。昔は留学すると有形無形のメリットがあったが、今は昔ほどメリットが大きくなくなってきている。



「若者が内向きかどうか」は、単に見方の問題である。たとえばイギリスで「イギリスから留学する学生が減った」などということが問題視されることはない。イギリスの大学の質は問題視されるが、留学生が増えたから減ったからといっていちいち気にしていない。実際、その必要はない。



番組では「日本の画一化された教育が悪い」と相変わらずの古くさい主張をしているが、画一化教育なんて戦後からずっと続いていて、今の問題ではない。またゆとり教育に戻したいのだろうか。戦前の格差教育をあらためて、戦後は子供全員にある水準の教育をしようとしているのだから、画一的になるのは当たり前だ。なんでそれを今だけの問題にするのか、わけがわからない。



これから戦前までのようなエリート教育が必要かどうかは、それだけ番組が1つできるほどの大きなテーマだ。



フリーの評論家と違って、テレビ局の報道担当はしょせんは社員なのであんまり勉強していないことが多い。いまだの自分の経験の延長でものを語っていたりする。自分が学生だったときからどれだけ経っているかすら気にならないという点はびっくりである。



2と3については、日本と韓国にそれぞれ事情がある。



まず日本だが、80年代後半のバブル経済期に大きな変化が起きている。何かというと休日が増えて、サービス残業が劇的に減少したことである。つまり、昔より働く時間が減ったのである。



戦後から高度成長期の日本では、サービス残業が当たり前であった。「モーレツ時代」である。そのため見かけの労働時間より労働時間が長く、それが生産性を大幅に高めて、日本の高度成長を支えた。



最近、サービス残業についての訴訟が話題になったが、実際、かなりの企業でサービス残業が激減しているし、休日出勤も減っている。高度成長期からバブル経済前期にかけてまでより、現在はたっぷり休むようになったわけだから、生産が落ちるのは当然である。日本の生産性が落ちて、経済が踊り場に来ているのは、賃金が上昇しているうえに労働時間が減っているからに過ぎない。



もちろんこれは日本国民にとってはプラスである。日本人はバブル以降、賃金上昇より時間のゆとりを選んだのである。



韓国はその逆だ。日本の高度成長期なみにサービス残業や休日出勤が当たり前になっている。見かけの労働時間よりはるかに働いている。「日本に追いつけ追い越せ」のモーレツ時代の到来だ。サムソンが日本に追いついたのは、実は技術流出より、休日を返上してサービス残業をかなりやっている点が大きい。



今後、韓国人の収入が上がっていけば、次は「心のゆとり」を求めるようになる。そのときに、日本が経験している踊り場にさしかかることになる。



4については番組では秋田のことをちょっとだけふれただけだが、たしかに深刻な問題だ。地方問題はごく単純化すると「優秀な人材を中央に供給する地方」と「中央から経済的援助を受ける地方」の相互関係の、後者が一方的に崩れていることが原因だ。若い優秀な人材は東京に出しているのに、東京からお金は来なくなっているのだから地方が衰退するのは当たり前である。



では、どうすれば脱却できるかというと、優秀な人材を地方にどどめて、地方のために中国などの対海外進出の架け橋となる人材を育てられるかどうかがポイントになる。東京大学や京都大学に行っても、地方に帰ってもらえるような仕組みを作ることも必要である。地方に残る条件で公費で海外留学をさせることも一考の価値がある。



5は円高とウォン安のせいである。欧米でソニーが苦戦しているのは円がドルやユーロに対して高すぎるからである。アジア通貨については欧米ほどは高騰していないので、優位が保てるのは当然だ。通貨の問題抜きに企業のシェアを語るとは、さすがにあきれる。



民放の報道番組(除テレビ東京)が提供する情報は、程度が高くない。考察などできる人材は皆無である。しかも、いつも自分たちに都合の良い主張するコメントしかとらない。今回の場合なら、「日本はダメだ」という人たちばかり選んでいる。視聴者の気分を暗くして、もっと日本の生産性を落としたいのかもしれない。



というわけで、以上、日本の報道番組を見ていても日本のことはわからないというお話でした。「じゃあ、何を見ればいいんだ」と聞かれても困るのではあるが。




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