検察の中で、政治家や官僚の汚職事件など大型事件を捜査するのが、特別捜査部、略して特捜(部)である。小沢一郎の捜査は特捜が担当した。
特捜部の捜査で有名なのはなんと言ってもロッキード事件とリクルート事件だろう。ロッキード事件は元首相の田中角栄、ロッキード事件はリクルートの創業者である江副浩正が起訴され、政界財界を巻き込んだ一大疑獄事件となった。
特捜がターケットにするのが政治家とトップ官僚である。私たちはマスコミを通して、こうした人たちが「陰で悪いことをしている」「金に汚い」などというイメージを持っていて、特捜が捜査に乗り出すと、「巨悪をやっつけろ」といった気分になる。
実は特捜自体も「国民の声を代表して自分たちが巨悪に立ち向かう」と考えている。そのために、近年はまず証拠固めをしてから一挙に捜査に乗り出すことがほとんどで、実際に捜査が始まるとすでに方向性が固まっている。
ところで、なぜ特捜は政治家をターゲットにするのだろう。
通常の説明は、相手が巨大すぎて普通の捜査では手出しができないからとなっている。だが、確たる証拠があれば通常の捜査で基礎まで持ち込むのはさほど難しくない。そこで、こんな説明がされる。
「相手は権力者なので、圧力をかけられると捜査が行き詰まるから」
実際、多くの人がそういった認識を持っているのではないだろうか。
さて、ここまでで問題となるのは、「国民の声」である。国民の声は誰が作り出すものだろうか?
もちろん国民の声を作り出すのは国民であるが、国民はマスコミを通してその事件や人物を判断する。つまり、「国民の声」とは、マスコミの報道の仕方のことである。
では、マスコミはどうやって情報を得ているのだろうか。
もちろん「取材して」というのが正解であるはずだが、どうやって取材しているかが問題である。
大マスコミは基本的に「記者クラブ」を通じて情報を得ている。
記者クラブとは大マスコミが作っている会員制の組織である。記者クラブに加入していない会社の記者、つまり、中小マスコミや、フリージャーナリスト、外国メディアなどは締め出されている。
政府機関と記者クラブは持ちつ持たれつの関係になっている。政府は記者クラブに優先的に情報を流し、そのかわりに、記者クラブは政府機関を追い込まないようにする。彼らに都合の悪い独自取材の情報を流せば、今度は優先的に情報をもらえなくなるので、下手なことが報道できない。
今回の小沢氏の件で、多くの人は小沢氏が根暗で金に汚い権力者であり、起訴されるのが当然だと考えたはずだ。実際、そうマスコミが報道したからである。
では、その情報はどこから流れたかというと、警察庁特捜部からである。つまり、小沢氏を捜査する当人たちがマスコミに情報を流して、それで出来上がった「国民の声」をバックに捜査に乗り出しているのである。
その仕組みが明らかになったのが、村木厚子えん罪事件である。
続きます。
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