異質なひとはいじめによって徹底的に叩かれます。ただし、知らない間にまわりのみんなに悪い評判が立っている、なんとなく無視されている、など表向きには平穏です。誰もそんな状態は好みませんから、共同体のルールを守るようになります。
EUには回覧板はありますが、村八分のような集団行動を乱した場合に制裁するすべがありません。だから、ギリシャさんを止めることができないのです。
また、ほかの国にはちょっとした負い目もあります。
ドイツやフランスはいわば弁護士や医者をやっているお金持ちのようなものです。お金まわりがよく、よそでもいろんな役職をして、ほうぼうで頼られています。それでも小国のギリシャ家になんとなく口をはさみにくいのです。
ギリシャさんはかつて輝かしい過去を持っていました。かつてのギリシャ家が生み出したものを、各家も大事にしていて、ギリシャ家のひとびとはいまだに一目おかれています。だから、「お金が足りないけど」と言われると、「しょうがないか」と貸してしまうのです。
引け目をかんじないのは、ギリシャ文化を継承して普遍的な政治体制を作ったローマ帝国の血を引く名門のイタリアさんのおたくくらいでしょう。イタリア家も同じような家風です。
ドイツさんやフランスさんが迷惑をこうむりそうだととがめだてしたくても、「あんたんちなんて文化後進国だったくせに」と言われそうで、なんとなく気が引けます。
町全体が不況になりどこの家もお金まわりが悪くなるとどうしようもありません。もしギリシャ家が破産すると、お金を貸していたまわりの家も被害を受け、さらにお金周りが悪くなって、次々と自己破産しかねなくなります。とくに、家計簿なんてつけておらず、適当にやってきたスペイン家やイタリア家はそれなりに大きな家なので、このへんいったいが共倒れになりかねません。
もともと、近所みんなで仲良くやるためにつくった共同体です。共倒れを防ぐためにそういった家を排除してしまえば、またかつての喧嘩状態になってしまうかもしれません。それがいかに悲惨かはもうみんな痛感していて、二度と繰り返したくないのです。
ということで、今回は収入に応じて高額の会費を集めて、なにかあったらそれを手当することにしました。それで、ほかの地区のひとたちはとりあえず納得したようです。
でも、問題はこれからです。自由な家風のギリシャ家がこれまでの生活スタイルをあらためて、収入にあった質素な暮らしをできるかどうかにかかっています。それができれば、なんとか危機を乗り越えることができます。
続きます。
