NLP は「神経言語プログラミング(Neuro-Linguistic Programming)」の略だそうだ。ぱらぱらと読むと、以前、心理学系の洋書で読んだ内容ばかりが並んでいた。そういったものが NLP がネタ元になっていることが、この日やっとわかった。じゃあとりあえず1冊読んでみようと手を伸ばしたのが本書である。
NLP でいちばん有名なのは「アイ・アクセシング・キュー(Eye Accessing Cue)」だろう。これはいろんな本で言及されていて、最近は日本のビジネス書などでも散見されるようになった。
これは、しゃべっているときの目の動きで、その人がどんなイメージのを描いているのか、傾向としてわかるというもの。簡単にまとめると、次のとおりだ。
1. 眼球が左に行けば過去のこと(記憶)を、右に行けば未来のこと(想像)をイメージしている。
2. 眼球が上に行けば視覚情報を、下に行けば身体的経験や内的な情報を探っている。
私がこれを知ったのはクリントン米大統領がモニカ・ルインスキーとの情事を追求された直後くらいだった。何の本だったか忘れたが、たしか「クリントン大統領は、モニカについて証言しているときに目玉をしきりに右上に動かしていたので、嘘をついていると思った」といった内容であった。
なぜなら、右ということは、過去のことではなく、未来に向けて話のつじつまを合わせようとしていたからになるだそうだ。
アイ・アクセシング・キューは100人なら100人に当てはまるものではないが、少なくとも85%くらいの人に、この傾向は当てはまるという。
眼球の上下移動については当てはまる気がするが、左右については当時からなんとなく疑わしく感じた。実際、自分のことを観察してみたが、とくにそういった傾向はなかった。
ただし、これは右利きの人によく当てはまる傾向があるという話もどこかで聞いた。私は生まれついての両利きで、小さいときからほかの人の傾向から外れていることがよくあるので、「おまえは残りの15%だ」と言われると反論のしようがない。
余談だが、これだけ広く浸透すると、過去のことについて何か聞かれたときに目玉を右にやって答えると「こいつ嘘をついている」と思われる恐れがある。お気をつけくださいませ。
NLP は、前向きな考え方をし、人生を成功に導くための方法論とまとめることができる。このあたりはまさにアメリカ的。
NLP が人を引きつけるのは、その方法論が基本的に経験の延長として抽出されているからである。「成功体験と同じ気分でおこなえば何でも成功しやすい」と言われるとそのとおりに感じるし、「つらさをやわらげるためには、自分を第三者のように観察せよ」と言われればそのとおりに感じる。すべてがそんな印象だ。
そういった経験は多くの人が持ち合わせているので、語られると「なるほど」と思えるものである。
もちろんそれはそれでよいのだが、きちんとした根拠がないと言えば、やっぱりない。
「神経言語プログラミング」と言うくらいだから科学的な裏付けがありそうな気がするが、Wikipediaによると、もともとNLPは評判の良いセラピスト3名のテクニックを体系化したものだそうだ。人の心を前向きにしようというのだからデータのとりようがなく、経験を抽象化して成立させるしかない。
唐突ですが、占いを信じしますか?たとえば性格占い。
星占いが当たると考える人は、その人が山羊座なら、自分は山羊座的な性格であることを前提としているはずだ。血液型による性格分けを信じている人は、その人がA型なら、自分の性格がA型的な性格であることを前提としているはず。
だが、人の性格というものは複雑怪奇な複合体なので、何を言っても何かしら当たっている部分がある。「A型の人は慎重なんだよね」などと言われると、自分がA型的な性格だと思っている人は、「当たってる!」と思う。だが、これをもって血液型占いが当たると言うことは証明できず、実感として当たっている気がするとしか言いようがない。擁護者も最後は「だって、当たっているから当たっている」としか言いようがないはずだ。
私にもこんなことがあった。
大学の学園祭でシャレで一度だけ占い師をやったことがある(すみません)。何の知識もなかったのだが、手相や顔を観ながら、「あなたは繊細でくよくよしやすい方です」「あなたは人に誤解されやすいようですね」など誰にでも当てはまるフレーズを駆使して大評判になった(結局、100人近く観たと思う)。後半は疲れてきて、誰にでも同じようなことを言っていたように思う(1回100円ですから大目にみてください)。
もちろんそんなことばかりでは占いにならないが、足りない情報は曖昧なことを言いながら相手から具体的な情報を引き出すことで当てるのである(コールド・リーディングという占い師のテクニックだと最近知りました。アメリカ人は何でも体系化するなあ)。
こういった技術は「先達の知恵」くらいのつもりで仕入れるのには良いが、同時に深みにはまりやすい。とくに、この NLP で成功した人物として勝間和代大先生があげられているので(事実かどうかは知りません)、勝間さんのように成功したいと思っている人は、NLP をもっと知りたいと思って、大金をはたいてセミナーに参加したくなるのもやむをえまい。
だが、何かを成し遂げたければ、情報は道具として使わなければならない。何かに強く依存しようと思った時点で、自力でなにがしか成し遂げていく能力が欠けていることになる。「使えるところは使う」を実戦できる人こそ、先んじて一歩先に進めるのだと思う。
ちなみに、私はこういうのは大好きである。本当に矛盾している。
だって人間だもの。
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