前回の英文と語注を再掲します。
The revivals of memory are rarely literal. We naturally remember what interests us and because it interests us. The past is recalled not because of itself but because of what it adds to the present.
【語彙】
revival「再現」/rarely「めったに~ない」/literal「事実どおりだ」/interest「興味を持たせる」/past「過去」/recalled「思い出す」/because of ~「~のために」/not X but Y「Xでなく、Yだ」/add A to B「AをBに加える」/present「現在」
では、試訳です。文どうしのつながりがわかるように意訳したところがあります。
過去の出来事を頭で再現しても、それが事実どおりであることはまれだ。もちろん興味のあることならそのまま思い出せるが、あくまでそれは興味があるからこそである。過去というものが頭に思い浮かべられるのは、「過去」そのものが存在するからではなく、「過去」は現在というものに加えられる何かだからである。
ポイントは次のとおりです。
1.naturallyは「自然に」ではなく、「~であることは自然だ(=当たり前だ)」、つまりIt is natural that ...の意味です(文修飾)。文修飾のnaturally ~ but ・・・が「当然~だが・・・」と、~の後ろ(butなどのあと)を強調するための前置き(譲歩)にも使われることがありますが、ここもそれに該当します。
2.what interests us は「私たちに関心を持たせること」、つまり「関心事」です。関係詞whatを使ったwhat ~のかたちが「~であるものそのもの」の意味になるのをおさえられたかどうかもポイントでしょう。ex. I love what you are.「今の(ままの)あなたが好きだ」
3.A and because Bが今回の最大のポイントです。「AであるのはBだからだ」は間違いです。それならA because Bとandがないかたちになるはず。andは同じもの(文なら文を)並べるかたらきをするので、元のかたちはA and A because B「Aであり、BであるからAだ」→「Aであるが、ただし/しかも(それは)Bだからだ」となります。ex. You have to do it and very quickly.「あなたはそれをやらなければならない。しかも今すぐに」
4.The pastは「過去というもの」。一般論の主語で使われるtheの用法です。the presentも同様。
5.not because of itselfは「それ自体が存在するからではなく」の意味です。ex. They were here because of Tom.「トムのために彼らはここにいた」(←彼らがここにいたのは、トムの存在があったからだ)。itselfは「過去そのもの」、つまり「過去の出来事(=事実)」です。「過去というものが思い出せる」のは、「実際にあった出来事そのものが(いま)存在しているからではない」と言っています。
6.what it adds to the presentはit adds X to the present「それが現在というものにXを足す」のXが関係詞whatになったものです。itは「私たちが過去だと考えているもの」(=経験)を指すので、「過去というものによって、現在に足されているもの(そのもの)」ということです。つまり、経験は「過去の出来事+現在というもの」で出来ているということです。考えてみると、経験は過去の出来事の記憶からできていて、記憶はいま現在において持っているものです。過去の出来事と現在の自分というものがなければ成立しません。
実際に出題された英文はざっと250語ほどあるようです。昔の受験生はこんなレベルが高い哲学的な英文に取り組んでいたのかと本当に感心させられてしました。拍子抜けするくらいやさしい今の東大入試とくらべると隔世の感があります。
とはいえさすがに難しすぎるので、きちんと読めたひとはかなりすくなかったのではないでしょうか。
