地下鉄から、オフィッスのあるビルまでの通路に、毎朝決まってホームレスのおじさんが歌を歌っている。
お世辞にも上手いとはいえない。この通路で歌えば、お風呂場での音響効果と同じで、それなりに聞こえるもんよ。
チップのカゴには、数ドル入っているが、自分で入れたんじゃないの?と疑ってしまう。
目を細め、腹から声を出し、でも少々ウザイし耳障り。歌を聴きたいとは思わないが、興味本位で、おじさんを見てみたい気もする、でも通勤途中だし、彼の為に足を止める気もなく、下手に見てしまったら、颯爽と通勤している私が台無しだし、チップでも請求されたらイヤだから、クールにおじさんの前を素通りしていく。
季節によってもクリスマスソングなんか歌ったりして選曲なんかしてる。毎朝、毎朝、欠かさずに・・・どうやら朝の8時から10時までが、彼なりのショータイムのようだ。
ところが、ある日、まだ彼のショータイムであるはずの時間帯なのに、その歌声は聞こえてこなかった。まあ、うるさくなくていいか、なんて思ってた。ところが、次の日も、次の日も、おじさんの下手くそな歌は聞こえてこなかった。
初めて、おじさんのスポットで足を止めた。ちょっと辺りなんか見回したりもして・・・
まさか・・・
よく、ホームレスは凍死したり、何らかの事件に巻き込まれたりしやすいと聞いたことがあったから・・・
こんな事なら、チップくらいあげとけばよかった・・・
ポリスの警備もあるし、大丈夫かなぁ・・・
毎日いるものが突然いないから、少なからず、おじさんのことが心配だった。
そんな心配をよそに、翌日、あの歌声が聞こえてきたから、少々早歩きで、おじさんの安否を確認。 気の済むまで歌ってください。と心でつぶやいた。
結局3日お休みだっただけで、いまだ毎日歌い続けている。
やっぱり、少々ウザイよ、その歌声。
いまだチップはあげてない。