今日は母の四十九日だ
朝9時半に弟が車に乗って
私を迎えに来た
私達は一心寺へ行くのだ
私は過日お寺へ問合せをしている
その時に
電話に出た男性に
持参する物は
火葬許可書と遺骨と戒名を書いたものだと言われ
当日納骨を申し込めばよいと言われた
私は必要な物を携えて
車の後ろで待つ弟の所へ駆け寄った
弟が
「白木の位牌は持って行かなくていいの?」と
私に言った
私は
「お寺の人から
位牌の事は何も言われなかった」
と答えた
位牌は必要なのではないかと弟に言われ
私は自宅へそれを取りに帰った
二階へ上がり下りて来て
弟の所に戻ったら
黒木の位牌も要るんじゃないかと弟に言われた
私は「一度に言ってよ」と
少し汗ばみながら言った
弟はスマホで何かを調べていた
そして「今気づいたところだ」と言った
「一度一心寺へ問合せた方がいい」と弟が言ったので
私は携帯を取り出し
一心寺へかけた
四十九日後の
白木の位牌はどう取り扱うのか
私も実は大いに気になってはいた
だが
葬儀やら火葬やら四十九日やら
全てが私には未知との遭遇であって
それらについて知ってる人から言われたら
その通りにするしかないのだった
一心寺に電話が繋がり
感じのいいおばさんが説明してくれた
弟の指摘通り
白木の位牌も黒木の位牌も
お寺に持って行かなければならないと分かった
白木の位牌はお寺で引き取ると言われ
黒木の位牌にはお魂入れをしなければならないと言われた
お魂入れをしないと
黒木の位牌はただの仏具ですと………
そう言われた
お魂入れの料金は
二千円から二万円
納骨料にお魂入れの料金が加わると知った
これは誰のミスだ?
先日電話に出た男性のミスか?
私か?
浅い落とし穴に落とされた気分だった
だが
落ち込んでいても仕方が無い
弟が気づいてくれたのだから
いいのだ
私は
お寺のおばさんから聞いた事を
車の中で待っていた弟に伝えた
そして
もう一度自宅へ戻り
黒木の位牌の入った箱を持つと一階へ下りた
お寺へ向かう車中で
納骨料とお魂入れの料金を
弟に決めて貰った
私と弟は
話してるうちに一心寺の近くに来ていた
木曜日の午前10時過ぎ
お寺に近い駐車場は
殆ど開いてなかった
弟は時間料金を見ながら
開いてる所を見つけ
そこへ車を入れた
駐車場の埋まり具合から
お寺が混んでいる事は容易に想像できた
それに、問合せた時
平日でも混んでいると言われていたから
覚悟はしてた
さて
私達はお寺の門をくぐり
私が受付で申込用紙にいろいろ書き
そのあと私が遺骨と位牌を持って1人で行列に加わった
弟は列の外で待っていた
私は納骨を希望する人達の列に
延々と居続けた
足元に黄緑のテープが貼ってあり
「マスクを着けて、間隔を開けて下さい!」と
警備員姿の若い女性が何度も声を張り上げていた
私は
ゆっくりゆっくり前に進んで行った
行列に入るのは大嫌いだが
今日は特別だった
母の遺骨を渡す為に
私は並んでいるのだと思うと
いらつきもしなかった
ミッションだ……と
心中で呟いていた
やがて
私は大きなお堂の中に入った
そこからさらに列は伸びているのだが
御本尊が祀られているらしきその辺りと
その周辺が黄金色だったので
違う空間に佇んでいる感覚がした
受付が何ヵ所もあり
そこに座っているお坊さんや女性が
薄い木の板に
墨で素早く文字をしたためていた
何処からか卒塔婆……という言葉が聞こえて来た
それが
その薄い木の名前なのだろうかと思った
私の順番が来た
女性がいる所に行き
火葬許可書と一緒に遺骨と2つの位牌を渡した………
会計で
納骨料とお魂入れの料金を支払い
私はお堂から出た
そこに弟がいた
これから本堂へ行き
お経をあげて貰い
焼香をする段取りになっている
混んでいる時は
受付から納骨まで
1時間から2時間かかると聞いている
本堂へ向かいながら
弟が振り返って
「凄い事になってる……」と言った
私は
さっき自分が並んでいた所を見た
確かに
凄い事になっていた
物凄い数の人で行列が膨らんでいた
「凄い群衆やな……」
と私が言い
「もう少し来るのが遅かったらやばかったな」
と弟が言った
無事納骨を終え
私達は一心寺を出た
そして
近くにあるペットの納骨堂へ寄った
そこに弟の愛猫が眠っているのだった
弟がお賽銭を入れお線香を上げた
私も同じ事をした
20年近く弟と一緒に暮らした黒猫ちゃん……
「誰かに貰ったん?」と私が聞いたら
「上がって来て(マンションの)部屋の前にいた」と弟が答えた
かなり小さかったと言う
「運命やね」と私は言った
弟は
私の自宅へ寄った
母の仮の仏壇を
本物の仏壇に取り換える為だった
母の遺骨はもう無かった
お魂入れをして貰った
黒木の位牌だけがあった
また
母が居なくなったような気がした
今日から
私はまた1人だ
母は今
極楽浄土に居るのだろうか
そこで、デイサービスに行った時のように
ご機嫌さんでいるのだろうか
※携帯を家に忘れた為、今回は写真撮影ができませんでした