
心療内科クリニックの終活
ここ20年くらいで心療内科(精神科)クリニックが増加し、特に大都市部では過当競争と言って良いほどになった。現在、地方でも心療内科クリニックは増えてきており、ホームページの院長の名前を見ても全然知らない人だったりする。これは過去ログにアップした落下傘開業だと思う。
最近、最も驚いたことは、いつも行く温泉地の近郊の市に心療内科クリニックの看板を発見したこと。おそらく人口は5万人ほどと思うので、そうだとしたら破綻せずやっていけないことはない。
地方都市に心療内科クリニックができることは、精神科のアクセスを増やすと言う点で悪くない話だと思う。
人口の多い地方大都市でさえ、現在の1.5倍まで心療内科クリニック数が増えたとしてもやっていけるような気がする。ただし多くなると言うことは人気の差が出るので、良くないクリニックは淘汰されるであろう。
実は心療内科クリニックが新規開業する一方、廃院するクリニックも珍しくない。これは淘汰されたのではなく、院長の健康状態が悪化したために廃院したケースが多い。例えば、余命が比較的わかる癌など。あるいは、院長が突然死(自殺も含む)したため廃院したクリニックもあるが、これも健康上の問題である。
クリニックが完全に廃院するかどうかは、院長の健康状態も含め状況にもよる。例えば子供がいて精神科医ないし心療内科医だったとしよう。その場合、子供が後を継ぐパターンがあり得る。あり得ると記載したのは意外に少ないからである。
本来、心療内科クリニックは相撲の一代年寄みたいなものなので、子供が医師になったとしても、そのクリニックを継ぐインセンティブは低い。まして女性医師なら尚更だと思う。ここが有床の精神科大病院との大きな相違である。
読者の方はピンと来ないと思うが、精神科医になろうとする時点で、それなりに必然性があるので、精神科、心療内科医の子供が精神科を選ばないことは普通にある。それに対し、有床の精神科大病院は医師の跡継ぎがいないと病院が他人に渡ってしまうような感じになるので、子供もそれがわかっていて、精神科医になることがほとんど全てである。しかし、子供が3人とかいて、長男は精神科医だが、他の子供は内科や外科医になるケースはある。
これはあくまで印象だが、このような跡継ぎの精神科医は、元々ありがちな必然がないので、わりと普通に見える人が多い。これは以下の記事の「プラスアルファ」がないからだと思う。
もちろん、プラスアルファは遺伝しやすいので、凄く?プラスアルファのある人もいる。これは真に精神科医になりたかった人より、精神科医にやむを得ずなった人の方が普通の人?がむしろ多いというブラックジョークというか皮肉になっている。
さて、院長が診療を中止せざるを得ない時、例えば子供が医学部生とか医師になったばかりくらいの年齢だと普通に廃院しやすい。なぜならクリニックはビル診のことが多いし、基本家賃を払っているからである。この際に最も気になることは、診療している患者さんをどうするかであろう。これは近辺に単科精神科病院があれば、彼らにとって患者さんを譲ってもらうことは大歓迎なので、患者さんさえ了解すれば完全に転院手続きが終わる。
ただし、どうしても単科精神科病院は嫌と言う人もいる。これは単科精神科病院はそれなりに従業員が多いので、地方だと特に知り合いに会ったり、受診を知られたくないと言う理由がある。このような際は市内のクリニックに紹介するのであろう。近年はクリニックが増えたのでこのような対応もしやすい。
僕はこれまで近郊の心療内科(とは言え実質精神科)クリニックが突如、廃業し、患者さんをまとめてもらった事が2度あるが、2度ともバタバタだったためか碌に紹介状がなかった。これは紹介状を書く余裕もなかったためと思う。
2度目はクリニック院長が同門の先輩だったこともあり、健康上の理由で紹介状も碌に書けず申し訳ないが、これらの書類を参考にして下さいと簡単な記載があった。その書類とは自立支援法や精神障害者保健福祉手帳の診断書のコピーだが、これらでも初診日がわかるのであるかないかでは大違いである。
1度目は書くのも苦痛だが、そのクリニックは、落下傘開業で突然開業し数年して風のように消えた。患者さんが通院しようとしたら既に閉院していたらしい。過去ログに少し触れているが、紹介状の記載が精神科医とは思えなかったので、おそらく他科の医師が開業したのだと思う。
このような廃院で最も困るのは、患者さんが将来、障害年金を受給しようとした際に、受診の証明(特に未成年)が出来ないことだと思う。
最近、増えたのは、心療内科精神科クリニックを他の患者さんごとクリニックを他の精神科医に譲るケースである。これは引き受ける方も患者さん付きで経営的にリスクが少ないので大歓迎だと思う。少なくとも落下傘より遥かに良い。患者さんも転院しなくても良いことや、診療録が失われるリスクがなくなるので、共にメリットが大きい。
また、このような廃院危機のクリニックを単科精神科病院が買取り、サテライトクリニックにすることも増えている。精神科病院がサテライトクリニックを作ったり、既にあるクリニックを買い取るのは、ここ20年くらいの入院患者数の減少と関係している。これは強制的に入院させると言う意味ではなく、今の精神病院は入院しても入院期間が短いので、ある程度外来患者数がないと経営的にやっていけないからである。
地方ではビル診もあるが、普通に内科や歯科のように一戸建ての診療所を建てていることもあるので、このような院長交代は無駄がないと思う。精神科は診療録の継続性というか、記録が残ることは重要である。
そのような視点では、未成年の場合、心療内科精神科クリニックにマイナンバーカードを保険証として使うのは非常にメリットが大きい。受診歴や処方内容までデジタルで保存されるからである。突然の廃院のリスクが多少は避けられる。
昨年、大学の同窓会に出た時、同窓生の子供が既に医師としてバリバリ働いているという話を聴いた。その際、精神科病院の勤務医や心療内科精神科クリニックの医師の子供たちが、しばしば精神科以外の科、例えば外科医や内科医として働いていることを知ったのである。
そもそも勤務医とかクリニックの精神科医は、そこまで子供に医師になることを強制しない。子供が東大や京大を卒業しているが、医師ではないと言うのもある。
これは今では精神科医の思考バイアスではないかと思うようになった。この精神科医の思考バイアスは、患者さんの診察でいわゆる?毒親の話を聴くので、「少なくとも自分はそうなりたくない」という思考から来ているような気がする。これらは以下の記事に記載している。
