自立支援法 | kyupinの日記 気が向けば更新

患者さんからの希望に応じて薬を処方する医師としない医師

精神科では、内科薬、整形外科などの専門外の薬を患者さんの希望に応じて処方することがある。

 

例えば、降圧剤、高脂血症薬、抗アレルギー薬などである。患者さんの年齢にもよるが、このような慢性疾患の薬のために時間を割いて他の医院にかかりたくないということがあると思う。

 

しかしこのような薬でも副作用がないわけではないので、精神科で検査もせず漫然と処方し続けるのは好ましくない。例えば降圧剤なら血圧を測るとか血液検査などの検査を並行して行うことが多い。

 

今回は、医師により患者さんの希望に応じるハードルが高い人とそうでない人がいるという話。

 

ある職員が、自分の義母の薬を貰うために内科に受診したと言う。その義母は一時怪我をして整形外科に入院したが、入院中にドネペジルを処方されたらしい。退院後、かかりつけの内科クリニックに受診したところ、ドネペジルは専門外なので処方できないと言われ、怒っているのである。

 

ドネペジルに限れば、身体科の医師により処方されやすい薬だが、医師により評価が分かれる薬である。と言うのはドネペジルは効果を視認できない人も多いからである。

 

なお、僕のドネペジルの評価だが、かなり切れる薬だと思うが、一般に推奨されている用量は多すぎるという意見である。

 

なお、精神科医のような診察をしない身体科の医師は、微細な効果を認識できないため、ドネペジルはかえって悪化させるのでは?と思いほとんど処方しない医師と、あまり考慮なく漫然と長期処方してしまう医師に分かれる。

 

この前半の安易に処方しないと言うスタンスは、実際に悪化させることがあるので正しいと思う。むしろ漫然投与の方が問題が大きい。なぜならリエゾンで相談を受けた際、単にドネペジルを中止しただけで改善することが稀ならずあるからである。

 

僕は、担当医が義母にドネペジルを処方してくれないという話を聴いた時、上のようなことを伝えた。

 

しかし詳細を聴くと、専門外の薬は患者さんの要請に応じてほとんど処方しない医師だったようである。これは偶然、僕の同級生の開業医だったが、学生時代そこまで親しくなかったし、「彼ならそんな風だろう」と言う感想もなかった。

 

僕が通院している内科や整形外科に限っても、患者の要請に応じて比較的処方してくれる医師とそうでない医師に分かれる。

 

患者さんにとっては、簡単に処方してくれる医師が良いに決まっている。なぜなら時間が節約できるからである。

 

ずっと以前は、自立支援法は内科や外科の薬も1割負担で良いため、薬局窓口で支払う金額も減ると言うおまけ付きであった。今では自立支援法は予算が少ないので厳格に精神科ないし精神科薬の副作用止めのうち安価なものに限られている。もちろん、このようなルールはローカルな面があり、当県では比較的ルーズに運用されてきた時代が長かった。

 

その理由は、風邪でさえ例えば真冬に薄着でいるなど、精神病に由来する面が大きいとみなされていたからである。

 

訴訟とかその辺りにシビアな医師は、専門外の薬を長期処方することはリスクしかないので安易に処方しない傾向はあると思う。

 

精神科医は全てではないと思うが、降圧剤や抗コレステロール薬、湿布、軟膏くらいは患者さんの要請に応じて処方する人の方が多い印象である。そう思う理由は、院長会などの薬の査定の話の際にそのような事例がよく出て来るからである。

 

例えば、自立支援法などの運用の際に、下剤はセンノシドやマグミットは良いが新しいタイプの下剤は認められないなどと言われる。新しいタイプの下剤とは、アミティーザ、リンゼス、グーフィスなどの高価な薬である。

 

なお、マグミットは刺激系でない下剤として推奨度が高い選択肢らしいが、高マグネシウム血症を来して好ましくない人がいる。高価だけど新しいタイプの下剤の方が良い人がいるのである。

 

高マグネシウム血症の医学情報

 

高マグネシウム血症の初期症状と重症化

 

余談だが、自立支援法の予算はレケンビが発売されたために破綻寸前である。そもそも僕は自立支援法はレケンビに対して予算を割くべきではないと言う意見である。ローカルにはレケンビを自立支援法の対象にしていない都道府県もあるかもしれない。

 

精神科医が、患者さんの要請に応じて処方するかしないかについて、患者さんにとって最も大きな関心事は、自らが希望する向精神薬を主治医が処方してくれるかどうかであろう。

 

ここでもうひとつ重要な点は、希望する薬が適応内か適応外なのかも大きい。適応外は査定される云々の前に、何らかの重い副作用が出た時に困るという難点がある。

 

精神科に限れば、薬のタイプに比べ、疾患数が多く、内容も多様なので適応内処方だけでやっていくのはほぼ無理だと思う。柔軟に適応外処方もされているのが実情である。そもそも疾患によれば、適応が認められている向精神薬が存在しないことすらある。

 

患者さんの希望に応じて処方するかどうかは、医師によりかなり個人差がある印象である。医師によれば患者さんが希望する薬を、決して処方しない人までいる。だから患者さんは、担当医がどのようなタイプなのか見極めて希望するかどうかを決めた方が良い。

 

僕はかなりルーズなタイプで、禁忌でない限り、できるだけ患者さんの希望に応じることが多い。それどころか患者さん自身に処方を決めて欲しいくらいである。(北杜夫風に。実際そのような文章が出て来る)。コンサータなどの特殊な向精神薬は例外である。

 

患者さんを長く診ていると、処方する前から上手くいくかどうかわりあい見通しがつくもので、禁忌でこそないが、どう診ても上手くいきそうにないと思うことがある。このような際には、患者さんがある向精神薬を希望した際、やめておくように助言はする。

 

それでもなお服薬したいと言う人には止めないものの、僕がやめた方が良いと言う薬をそれでも欲しいと言う人はまずいない。

 

今日の記事の教訓的なものを言えば、患者さんの希望に応じてくれるかどうかは医師によると言ったところである。

 

また今後の主治医との治療関係を考慮にいれ、「希望をしない方が良いこともあるでしょう」と言うこともあると思う。