
先発品希望の特別な料金と処方箋記載の煩雑さや現場の混乱について
令和6年10月1日から始まった本人の嗜好で先発品を希望する際、特別な料金による現場でのさまざまな混乱について。
精神科では向精神薬だけではなく、身体科の薬を併せて処方することも多い。例えば降圧剤や高コレステロール血症の薬などである。泌尿器系の薬も他科受診の後に継続しているケースもある。これは日本が高齢化社会であることも関係している。
精神科では自立支援法なる医療費の減額制度があり、診断書により病院窓口及び院外薬局の医療費が1割負担となり、3割徴収から比べると概ね3分の1になる。財政的に潤っている自治体では、この1割負担も無料にしているところもあるので、窓口で支払いをしたことがない人もいるはずである。
今回施行された後発品処方を優遇する先発品に対するペナルティ制度は、自立支援法とは無関係に実施されている。ペナルティ金額への自立支援法からの援助はない。これが、意外に誤解されていて、ペナルティを取られても自立支援法があるので3分の1で済むと思う人もいるようである。このペナルティは罰金そのもので100%取られた上に10%の消費税も追加されて110%徴収される。
また、入院患者さんに対しては免除されているので、いくら先発品を処方しようが医療費はかわらない。
院外薬局がある精神科病院では、入院患者以外で院内薬局で処方するのは深夜の輪番などのケースだが、本人の嗜好で先発品希望の場合、同様にペナルティは生じる。院内薬局で職員への処方は、当院の場合、湿布、風邪薬、鼻アレルギー薬、頭痛薬、眠剤、軟膏類くらいである。看護師さんにロキソプロフェンではなく、ロキソニンが欲しいと希望する人がおり、ロキソニンを在庫して処方するが、ロキソニンはペナルティがない薬である。
しかし、一般に院内薬局で、ロキソニンとロキソプロフェンを双方、在庫していることは稀で、たいていの薬は後発品がある薬は後発品しか在庫がない。その理由は、院内薬局は空間的に場所が限られており多くの薬は在庫できないからである。
当院で、先発品、後発品双方在庫があるのは、ロキソニン、サインバルタ、ワイパックス、ソラナックス、デパス、レクサプロ、リスパダールくらいである。これらは先発品の希望者がいるか、サインバルタ、リスパダールのように供給が不安定な時期があって双方購入したパターンである。いつのまにか供給不安定が改善しており、今回の制度の変更で、一部の後発品では潤沢に在庫があることが明らかになった。
このようなことから、院内薬局の処方でペナルティが生じることはほぼない。そもそも在庫がないからである。これは院外薬局との大きな相違と言える。
最近、特に困るのは、身体科の薬で名前だけでは先発品なのか後発品なのかわからないこと。また、院外薬局にその後発品の在庫があるのかわからないことである。したがって、頻回に院外薬局に問い合わせており、無駄な電話代と手間が増えた。
たいてい、先発品の薬の名前はよく考えられており、シンプルで覚えやすいことが多い。一方、後発品はそのまま薬物名だったりすることも多く、いかにもジェネリックっぽい。
例えばベタニスという泌尿器系の薬がある。この名前は第一感では先発品ぽい名前であるが、確実ではない。僕の感覚では10年以上前から名前をよく聴いているので、もしかしたら後発品があり、既に在庫されているかもしれないので、院外薬局に電話をかけざるを得なかった。その結果だが、ベタニスは後発品はまだ発売されていないのであった。
今はタブレットのGoogle検索で、〇〇の薬は後発品が発売されているか?と問うと、AIが教えてくれる。
このような無駄な時間がすごくかかるのである。また後発品が発売されているが、供給制限で納入が安定しないので、先発品処方で無問題というケースもあってさまざまである。
もし、本人が全て後発品で良いと言うなら、処方箋も後発品名(つまり本来の薬物名)で書けば、どのような薬が処方されようと、ペナルティは生じない。このケースで、後発品の供給不安定のために先発品が処方されることもある。
今回の制度が始まって約半月であるが、処方の中に先発品があるかどうかをチェックすること、もしあれば、先発品を使い続けたいなら特別な料金を徴収されると患者さんに説明をせねばならないことで結構時間を取られている。
これは医師の働き方改革にも反していて、ペナルティの金額の一部を労働分として、いくらか医師と薬剤師に還付してほしいくらいである。
また更に困るのは、受け持ち患者さんではない人を診る時。普段診ていない患者さんなので、後発品への心理的抵抗などが予測できない。
自分の患者さんであれば、「この人は先発品を強く希望しそうだ」とか「後発品で良いと言いそう」と言うことも感覚的にわかるため、説明するのにストレスがそこまでない。知らない患者さんは少し余分にストレスがかかる。
いずれにせよ、今のところ、「それでも先発品」を希望する人はそこまで多くはなく、順調に後発品に変更されているので、国の作戦は成功したといったところだと思う。