
精神科におけるマイナ保険証について
現在、マイナンバーカードと保険証を統合し従来の紙保険証を廃止しマイナ保険証とする政策が進んでいる。ところが、マイナ保険証に他人の情報が書き込まれているなどのトラブルが多く、期日(2024年秋)通りに紙保険証が廃止できるのか危ぶまれる状況である。
なんと、他人の情報がマイナ保険証に書き込まれていたというトラブルは7300件以上、その他、情報更新が反映されないというエラーのトラブルも多いらしい。
そもそもマイナ保険証が導入される政府の目的は、マイナンバーカードを普及させることが大きいと思われる。現在のところ、マイナンバーカードの普及率は高くはないからである。以下の総務省のサイトを見ると、令和5年6月25日の時点で人口に対する割合は77.3%ほどである。
紙保険証が廃止されると、国保や健保を使って診察、治療を受けるのならばマイナンバーカードを取得するしかなくなる。今回、7300件以上とされる他人の情報が書き込まれたトラブルの原因は人為的ミスらしい。例えば、ログアウトせず書き込んだなどである。人為的ミスが起こりにくい仕様のシステムではないようなのである。
既にうちの病院でもマイナ保険証を利用できる体制になっているが、今のところマイナ保険証を使っている人はかなり少ない。外来窓口で保険証と紐づけ済のマイナンバーカードを入れるとその病院だけでなく、その人が受診している他の病院の処方状況がすぐにレセコンに出てくる。お薬手帳より詳細で、他の病院で点滴された内容まで表示されるのである。なお、現在は本人が承諾しないと情報が表示されない。この場合、従来の保険証が必要になるのだと思う。
精神科でのマイナ保険証の意味は、他の病院で重複して向精神薬を貰っているとすぐにわかってしまうこと。
例えばデパスなどの抗不安薬を2~3つの病院で重複して処方を受けていることがわかる(デパス大量服薬者)。また、現在眠剤は2剤までとされているが、内科で例えばゾルピデムなどを貰っていて実は3剤を服用しているなどが明確になるのである。
現在、重複処方がないのを確かめられる向精神薬はコンサータなどの登録制の向精神薬だけである。
つまり現在のお薬手帳より詳細なデータベースがマイナ保険証(つまりマイナンバーカード)に書き込まれることになる。これは不正に重複して向精神薬を貰っている人が明瞭になるので、メリットも多い。
また精神科の夜間輪番で来院した患者さんがいかなる処方を受けているか、さっぱりわからないこともよくあるが、もしマイナ保険証を持参していれば、すぐに処方内容がわかるので対応しやすくなると思う。この2つが精神科では大きなメリットである。
また、2つの病院、例えば精神科と内科で重複して2種類を超えて抗不安薬(特にデパスなど)や眠剤(フルニトラゼパムなど)などの処方を受けていると、それまで問題にならなかった2剤制限に引っかかるようになるのではと思う。
もともと健康保険証は顔写真がないので不正利用されることがあった。マイナ保険証になるとマイナンバーカードに写真があるのでそれらの不正利用がかなり難しくなる。マイナ保険証は健康保険の不正利用を防ぎ、財政的にも損失を減らそうという意図もあると思う。
国が必至でマイナンバーカードを普及させようとしているのは、コロナ給付金などの支給などの際に容易にいかずとても困ったなどが挙げられる。特に高収入の人や資産の多い人にはコロナ給付金は配りたくなかったであろうが、それも簡単にはわからないのである。その結果、全員に配るようにせざるを得なかった。
現在、ネット銀行、ネット証券、国内の仮想通過取引所などのKYC、確定申告(つまり税務署)の際にマイナンバーカードの番号を記載しなくてはならない。もしマイナンバーカードを取得していない場合、どうしたら良いのかまでは知らない。確定申告の際には自分以外、嫁さんや扶養者に入れている母親のマイナンバーカードの番号が要求されている。
将来的には、マイナンバーカードには保険証だけでなく、個人の銀行口座、収めている税金の状況(確定申告内容)なども完全に紐づけされて、国民の資産状況を国に把握されるようになると思われる。
マイナンバーカードは行政のいろいろな点で利便性を増すが、将来的には資産税の施行も可能になるかもしれない施策である。国の意図として国民に正しく確実に納税させる目的が大きな部分を占めていると思う。
なお、僕はマイナンバーカードの施策は賛成である。そもそも年金記録問題もこのようなデータベース化が行われていなかったから生じたものである。
https://www.nenkin.go.jp/service/nenkinkiroku/torikumi/sonota/kini-cam/20150601-05.html
一方、起こりうるリスクは、ランサムウエアなどのサイバー攻撃が挙げられる。もしこのようなことが生じると、まずくすると全国規模で患者情報が閲覧できなくなるという事態もあり得ないわけではない。
なにしろログアウトせず書き込んで他人の情報に置き換わってしまうレベルのシステムで運用する国である。全国規模で情報が閲覧できなくなり、日本がハッカーに身代金を支払うようになったりすると、世界の笑いものになってしまうと思う。

