ここに来るまでに4軒もあるじゃないか? | kyupinの日記 気が向けば更新

ここに来るまでに4軒もあるじゃないか?

多分、中学生の頃だったと思う。ある時期、学校の帰りに歯科に寄り治療をしていた。その歯科は個人の病院ではなく企業が経営する総合病院だった。(昔の鉄道病院とか逓信病院の類)。

だから、歯科と言っても総合病院の1つの科に過ぎず、その歯科医師も給料制だったと思われる。あの時代、その歯科医師は年配だったので、なぜ開業しなかったのかちょっと謎である。(総合病院だけに、歯科医でないならわかるが)。

なぜその歯科に通っていたかと言えば、いつもあまり待たないで治療してくれたから。つまり時間が他の歯科医院よりかからないのである。

当時の歯科は、地方では人口比で全然足りておらず、また今のように予約制の歯科医院がほとんどなく、長時間待たされた。

また、あの頃は今のように1週間に1回程度の治療ではなく、結構短い期間に頻回に受診させていた。予約は次に何月何日に来るかだけで時間までは決めないのである。

それだと、外来に行った瞬間、どのくらい待たないといけないかがわかる。全く冗談ではないくらい待たないといけないのが速やかにわかるのである。それだけはメリットだったと思う。

そのような理由で、学校から帰るのに遠回りになるが、その総合病院に通っていたのである。その病院は小児科に入院したこともあるし、子供の頃、ムカデに刺されて夜間に駆けつけたこともあるなど、馴染みのある病院だった。

その総合病院は、穴場のようになぜか歯科だけは空いていた。今考えると、あまり評判が良くなかったのかもしれない。

ある日、その歯科医師は言った。

君は、なぜここに来るんだ!
君の家から、この病院まで4軒も歯科があるじゃないか?


つまりだ。
彼は僕に通ってほしくないのである。そう言われて、さすがに「ここはいつも空いているから」とは言えない(笑)。僕はたぶん驚いたような顔でじっと黙っていたと思う。

その後ポツリと、

私は、もうすぐ定年なんだ。仕事が多くなるのは疲れる。

という内容のことを少し済まなそうにゴニョゴニョ語っていたので、少し気の毒に思ったし、同時に、この医師は相当に診療意欲が低いと思った。つまり、仕事の多寡にかかわらず給料は変わらないので、いつもそのような内容のことを誰彼となく患者さんに言っていたんだと思う。

だから、患者さんが他より少ないのであろう(と当時は思ったが)。

話が現代社会にワープするが、精神科の場合、遠くから来た患者さんに、「ここまで来るのに○○軒あるじゃないか?」とは言わない。精神科病院ではそういう発想は起こりにくいのである。これは精神病院やクリニックにより、なんだかんだ言って特色があるからなんだと思った。

ただし、過去ログにあるように遠方の人が来た場合、なぜうちに来たのかは気になる。これはほとんどは口コミで、患者さん自身が紹介するのがほとんど全てと言ってよい。

最近は、クリニックは初診をその日のうちに診ず、何日かあるいは何週間か後に予約するようなところも多いようである。だから、その日に何とかしたい人はすぐに診てくれる病院を探してやってくる。

ある日、午前中に初診が8人と言う今後もたぶん生じないような事件が起こった。その8人を午前中に全て診た。もちろん再診の人たちも診ているので、これだけでヘトヘトというか、

脳内が飽和状態・・

である。今の精神科は患者さんが多すぎて、初診はやや偏る環境になっていると思う。

僕も患者さんが多くなったからと言って給料は変わらないが、病院が流行ると言うことは職員の給料やボーナスに好影響を及ぼす。

いつかも書いたが、精神科がこれほど興味深いものでなかったら、うちには子供がいないし、ここまでのモチベーションは保てなかったと思う。それは積極的な診療姿勢や新しいことを学ぶエネルギーである。

なんだかんだ言って、僕は自分に合った職業を選んだと思う。

あの歯科医の言葉は、きっと今も深い心理的な記憶にあるのであろう。