ピロリ菌と除菌
過去ログで胃カメラの話をアップしている。友人から、1年に1度くらい検査してくださいと言われたが、1年以上放置していた。いわゆる医者の不養生である。
こういうのがいかんよね~と思い、再検査することにした。
久しぶりに胃カメラをしたところ、「少し胃がくたびれている」と言われた。ピロリ菌がいるかもしれないので検査してみましょうと言うのである。「胃がくたびれている」というのはちょっと面白い表現だと思った。萎縮性胃炎くらいが少し現れているのかもしれないと思った。
最近体調が変わり、特に辛いもの、油ものなどが食べられなくなってきている。今や大好きなカレーすら食べられなくなりつつある。
ピロリ菌の感染率は年代が高いほど高い。だから若い人は比較的少なく、例えば70歳くらいの人は70%くらいの感染率らしい。年齢に%を付けたような確率になっている。ピロリ菌の保菌者はメリットよりデメリットの方が高く、医療的には除菌すべきという話だ。
ピロリ菌は、正確にはヘリコバクター・ピロリと言われ、1983年にオーストラリアのロビン・ウォレンとバリー・マーシャルにより発見されている。従来、胃の中は苛酷な環境のため、菌が生息するのは難しいと考えられていた。その点で、画期的といえる発見であった。
その後、研究が進み、萎縮性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃癌、MALTリンパ腫などの原因となっていることがわかってきたのである。ただ、感染者でも全ての人がこのような疾患になることはなく、70%くらいの人は症状が現れず、健康保菌者になると言われている。
また、本来、ピロリ菌はヒトと共生状態にあり、ヒトに何らかのメリットを及ぼし胃癌とは逆に食道癌のリスクを低下させているという意見もある。
友人の話では、ピロリ菌は井戸水を使っていたりすると感染しやすいという。だから自然水などを汲みに行き殺菌せずに飲むと感染することがあるらしい。実は年代が上になるほど感染率が高いのはこれと関係がある。例えば戦前生まれの人は上水道が完備していなかったので感染しやすい環境だったのである。今の若い人はそういう点で感染するチャンスは低くなっている。
さて、ピロリ菌の検査をしたところ、見事に陽性であった。疑われた時点で覚悟していたが、やはりショックだった。嫁さんに「ピロリ菌がいたようだ」というと、
ピロリ菌とか、さすが、kyupinはかわいい名前の菌がいる・・
とワケワカランことで感心していたが、
この歳まで気がつかず、あんなもんを胃で飼っていたことの方がショックだ!
と僕はいった。
そーか、そーか・・
思い起こせば、変なことがあったもんね~
金属アレルギー、羊毛アレルギー、牛乳アレルギーなどがあるのに、なぜかスギ花粉などの鼻アレルギーが全くないのである。未だかつて鼻や目のアレルギーで悩んだことなどない。一般に寄生虫とかピロリ君が生息している人は鼻アレルギーになりにくいと言われる(寄生虫についてはそれと異なる意見もある)。
このように体内の生物は免疫活動になんらかの影響を及ぼす。
また、これとは関係ないかもしれないが、僕は生来性に免疫が変なのである。怪我をしても全く化膿しない。翌日にはそのままあっさり傷が閉じる。マクロファージや好中球にやる気がないようなのであった。そのくせ風邪を引くと、扁桃がないためけっこう重くなることも稀ではない。
さて、僕の患者さんで、やはりピロリ菌が感染しており除菌治療をした女性患者さんがいる。1度目の治療で失敗し、2度目の治療で完全に除菌することに成功している。
ところがである。
除菌が成功して数日で、ラミクタールによる中毒疹がワッと出現したのである。1日おきに25㎎しか服用していない。しかも奏功しているのにこれだ。処方後ちょうど40日目であった。(僕は当初2ヵ月はあまり増量しない。せいぜい25㎎まで。この量で効く人が多いことと、中毒疹が出やすくなるのを避けるため)
ラミクタールは稀に重い中毒疹が出現することがある以外は忍容性が高い薬物である。リーマスやテグレトールよりずっと毒性は低いように思われる。ちょっと齧ってみたところ、オレンジと言うかフルーツ味でちょっとビオフェルミンの味を足した感じであった。わずかに苦味があるようにも思える。だからどうせ水で飲む薬とは言え、飲み心地は悪くない。
僕が精神科医になって以降、優れた向精神薬を5つ挙げろと言われれば、ジプレキサ、デパケンR、ラミクタールの3つはぜひ挙げたい。そのレベルの薬物である。(デパケンは既に発売されていたが・・)
メーカーは8週まで薬疹に注意するように言っているが、書籍的には16週くらいまで気をつけるように書いてあるものもある。薬疹には良性のものが多いようであるが、必ず中止すべきである。なぜなら、Stevens-Johnson症候群やLyell症候群の出始めと区別がつかないから。粘膜に湿疹が出た場合は特に注意が必要である。
なお書籍的には極めて重い中毒疹の発現率は0.1%程度らしい。(これは最悪の場合、失明や死亡もありうる。書籍によると数百人に1人とか、5000人に1人というものもある。)日本での治験時に330名前後で1名出たが、すぐにステロイドなどで治癒したと言う。もう少し良性の中毒疹はずっと確率は高く8%程度。ただ量を上げていくスピードにも関係しているらしく、いきなり100㎎くらい服用すると非常に中毒疹の出現率が高くなると言われている。
最近、ラミクタールの市販後調査が出たが、重篤な皮膚の副作用は2名であった(母集団の人数は不明。個別報告のみ)。ともに初期の用量を間違って多く投与したものであったが、それでも量はたいしたことはなかった。そのうち1名は投与後、2~3日して39℃の高熱が出て、全身に水泡が生じたらしい。ステロイドのパルス療法で寛解したという。
一般に、ラミクタールで中毒疹が出るような人は、ほとんどの人で何らかの良い効果が出現していることが多い。しかし中毒疹が出た以上、中止せざるを得ない。本当に惜しい事件であった。
だからラミクタールは中毒疹が出ることより、それ以後、処方できなくなる方がずっと痛い。彼女に関して言えば、除菌は数ヶ月遅らせて貰った方が良かったかもしれないと思ったのである。
(自分の除菌の話とラミクタールの話はまた別の機会に)
こういうのがいかんよね~と思い、再検査することにした。
久しぶりに胃カメラをしたところ、「少し胃がくたびれている」と言われた。ピロリ菌がいるかもしれないので検査してみましょうと言うのである。「胃がくたびれている」というのはちょっと面白い表現だと思った。萎縮性胃炎くらいが少し現れているのかもしれないと思った。
最近体調が変わり、特に辛いもの、油ものなどが食べられなくなってきている。今や大好きなカレーすら食べられなくなりつつある。
ピロリ菌の感染率は年代が高いほど高い。だから若い人は比較的少なく、例えば70歳くらいの人は70%くらいの感染率らしい。年齢に%を付けたような確率になっている。ピロリ菌の保菌者はメリットよりデメリットの方が高く、医療的には除菌すべきという話だ。
ピロリ菌は、正確にはヘリコバクター・ピロリと言われ、1983年にオーストラリアのロビン・ウォレンとバリー・マーシャルにより発見されている。従来、胃の中は苛酷な環境のため、菌が生息するのは難しいと考えられていた。その点で、画期的といえる発見であった。
その後、研究が進み、萎縮性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃癌、MALTリンパ腫などの原因となっていることがわかってきたのである。ただ、感染者でも全ての人がこのような疾患になることはなく、70%くらいの人は症状が現れず、健康保菌者になると言われている。
また、本来、ピロリ菌はヒトと共生状態にあり、ヒトに何らかのメリットを及ぼし胃癌とは逆に食道癌のリスクを低下させているという意見もある。
友人の話では、ピロリ菌は井戸水を使っていたりすると感染しやすいという。だから自然水などを汲みに行き殺菌せずに飲むと感染することがあるらしい。実は年代が上になるほど感染率が高いのはこれと関係がある。例えば戦前生まれの人は上水道が完備していなかったので感染しやすい環境だったのである。今の若い人はそういう点で感染するチャンスは低くなっている。
さて、ピロリ菌の検査をしたところ、見事に陽性であった。疑われた時点で覚悟していたが、やはりショックだった。嫁さんに「ピロリ菌がいたようだ」というと、
ピロリ菌とか、さすが、kyupinはかわいい名前の菌がいる・・
とワケワカランことで感心していたが、
この歳まで気がつかず、あんなもんを胃で飼っていたことの方がショックだ!
と僕はいった。
そーか、そーか・・
思い起こせば、変なことがあったもんね~
金属アレルギー、羊毛アレルギー、牛乳アレルギーなどがあるのに、なぜかスギ花粉などの鼻アレルギーが全くないのである。未だかつて鼻や目のアレルギーで悩んだことなどない。一般に寄生虫とかピロリ君が生息している人は鼻アレルギーになりにくいと言われる(寄生虫についてはそれと異なる意見もある)。
このように体内の生物は免疫活動になんらかの影響を及ぼす。
また、これとは関係ないかもしれないが、僕は生来性に免疫が変なのである。怪我をしても全く化膿しない。翌日にはそのままあっさり傷が閉じる。マクロファージや好中球にやる気がないようなのであった。そのくせ風邪を引くと、扁桃がないためけっこう重くなることも稀ではない。
さて、僕の患者さんで、やはりピロリ菌が感染しており除菌治療をした女性患者さんがいる。1度目の治療で失敗し、2度目の治療で完全に除菌することに成功している。
ところがである。
除菌が成功して数日で、ラミクタールによる中毒疹がワッと出現したのである。1日おきに25㎎しか服用していない。しかも奏功しているのにこれだ。処方後ちょうど40日目であった。(僕は当初2ヵ月はあまり増量しない。せいぜい25㎎まで。この量で効く人が多いことと、中毒疹が出やすくなるのを避けるため)
ラミクタールは稀に重い中毒疹が出現することがある以外は忍容性が高い薬物である。リーマスやテグレトールよりずっと毒性は低いように思われる。ちょっと齧ってみたところ、オレンジと言うかフルーツ味でちょっとビオフェルミンの味を足した感じであった。わずかに苦味があるようにも思える。だからどうせ水で飲む薬とは言え、飲み心地は悪くない。
僕が精神科医になって以降、優れた向精神薬を5つ挙げろと言われれば、ジプレキサ、デパケンR、ラミクタールの3つはぜひ挙げたい。そのレベルの薬物である。(デパケンは既に発売されていたが・・)
メーカーは8週まで薬疹に注意するように言っているが、書籍的には16週くらいまで気をつけるように書いてあるものもある。薬疹には良性のものが多いようであるが、必ず中止すべきである。なぜなら、Stevens-Johnson症候群やLyell症候群の出始めと区別がつかないから。粘膜に湿疹が出た場合は特に注意が必要である。
なお書籍的には極めて重い中毒疹の発現率は0.1%程度らしい。(これは最悪の場合、失明や死亡もありうる。書籍によると数百人に1人とか、5000人に1人というものもある。)日本での治験時に330名前後で1名出たが、すぐにステロイドなどで治癒したと言う。もう少し良性の中毒疹はずっと確率は高く8%程度。ただ量を上げていくスピードにも関係しているらしく、いきなり100㎎くらい服用すると非常に中毒疹の出現率が高くなると言われている。
最近、ラミクタールの市販後調査が出たが、重篤な皮膚の副作用は2名であった(母集団の人数は不明。個別報告のみ)。ともに初期の用量を間違って多く投与したものであったが、それでも量はたいしたことはなかった。そのうち1名は投与後、2~3日して39℃の高熱が出て、全身に水泡が生じたらしい。ステロイドのパルス療法で寛解したという。
一般に、ラミクタールで中毒疹が出るような人は、ほとんどの人で何らかの良い効果が出現していることが多い。しかし中毒疹が出た以上、中止せざるを得ない。本当に惜しい事件であった。
だからラミクタールは中毒疹が出ることより、それ以後、処方できなくなる方がずっと痛い。彼女に関して言えば、除菌は数ヶ月遅らせて貰った方が良かったかもしれないと思ったのである。
(自分の除菌の話とラミクタールの話はまた別の機会に)