高次脳機能障害とその回復力の謎
僕の大学在学時代に交通事故で重症を負った友人がいた。彼は数学年、先輩であったのだが、その事故のために数年療養生活をしていたため、やがて僕と同級生になった。
その交通事故の内容を知っている友人によれば、頭でフロントガラスを突き破り、前頭部をアスファルトに叩きつけるような事故だったらしい。もちろん数週間意識不明である。救急病院では一時的に開頭手術をしたようであるが、本人の話ではたいしたことはしなかったという。当時はシートベルト着用が義務付けられていなかったので、こういう事故がよくあった。
これからが謎なところである。別の友人によれば、事故後1年目でやっと3~4歳くらいの知能に回復したと言う。その後、2年目に小学生くらいまで回復し、3年間の休学の後に復学したと言う。復学してからは僕と同級生であった。これは時間経過は合っているが、実際にそうだったのかははっきりしなかった。(本人や家族に聞いたわけではないし)
当初、彼が入院治療中の頃、家族が呼ばれて、脳外科医から治療には10年くらいかかるといわれたという。これは当時の病状を考慮すれば、長期予後が良くないと告知されたのに近いと思われる。
ところが、彼は奇跡的に3年で回復したのである。復学後は留年をすることもなく国家試験も1回で合格。現在は内科医をしている。
こういう嘘みたいな話、「奇跡的回復」はテレビなどのドキュメンタリーを観ていると同じような話がよく出てくる。人間の治癒能力は、科学では説明できないものが随分とあるのであろう。
後年、彼と会った時に当時の事故の内容をもう少し詳しく聞くことができた。彼によれば、3歳くらいというのは大げさだと笑っていた。ただ、もう復学して医師になるのは絶望的であろうというニュアンスは家族に伝えられていたらしい。
まあ、奇跡でしょうね・・
と、自分で言っているのである。
彼が事故後、どのようなことに困ったか聞いてみた。彼によるとコルサコフに悩んだという。コルサコフ症候群とはアルコール依存症、頭部外傷、ヘルペス脳炎などの後遺症で健忘を主症状とする。興味ある人はグーグルなどで調べてほしい。
一般に酷い頭部外傷など後、身体的には完全に回復しても脳の細かい機能が回復せず、社会的には不適応状態になることも稀ではない。これらは高次脳機能障害などと言われている。これは例えば、働く意欲が全く湧かないとか、仕事をするにしても根気、集中力が続かないとか、あるいは些細なことで怒り出すなど性格変化が生じ、仕事、人間関係全般にわたり、健康とは言い難い病状が残遺していることを言う。
彼の場合、そのような明らかな性格変化も復学時には既にみられなかった。彼は大人しく温厚な人であった。彼は療養中はコルサコフに悩んでいたというが、それも問題がない程度に次第に回復したのである。
高次脳機能障害はなかなか良くならない後遺症だから問題にされているのである。ところが、このように治療が難しい症状も、稀には回復することもあるのである。
これは事故当時、彼がまだ若く未成年であったことも大きい。また、治りたいという気持ち、治療やリハビリに対してのモチベーションも相当に関係しているように思う。
また非科学的だが、周囲の者、特に家族の本人に対しての気持ちも深く関係しているように思う。周囲の者の気持ちは本人に伝わるものだ。周囲の人たちが諦めてしまうと、周囲の人も本人も積極的に良くなっていこうというような姿勢が損なわれるのが大きいような気がしている。つまり、諦めてしまいダメと思うからダメになるのである。
人間の精神の治癒能力や可能性には謎が多い。
参考
統合失調症の診断は・・(の後半)
その交通事故の内容を知っている友人によれば、頭でフロントガラスを突き破り、前頭部をアスファルトに叩きつけるような事故だったらしい。もちろん数週間意識不明である。救急病院では一時的に開頭手術をしたようであるが、本人の話ではたいしたことはしなかったという。当時はシートベルト着用が義務付けられていなかったので、こういう事故がよくあった。
これからが謎なところである。別の友人によれば、事故後1年目でやっと3~4歳くらいの知能に回復したと言う。その後、2年目に小学生くらいまで回復し、3年間の休学の後に復学したと言う。復学してからは僕と同級生であった。これは時間経過は合っているが、実際にそうだったのかははっきりしなかった。(本人や家族に聞いたわけではないし)
当初、彼が入院治療中の頃、家族が呼ばれて、脳外科医から治療には10年くらいかかるといわれたという。これは当時の病状を考慮すれば、長期予後が良くないと告知されたのに近いと思われる。
ところが、彼は奇跡的に3年で回復したのである。復学後は留年をすることもなく国家試験も1回で合格。現在は内科医をしている。
こういう嘘みたいな話、「奇跡的回復」はテレビなどのドキュメンタリーを観ていると同じような話がよく出てくる。人間の治癒能力は、科学では説明できないものが随分とあるのであろう。
後年、彼と会った時に当時の事故の内容をもう少し詳しく聞くことができた。彼によれば、3歳くらいというのは大げさだと笑っていた。ただ、もう復学して医師になるのは絶望的であろうというニュアンスは家族に伝えられていたらしい。
まあ、奇跡でしょうね・・
と、自分で言っているのである。
彼が事故後、どのようなことに困ったか聞いてみた。彼によるとコルサコフに悩んだという。コルサコフ症候群とはアルコール依存症、頭部外傷、ヘルペス脳炎などの後遺症で健忘を主症状とする。興味ある人はグーグルなどで調べてほしい。
一般に酷い頭部外傷など後、身体的には完全に回復しても脳の細かい機能が回復せず、社会的には不適応状態になることも稀ではない。これらは高次脳機能障害などと言われている。これは例えば、働く意欲が全く湧かないとか、仕事をするにしても根気、集中力が続かないとか、あるいは些細なことで怒り出すなど性格変化が生じ、仕事、人間関係全般にわたり、健康とは言い難い病状が残遺していることを言う。
彼の場合、そのような明らかな性格変化も復学時には既にみられなかった。彼は大人しく温厚な人であった。彼は療養中はコルサコフに悩んでいたというが、それも問題がない程度に次第に回復したのである。
高次脳機能障害はなかなか良くならない後遺症だから問題にされているのである。ところが、このように治療が難しい症状も、稀には回復することもあるのである。
これは事故当時、彼がまだ若く未成年であったことも大きい。また、治りたいという気持ち、治療やリハビリに対してのモチベーションも相当に関係しているように思う。
また非科学的だが、周囲の者、特に家族の本人に対しての気持ちも深く関係しているように思う。周囲の者の気持ちは本人に伝わるものだ。周囲の人たちが諦めてしまうと、周囲の人も本人も積極的に良くなっていこうというような姿勢が損なわれるのが大きいような気がしている。つまり、諦めてしまいダメと思うからダメになるのである。
人間の精神の治癒能力や可能性には謎が多い。
参考
統合失調症の診断は・・(の後半)