Before Episode
男『おっ、可愛い声だなと思ったら昨日のお嬢ちゃんじゃないか。一度目偶然、二度奇跡…また会えて嬉しい限りだよ。』
桜杏子『なんだよそれ…』
男『出会いの法則ってやつ。一度目偶然、二度奇跡、三度目でそれは必然になり四度目で運命へと変わってくの。なかなかロマンチックでしょ?』
桜杏子『いや意味が分からねえよ…ん…?』
桜杏子『(あの腕に付いているやつ…)』
男『それにしても随分と騒がしいな。さっきの看守もいつのまにかどっかに行っちゃったし外では何が起きてるんだ?』
桜杏子『建物の中にアマゾンが侵入した…私はここへ逃げてきたんだ。』
男『どうりで…虫の匂いがすると思ったよ。』
桜杏子『お前、匂いがわかるのか!?なあ教えてくれ、一体お前は何者なんだ!?』
男『悪いけど俺は他人にあんまり個人情報を教えたくないの。昨今は物騒な世の中だしな。ここに来てから散々尋問されたけど黙秘権を行使したよ。』
桜杏子『この期に及んでもシラを切るつもりか!』
男『まあでもお嬢ちゃんは命懸けでこの俺に会いにきてくれたんだからその可愛さに免じて話してやろう。』
桜杏子『会いに来たって…まあ結果的にはどうだけれども…わかったよ。話せ。』
男『でもその前に…』
男『ライター持ってるか?タバコに火をつけてくれ。それで等価交換だ。』
桜杏子『ったく…』
男『ほら。早く。』
桜杏子『もう…』
桜杏子『わかったよ…』
スッ…
カチッ!
ボゥッ!
桜杏子『これでいいか?』
男『サンキュ。』
男『長い時間吸えてなかったからな。定期的にニコチンを脳に回さないと落ち着かないもんだ。』
桜杏子『ヘビースモーカーも大概にしろ。』
男『値上げに喫煙所の廃止。禁煙ブームかなんだかは知らねえがスモーカーにしてみれば肩身の狭い世の中になったもんだよ。というかライター持ってるってことはお嬢ちゃんも吸うのかい?』
桜杏子『お前ほどじゃないがな。なにぶんストレスが溜まる仕事でね。』
男『そう。好きな銘柄は?マルボロ?ラーク?アイスブラスト?まさかとは思うがわかばやエコーとかいうクソ不味いもん好んでるのか?』
桜杏子『メビウスだよ…こんな話はどうでもいい。いい加減話せ!お前は何者でどうしてそのベルトを持っている。あと名前を教えろ。』
男『言ったでしょ?人に名を尋ねる時はまずは自分から名乗り出るのが礼節って。義務教育受けてれば小学校で習う。』
桜杏子『わかったよ…私は杏子。桜杏子だ。これでいいか?』
男『可愛い名前だ。お嬢ちゃんにピッタリだよ。』
桜杏子『うるせえ。お前も早く答えろ。』
男『俺の名前はKEI。これだけだ。』
桜杏子『これだけって苗字もないのかよ。というか本名なのかそれ?』
KEI『さあな。俺ですら自分の本当の名前かどうかもわからないし。』
桜杏子『どういうことだよ。じゃあKEIって名前はどこから来たんだよ。』
KEI『刻印されていたんだ。この左腕に付いてる装置にな。』
桜杏子『…!?』
桜杏子『その装置は自分で付けたんじゃないのか?どうしてそんなものを持っているんだよ。』
KEI『目覚めたら知らない間に取り付けられていた。一体なんの装置かもわからないしどれだけ力を入れても外せない。誰か俺に外す方法を教えてくれと常々思う。』
桜杏子『さっきから言ってることがめちゃくちゃだ!意味がわからない!お前はどこで生まれ育った!?なんで目覚めたらそんな物が取り付けられてる!?そもそもなんであんなベルトを使えるんだ!?』
KEI『焦ることはない…時間はいくらでもある。だから落ち着け。ゆっくり順を追って話してやるよ。』
KEI『まず第一に、俺は自分が誰だかわからないんだ。』
桜杏子『…!?』
桜杏子『記憶喪失…ということか?』
KEI『まあそんなところだな。生まれた場所も過去の自分のことも全くわからないんだ。』
桜杏子『…』
KEI『けどただ一つだけ覚えていることがある。』
桜杏子『それは…』
KEI『俺は昔、アマゾンに襲われた。』
桜杏子『…!?』
KEI『はっきりとは覚えてない…だが俺は確かにこの目で見た。俺を襲った銀色のアマゾンのことを…!』
桜杏子『…』
KEI『記憶がないのは多分その時に襲われたショックで脳をやられたんだろうな。家族も住んでる場所も、自分の存在すらもわからない。だから今も俺はホームレスですよ。』
桜杏子『…』
KEI『でも…ただのホームレスであればいいんだけどな。』
桜杏子『それって…』
KEI『ふう…』
スッ
KEI『見ろ。』
桜杏子『?』
パリン!
桜杏子『!?』
KEI『ご覧の有様だよ。これがただのホームレスに見えるか?』
桜杏子『お前それ…』
KEI『言っただろ?俺は自分が誰だかわからないって。俺は時々、自分自身が怪物なんじゃないかって不安になるんだ。』
桜杏子『怪物…』
KEI『ビンを片手で壊すなんて朝飯前だ。どんなに走っても息が切れることもない。それに…』
KEI『ちょっとの傷なら1分もしないうちに修復だ。ほら。』
桜杏子『信じられない…』
KEI『オマケに尋常じゃないくらいタンパク質を欲しまくってる…もう何が何だかわからない。加えて…』
KEI『あのベルトを使えるようになっていた。』
桜杏子『あれ…どこで手に入れたんだよ…』
KEI『それは俺が知りたいところだ。』
…
KEI『ん…』
カチャッ…
KEI『…!』
KEI『…?』
KEI『なんだこれ…外れねえ…!』
KEI『なんなんだよこれは…』
KEI『目覚めたらこの腕力をしても外れることのない装置が左腕に取り付けられていて、あのベルトを腰に巻いていた。何度も言っているが何もわからなかったんだ…』
???『グルルルルルルルルルルルル…』
KEI『…!』
アマゾンスパイダー『グルルルルルルルルルルルル…』
KEI『なんだ…お前…来るな!近寄るな!』
アマゾンスパイダー『グルルルルルルルルルルルル…』
KEI『…』
…
KEI『…!』
KEI『…』
KEI『右も左もわからなかった俺は怖くて仕方なかった…自分を守るために戦うしかなかったんだ。』
桜杏子『お前…』
カチャッ…
ガチャッ!
バッ!
KEI『ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!アマゾンッ!』
『ニューオメガッ!』
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!
アマゾンニューオメガ『ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!』
アマゾンニューオメガ『ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!』
バッ…!
アマゾンスパイダー『…!』
…
アマゾンニューオメガ『ガルルルルルルルルルルルルルルル…』
KEI『はじめは自分を守ることで精一杯だった…だが戦っていくうちに気づいてしまったんだ…』
KEI『自分の体が…本能的に戦いを求めてしまっていることに。』
KEI『楽しいんだ…楽しすぎるんだよ。戦っている時だけは…いや、アマゾンを殺している時だけは自分が怪物かもしれないという恐怖から解放してくれる…まるでドラッグのような快感だった。』
桜杏子『ドラッグって…。』
KEI『こうして戦っていくうちに俺は一つの答えにたどり着いたんだ…』
アマゾンニューオメガ『…』
KEI『アマゾンを殺し続ければ自分が人間であることを証明できるかもしれない…という答えにな。』
桜杏子『…』
KEI『俺は戦い続けた…この装置に刻印されたKEIという名前を名乗って。正義なんて褒められたものはない、目的なんてない…』
KEI『すべては自分が人間だということを証明するためだけにアマゾンを殺しているんだ。』
桜杏子『…』
…
アマゾンニューオメガ『俺は…人間だ…!』
To be continued…
Next Episode







































































































