「次に吐いたときが、分岐点です。点滴で様子見は難しくなる。
手術か、亡くなるか」
そんな事を言われていました。
だからずっと、むぎが吐くのを恐れていました。
今むぎが吐きました。
みんなむぎの近くで寝ようと、布団を持ってきていました。
その時、誰もが不思議と目が覚めました。
みんなぐっすり眠っていたのに。
私は呼ばれたような気がして。
家族で何度も話し合いをしました。
「むぎは、家と家族が大好き」
「家族の誰かいないと、鳴いて探し回る」
「家族がみんないて、楽しそうにしているのが、むぎが一番楽でいられる」
私達にわかっているのは、こんな事です。
「手術から目覚めて、知らない場所で知らない人たちがいたら、パニックで暴れるだろう」
「鳴いて鳴いて、傷口が開いて死んでしまったら、私たちのいないところで、苦しんで死んでしまったら、1番の悲しみになる」
吐いたあと、私たちは静かに片付けをして、
かわるがわるむぎを撫でました。
むぎは不思議なくらい、優しい瞳をしています。
この子は家と家族が大好きなんです。
私たちは、泣きもせず、ただ、静かに優しい声で話して、
「いつも通り」が好きなむぎのために
必死で今、それぞれ布団に戻りました。
むぎは穏やかに、
さっきの座椅子座っています。
みんなむぎの近くにいます。