日本から中国に交代するアジア 3 | きなこのブログ

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加速する中国の優勢
https://tanakanews.com/160708china.htm

7月6日、一週間前に就任した「フィリピンのトランプ」と呼ばれるドゥテルテ新大統領が、前任のアキノ政権時代の南シナ海紛争での中国敵視策を捨て、中国との話し合いを開始したいと宣言した。

ドテルテは、特使を立てて中国と話し合い、南シナ海紛争を解決し、南シナ海で中比がエネルギーの共同開発を手がけるところまで進めたいと表明している。

フィリピンはこれまで、南シナ海紛争をめぐり、東南アジア諸国の中で最も強く中国を敵視してきた(軍事面で最も強く対米従属だった)。

ドテルテは、これまでの自国の中国敵視・対米従属の国是を放棄し、中国と和解して米中双方と友好な関係を結ぶことをめざすバランス姿勢に転じることにした。

(ドテルテとトランプの共通点は、エリート支配層と対立して草の根からの支持で政治台頭し、支配層の一部であるマスコミの偏向を批判していることだが、反左翼・反リベラル的なトランプと対照的に、ドテルテはフィリピン共産党の創設者で毛沢東主義者のホセ・マリア・シソンを恩師と仰ぐなど左翼的、親中国的だ)

フィリピンは、中国やベトナムなどと並び、南シナ海の一部に対して領有権を主張し、アキノ前大統領が安保面の対米従属を強めたため、東南アジア諸国の中で最も強く中国と対立してきた。

アキノ前政権は、南シナ海問題で、中国が望む2国間交渉を拒否しつつ、2013年に、中国の領有権主張の根拠(九点破線)が不当だとする訴えを、国連海洋法に基づく仲裁機関に起こしている。

その訴えに対する判決的な結果である裁定が、7月12日に出る。フィリピンの主張が認められ、中国に不利な裁定が出ると予測されているが、中国政府は、自国に不利な裁定が出たら海洋法条約を脱退して無視すると表明している。

予測通りの裁定が出ると、中国は怒って裁定を無視すると宣言し、米国や日本が中国を非難しつつ、フィリピンにも「一緒に中国を非難しよう」と誘ってくる。

ドテルテは「その誘いには乗りません」とあらかじめ宣言しておく意味で、裁定が出る前のタイミングを選び、中国との和解交渉の意志を表明した。

ドテルテは「中国と戦争しない。戦争は汚いことだ」とも言っている。

▼中国の勝ちが確定する南シナ海紛争

フィリピンが中国敵視をやめることで、南シナ海紛争は、腰砕け的に中国の勝ちになっていく傾向が強まった。

南シナ海紛争の当事国で、フィリピンに次いで中国と対立してきたのはベトナムだが、ベトナムは以前から、対中紛争を利用して米国からの支援や協力を取り付ける一方、中国との協調的な外交関係も維持するバランス外交を展開してきた。

中国と地続きのベトナムは、70年代に中国との戦争も経験し、中国を好きでないが一定以上の対立も避けている。

ベトナムは、米軍艦に寄港を認めた後、中国軍艦にも寄港を認めている。

ASEANは今後、南シナ海紛争で中国を非難する声明を出すことを、今まで以上に避けるだろう。

すでに先日の中国ASEANサミットで、ベトナム主導でASEANとして中国批判の声明を出す動きがあったが、声明はASEAN内の親中国な諸国に潰されている。

フィリピンが中国敵視・対米従属から対中協調・対米自立に転換していくことは、日本や米国にとって地政学的に大きな後退となる。

フィリピンは、日本や、米軍基地があるグアム島から南シナ海に向かうルートの途中にある。

日米はこれまでアキノ政権のフィリピンを軍事支援し、日米比の同盟関係の枠組みで中国包囲網を作り、南シナ海で中国を威嚇する行動を続けてきた。

今回のフィリピンの寝返りは、日米の中国包囲網に風穴を開け、中国が漁夫の利的に影響圏を拡大することにつながる。

歴史的に見ると、第二次大戦後、中国は自国沖の西太平洋の支配力をしだいに拡大している。

1980年代まで中共は小さな海軍しか持たなかったが、78年の米中国交正常化後、中国は政治的に台湾より強くなり、90年代後半からは中国が軍事的にも台湾をしのぎ、南シナ海の軍事バランスも東南アジアより中国が優勢になった。

最近の1-2年で、中国は南シナ海のサンゴ礁を要塞化して軍事的な実効支配を確立した。

米国が威嚇するほど、中国は西太平洋で軍事拡大し、影響圏を広げてきた。

フィリピンは、1898年の米西戦争に勝った米国がスペインから奪って植民地にして以来、米国の支配下にあった。

フィリピンの政財界にはアキノ家をはじめ中国系(華人)も多いが(アキノ前大統領の中国名は許漸華)、国家戦略は従来、米国からの距離感がすべてであり、米国と中国を明示的にバランスする戦略を打ち出したのはドテルテが初めてだ。

今回の動きは、中国の影響圏拡大を物語っている。

フィリピンは、日本から東南アジア、インド洋に向かう航路(シーレーン)にあたり、日本の国際戦略上、重要な地域だ。

昨年来、日本は米国に誘われた中国包囲網の一環として、フィリピンへの軍事支援を増やした。

オーストラリアから潜水艦建造を受注して日豪が同盟関係を強め、フィリピンなどもそこに入る「日豪亜同盟」が形成される可能性があったが、それは今年4月、豪州が日本を退けてフランスに潜水艦を発注したことで消えた。

そして今回、フィリピン政府が対米自立、対中協調に動き出したことで、日本がフィリピンを取り込んで新たな影響圏を作れる可能性が激減した。

中国が台頭し、米国の覇権衰退が予測される中で、フィリピンは長期的に日本の影響圏に入る可能性があったわけだが、それは見えなくなり、代わりに中国がフィリピンを取り込んでグアム島の近くまで影響圏を拡大する流れが見え始めた。

日本が「海洋アジア」の盟主になることは困難になった(日本ではそもそも対米従属以外の国策が検討されず、海洋アジアの盟主なる概念も、議論すらされてこなかったが)。

日本は国力が衰退しており、今後時間が経つほど中国に対して挽回できなくなる。

日本と中国の力比べは、すでに中国の勝ちが見えている。

▼中国の知恵袋として再就職したい英国

先日、英国が国民投票でEU離脱を決めたが、これも中国の国際影響力の拡大につながる。

英政府は、EUとの経済関係が疎遠になることによるマイナスを、中国など新興市場との経済関係の強化によって埋めようとしている。

特に重要なのは金融分野だ。

英経済の大黒柱であるロンドンの金融界は従来、欧州(EU)を代表する国際金融センターとして世界から資金を集めてきた。

だが、EUとの関係が切れると金融センターとして機能できなくなり、英金融界が大幅に縮小し、英経済に大打撃を与える。

それを避けるため、英政府は、ロンドンを、急速に世界の主要通貨の一つに成り上がっている中国人民元の国際センターにしようとしている。

英国のこの動きは2年ほど前からあった。

昨年、中国が創設する国際融資機関AIIB(アジアインフラ投資銀行)への加盟を、英国がいち早く表明し、米政府を激怒させつつ中国に擦り寄って恩を売ろうとしたのは、この流れだ。

EU離脱の可決後、英政府はオズボーン財務相を中国(や他の新興市場諸国)と交渉する政府代表に任命し、中国との経済関係の強化に拍車をかけることを決めた。

オズボーンは中国など新興諸国と相次いで貿易協定を結び、EUの統合市場から抜ける穴を埋めようとしている。

中国政府も、英国との交渉開始を認めている。

(英国が離脱決定を何らかの方法で撤回していくという見方もあるが、英保守党の次期首相候補たちは皆、円滑なEU離脱に努めます、と言っている。EU側でも、英国が離脱決定を曖昧化するのを許さない意見が強まっている。英国は離脱を撤回できない)

英国は、この百年以上、植民地にした世界各地が独立する際に国境線をおかしな形で引くなどして、独立後の途上諸国が分裂気味で独裁や民主主義の無視をやらざるを得ないようにした上で、

人権や民主主義を理由にその国を制裁することを国際社会に呼びかけ(先進国の良識派が騙され「善行」と思い込んで大騒ぎ)、

大国になる潜在力を持つ新興諸国の発展を阻害し、

英国とその同盟諸国(先進国)の世界支配の永続を目指すという、

非常に巧妙で悪質な「人権外交」の戦略を発明し、

米国などとともに展開してきた。

大国になる潜在力がある中国は、香港の民主化運動やチベット、ウイグル、台湾独立、89年の天安門事件など、英米の人権外交の標的の一つだった。

英国は、中国に擦り寄るに際し、中国を人権外交の対象にしないと約束していると考えられる。

米オバマは最近もダライラマに会ったが、英キャメロン首相は12年以来会わず、ダライラマはキャメロンを「中国のカネに転んだ不道徳な人」と批判している。

かつて人権外交を発明して中国の発展を抑止してきた英国自身が、いまや中国の発展にぶら下がって自国経済を延命させようとしているのは皮肉だ。

英国でEU離脱を可決した後、与党の保守党内では、人権問題を無視して中国への擦り寄りを加速することに反対する動きがある。

だが、その動きの取りまとめ役を名乗り出たのは、中国に擦り寄って貿易協定を結ぶ交渉役のオズボーン財務相自身だった。

賛成派が、反対運動のまとめ役をやり、反対運動を潰してしまう。

このやり方も、英国の伝統的な政治技能だ。

英国は、中国だけでなく、インドやその他の旧英連邦諸国、米国などとも貿易協定を結ぼうとしている。

しかし、英国の上層部が最も期待しているのは、インドでなく、中国との関係強化だ。

その理由は、中国が、きたるべき多極型世界の大国間ネットワークであるBRICSやG20においてリーダー格であるし、中国は短期的な経済利得よりも長期的な地政学的利得を考えて動いているからだ。

英国は、近現代の世界システムを創設した国だ。

地政学(国際戦略学)も英国が作った。

もし英国が、伝統芸能である二枚舌やスパイとしてでなく、本気で中国の世界戦略に協力する関係強化をする気だとしたら、中国にとって非常に強い助っ人になる。

インドの政財界は、英国との貿易協定の提案を歓迎しつつも、インド企業にとって英国は欧州市場への足がかりなので、離脱後の英国とEUの関係性が定まらないと、英国と経済関係を強化しにくいと考えている。

インドだけでなく、日本など、世界の多くの国々の財界人が同様に考えている。

これに対し中国は、英国との関係を「新シルクロード」「一帯一路」といった、地政学的な世界戦略の文脈でとらえている。

インドや日本が「EUとの関係が定まらないうちはダメだ」といって躊躇しているすきに、中国は、アヘン戦争以来の恨みと不信感を乗り越え、窮地に陥っている英国に恩を売り、英中が特別な関係を結ぶことを模索している。

EU離脱という非常識な意志決定は、英国を、米国の覇権体制の黒幕的な一員だった状態から押し出し(解放し)、フリーランスな状態にした。

EUを離脱した英国に対し、米国は冷淡で、これが米英同盟の事実上の終わりになる(これからの米国は、英国の牛耳りから解放され、孤立主義や多極主義や西半球主義をしだいにおおっぴらに目指すようになる)。

英国は覇権運営の技能があるが、昔の職場(米欧覇権体制)にはもう戻れず、覇権運営者として失業してしまった。

そんな英国を中国が雇う話になっている。

この英国の「転職」は、そのまま世界の覇権構造の多極化につながる。

タイミング的にも、今の時期は絶妙だ(英国の上層部に、国民投票を事前運動を意図的に稚拙にやってEU離脱に導いた勢力がいる感じ)。

米日欧の中央銀行群の延命策(QEなど超緩和策)の限界が見えてきて、米国(米英)覇権の力の源泉である債券金融システムが破綻に瀕している。

リーマン危機が再来して国際金融システムが破綻すると、それは米国覇権の終焉につながり、多極型への覇権転換が加速する。

▼西側諸国が雪崩を打って中露に接近する

英中の戦略提携を、得心の笑みこらえて無理にしかめつらして待っている、もう一人の国家元首がいる。

それはロシアのプーチン大統領だ。

中国とロシア、習近平とプーチンは、すでに相互に、多極型世界における覇権運営の最重要なパートナーになっている。

一方、これまでの英国は、地政学的な意味で、ロシアを最も敵視してきた。

ロシアの方は、英国と組みたいと思っていたが、英国は、ロシアを共通の仇敵とすることで米欧を束ねて英国自身の強さにつなげる戦略だったので、ロシア敵視をやめたくなかった。

だが、そのような政治状況は、英国の自滅的なEU離脱決定によって全く変わった。

英国はもはや、ロシアを敵視する必要がない。

中国はすでにロシアと世界戦略の立案運営で組んでいるのだから、こんご英国が中国と世界戦略の立案運営で組むのなら、それは中露英の3国同盟になる。

米国を刺激せぬよう、英国は今後しばらくロシアと明示的な和解をしないかもしれない。

だが、もし英国が抜けた後のEUが、米国からの自立傾向を強めてロシアとの和解に転じるなら、英国はそれを事前に察知し、先にロシアと和解しようとするだろう。

英離脱投票の後、即座にトルコのエルドアン大統領がNATO加盟のままプーチンに擦り寄った。

このような雪崩を打った転換は、中国に対しても起こりうる。

英国が中国との関係を強化するなら、EU(独仏)も負けじと中国との関係を強化しようとするだろう。

WSJ紙は、そのような予測記事を出している。

英国のEU離脱は、英国とEUが先を争って中露に接近する事態につながるかもしれず、NATOなど、米国中心の同盟関係があっさり崩壊していくかもしれない。