今回は、私個人としても非常に思い入れの深い、そしてきくち村としても念願のプロジェクトとなった新しいオリジナル日本酒「神乃喜(かみのき)」の完成をご報告させてください。
このお酒が生まれるまでには、ある「忘れられない味」と、私たちの米作りへのこだわりが紡いだ、ひとつの物語がありました。
■ 忘れられなかった「上喜元」の味、そして苦渋の決断
私がかつて酒屋を営んでいた頃、心から惚れ込み、大好きだったお酒がありました。それが、山形県酒田市にある酒田酒造さんが醸す名酒「上喜元(じょうきげん)」です。
運よく取り扱うことができたときは本当に嬉しく、自信を持ってお客様におすすめしていました。お買い求めいただいたお客様が「美味しい!」と笑顔になってくださるのが、何よりの喜びでした。
しかしその後、店のコンセプトを大きく転換することになります。 「私たちが扱うのは、無農薬・無化学肥料・無肥料栽培で作られたお米、そしてそれを使ったものだけ」
命と自然に寄り添う食を届けるため、この確固たる基準を設けました。非常に苦渋の決断ではありましたが、当時の「上喜元」は自然栽培米での仕込みではなかったため、あんなに大好きだった酒田酒造さんとの取引からは、一度遠のくことになってしまったのです。
■ 「もう一度、あのお酒を」……直談判の旅へ
取引がなくなってからも、あの「上喜元」の洗練された味わい、体に染み渡るような美味しさが、どうしても頭から離れませんでした。
「もう一度、あの酒田酒造さんのお酒を取り扱いたい。でも、きくち村の基準は譲れない。それなら……熊本の自然栽培米を持って行って、お酒を仕込んでもらえないだろうか?」
そんな熱い想いが抑えきれなくなり、去年(2025年)の8月、私は意を決して山形県にある酒田酒造さんへと向かいました。
突然の無茶なお願いだったかもしれません。しかし、私たちのものづくりへの想い、そして何より「上喜元のお酒をもう一度届けたい」という情熱を真っ直ぐに伝えたところ、なんと蔵元に快諾していただくことができたのです!こうして、夢の仕込みがスタートしました。
■ 銘醸蔵「酒田酒造」の高度な技
ここで、今回快く仕込みを引き受けてくださった酒田酒造さんについて詳しくご紹介させてください。
【酒田酒造(山形県酒田市)】 酒どころ山形県の中でも、伝統的な酒造りの技術を色濃く残す名門蔵です。 最大の特徴は、全国的にも珍しい「自社精米」に徹底してこだわっている点。お米の性質を極限まで見極め、最適な状態に磨き上げます。さらに、酵母の選定や温度管理において卓越した技術を持ち、お米の旨味を最大限に引き出しながら、キレの良さと上品な香りを両立させる、非常にレベルの高い酒造りを行っています。
名工の手によって、熊本の自然栽培米がどのように化けるのか、期待で胸が膨らみました。
■ 託したお米は、幻の復活米「自然栽培・神力(しんりき)」
今回、酒田酒造さんに託したお米は、きくち村が誇る熊本県産の自然栽培米「神力(しんりき)」です。
【幻の米・神力とは】 明治時代に日本中で広く栽培され、日本の米のルーツの一つとも言われる大変優秀な品種です。しかし、現代の効率重視の農業(多量の肥料や農薬を必要とする栽培)には合わず、一時は姿を消した「幻の米」でもあります。 非常に大粒で、お酒にすると**「奥深いコク」と「力強い米の旨味」**が引き出されるのが特徴です。私たちはこの力を信じ、農薬や肥料を一切使わない「自然栽培」で、大地の生命力をそのまま吸い込ませて育て上げました。
酒田酒造さんの繊細な技と、大自然のパワーを秘めた神力。この二つが出会うことで、これまでにない唯一無二の日本酒を目指しました。
■ ついに完成!きくち村オリジナル「神乃喜(かみのき)」
そうして、ついに誕生したのが「神乃喜(かみのき)」です。
酒田酒造さんらしい、雑味のない洗練された美しさと、神力ならではのふくよかで力強いお米の旨味が、見事な調和を見せています。一口飲めば、あの頃私が惚れ込んだ「上喜元」のDNAと、私たちが守り続けてきた自然栽培の雫が融合しているのを、しっかりと実感していただけるはずです。
一度は諦めかけた夢が、たくさんの縁と職人の技によって最高の形になりました。自信を持って、みなさまの食卓へお届けします。ぜひ、じっくりと味わってみてください!









