アメリカはあらゆる意味において先進国であり、そのアメリカがくしゃみをすれば(日本)世界が風邪を引くと言われるほど、多大な影響力を持っている。
世界の頂点に君臨する超大国のアメリカは、軍需産業を初め、航空宇宙学、科学、情報、医療など様々な分野で最先端を走り続けている。
映画や音楽など娯楽性と芸術性を併せ持つ分野においても、他国の追随を許さず常に世界をリードし数多くの偉大なるアーティスト達を輩出しており、それは今後も続く事であろう。
然しながら、超大国であるが故の底知れぬ深い闇をも含んでいるのも事実ではないだろうか。先日、急死した歌手のホイットニー・ヒューストンに、言い知れぬ病んだアメリカの姿がわたしにはだぶって見えたのである。
当初その死因について『溺死』との報道があったが、それは彼女がバスタブに沈んだ状態で発見されたからであり、直接の死因については謎の部分が大半を占めていたが、検証の結果、処方箋の薬とアルコールを一緒に摂取していた事が判明した。
薬の内容は、不安・パニック障害などに用いられる『アルプラゾラム』と、それに加えて鎮痛剤など複数に及ぶものであった。
輝かしい栄光を手に入れ、アメリカ音楽界のトップスターとなった彼女は世界中から『歌姫』と呼ばれ、絶賛の言葉を欲しいままにして来た。
そんなスーパースターの彼女には余りにも似つかわしくない『死』の姿であるのだが、人生の螺旋階段を踏み外し、転げ落ちるように底の見えない深い闇の中へと吸い込まれ、その果てに死の扉をノックしてしまったのである。
彼女の人生が狂い始めたのは、1992年にR&B歌手の『ボビー・ブラウン』と結婚してからの事であった。一人娘を授かり一見幸せそうに見えてはいたが、夫のDV・薬物中毒、アルコール依存症、セックス中毒などにより、瞬く間にその頂点から転落。2006年に離婚後、麻薬中毒の治療を開始する事となった。
2009年に復帰作アルバム『I Look To You』がヒットし、歌姫の完全復活かとファンを喜ばせたのも束の間、薬物とアルコール依存から脱し切れずに2011年から治療に専念する事となる。
今年に入ってからは、破産寸前である事が発覚し、関係者の支援に縋りながら生きていたと言われている。
1992年に初主演映画『ボディガード』で、ケビン・コスナーと共演し、女優としての片鱗を見せつけ、そしてまた映画の主題歌『オール・ウェイズ・ラブ・ユー』が彼女自身の最大のヒット曲となっている。
薬物によってその輝かし人生を棒に振ってしまったアーティストは他にも大勢いる。2009年に死亡したマイケル・ジャクソンの場合は強力な麻酔薬『プロポフォール』を投与された事が直接の死因だったようであるが、正式には『他殺』であった事が判明している。
アメリカの音楽シーンを振り返ると、『ジャニス・ジョプリン』『ジミ・ヘンドリックス』『ジム・モリソン』など、偉大なアーティストたちが若くして、やはり薬物により命を落としている。
白人ギタリストの大御所『エリック・クラプトン』もまた、薬物・アルコール依存で長きに渡り苦しんだが、見事に復活を遂げている。
資本主義、合理主義、個人主義などが混在したアメリカ社会の象徴が、病んだ自由の女神であってはならない。
ホイットニー・ヒューストンの死は防ぐ事が出来なかったのだろうか?奈落の底でもがき苦しむ彼女の姿を多くの人間が知っていた筈である。
余りにも簡単に手に入る薬物、それはアメリカだけの問題ではなく、日本に住むわたし達の身近に起こり得る危険性を十分に孕んでいる事を忘れてはならないと思う。
