命のタイムリミット。 | プールサイドの人魚姫

プールサイドの人魚姫

うつ病回復のきっかけとなった詩集出版、うつ病、不登校、いじめ、引きこもり、虐待などを経験した著者が
迷える人達に心のメッセージを贈る、言葉のかけらを拾い集めてください。


プールサイドの人魚姫-タイム

 もし私が猫と一緒に暮らしていなければ、今頃は三井記念病院入院棟17階のいつもの大部屋で点滴を打ちながらベッドに横たわっている事だろう。

 25日の循環器外来で私を待ち受けていた診断結果は意外な内容であった。検査結果を気にしながら診察室に入ると、もの思わしげな表情を浮かべながら主治医の方から話を切り出して来た。  

 「神戸さん、調子はどうですか…」ドクターは私の心臓が悪化している事を既に確認済みのようだった。「はい、実はあまり調子が良くなくて…」。

  診察室にはキーボードと大きめのモニターがあるだけで、カルテ等は全て電子化されており、百科事典のように分厚くなった紙のカルテは既に存在しておらず、殺風景な机の上には血液検査の結果を記した一枚の紙切れがあるだけだった。  

 「クレアチニンの値は前回に比べて下がっているので腎臓への負担は軽減しているので心配ないですが…」と説明しながら電子カルテのモニターに胸部レントゲンの画像を映し出した。

  「左が前回の心臓、右が今回のものですが、前回に比べて大きく肥大しているんですよ。」それは素人の私が見てもその違いがはっきり確認出来るほど鮮明に映し出されており、一周り大きく肥大化した心臓が痛々しかった。  

 「この心臓の状態だとかなり苦しいでしょう、心不全の症状が出ている筈ですよ」確かにドクターの言う通りだった。

  都営新宿線の岩本町駅から三井記念病院まで徒歩12、3分の距離であったが、その僅かな距離を私は一気に歩いて行く事が出来なかった。  

 激しい息切れと踊り狂う心臓の動悸に襲われ、途中で何度か道にしゃがみ込み呼吸を整えなければ先に進む事は出来なかった。

  「この状態では入院と言う事になりますが…」入院の事は全く考えていなかったので、主治医の言葉に私は動揺し、ショックを受けた。  

 「猫を飼っているので、今直ぐに入院は出来ません…」。これが4年前の6月に不安定狭心症で緊急入院した時のように一刻一秒を争う事態であれば、「猫と自分の命とどちらが大事ですか!」と一喝されるところであるが、虚血性心疾患の心筋梗塞とは違い、うっ血性心疾患の場合は命のタイムリミットに若干の余裕がある為、急性心不全の場合を除き病状の進行は緩やかであり即座に入院を要する事はないが、その代わり長い時間に渡り苦しみが持続する。

  早い段階で入院し適切な治療を受ければ回復もそれだけ早くなるが、適切な処置を施さず放置しておけば、症状が固定してしまい回復の見込みがなくなり、やがては他の臓器に悪影響を及ぼし多臓器不全で死に至る事もある。  

 どちらにしても主治医の指示に従い入院する事が最善の処置ではあるが、猫の件を理由に私は入院を断った。その代わり心不全の特効薬である『セララ』を25㎎から50㎎に増やしてもらい、暫くそれで様子を見る事にした。

  但し、薬だけに頼っていては回復の望みは薄れるので、『食事制限』『水分制限』『安静』の3点を守り入院時と同様の環境を自宅で再現するしか方法はない。それでも回復しなかった時には入院を覚悟するしかないが、その前に猫の世話をしてくれる人を見つけ出さなくてはならない。  

 ペットホテルに預けるという方法もあるが、猫の場合1泊3千円と高額であり、短期の入院ならばそれもあり得るが1ヵ月に及ぶ長期入院となれば、経済的余裕がなければとてもじゃないが利用出来ない。

  どうしても預かってくれる人が見つからなかった場合は、十分の食糧と水を与えて一旦入院し、餌が無くなった頃を見計らって外出許可を貰い、猫の様子を見に自宅へ戻るしか方法はないだろう。しかし、その分自分の回復は遅れる事になるかも知れないが仕方のない事だ。  

 病気が悪化し苦しんでいる時は集中力も欠けてブログの記事を書く事すら憚られるが、何も書かないで更新しないでいるのも辛い…。

  私に残された時間が後どの位あるのか知らないし、知りたくもないが『命のタイムリミット』は必ず訪れる。然し、その時間を延ばすも縮めるも自分の判断次第である。  

 もし入院中を除き2週間以上に渡りブログの更新がなかったり、『なう』の投稿に変化がなかった時には私の身辺に何らかの異変が起こっている可能性が高いので、その時はどなたか安否の確認をして頂ければ有難いのだが、お願い出来るだろうか。