夫との馴れ初めの続きです。



私が『彼氏居るんですけど!』と言った後、Iさんの放った言葉は




『ソッチに向いてるのを、コッチに向ける様に努力してイイ?』




だった。





その次の日から、毎晩寮の電話が鳴る事になる。

病棟から私の部屋が遠からずとも見え、明かりが点いたのが分かる訳だ。


仕事が終わり、食堂で飯食ってる時には、満面の笑みのIさんが真正面に居る。

はなはだ迷惑としか言いようが無い。


部屋に帰ると当然電気を点ける。

すると鳴り出す電話のベル。



カチャッ


『ハイ…』

『お疲れ様♪今日の晩ご飯、鯖の味噌煮、全部食べてたね♪』

『ええ、まぁ…。(見てたじゃねーか!)』

『明日は何時から仕事?朝ご飯の配膳は、かづぷーちゃんかなぁ?』

『そうですけど…』

『朝から会えるなんて、楽しみだー♪』





などと、今なら完全にストーカー規正法でパクられる様な行為が延々と毎日続いた。


Iさんはどんな奴だったかと言うと、当時で既に30歳。

彼女居ない歴30年。

一人息子。

毛皮のブティック勤め。




『はは~ん、彼女が居ないので、誰でも良かったんじゃないのか?暇潰しに…』

と、私は気楽に踏んでいた。

けれども今回の交通事故で3ヶ月の入院期間になり、それも仕事中じゃなく、プライベートでの事故だったので、入院中に解雇された。

要するに、彼女居ない歴30年の、一人息子でプータローの30歳だった訳だ





程なくして、Iさんは退院し、通院になった。

それでも毎日電話は続く。


ある日の事、彼氏と遊んで明け方の4時に帰宅すると、部屋の戸に紙が貼ってあった。



かづぷーちゃん、Iさんから電話が有りました。
いつまでも待ってるそうですので、電話下さいだそうです。

10時

11時

12時

1時

2時

3時

4時























なんて気持ち悪い!!












同じ寮生の栄養士には、物凄く迷惑だっただろう。

このままでは5時にも電話が有りそうだったので、こっちからかけてみた。





ピ・ポ・パ・ポ…


トゥルッ  ガチャッ


『ハイ!!』






待ち構えていたように、電話に出たIさん。





『かづぷーちゃん??』





『ハイ、そうですけど…』









『良かったー!!無事で!!』






『あの…、私…、明日早いんで…』






『そうだね!ゆっくりおやすみ♪』
















良かった、無事でって…








この頃、私には同い年の彼氏が居た。

そいつも一人っ子。



何を隠そう、私は今まで一人っ子としか付き合った事が無い。

なので、相手が一人っ子なのには慣れてた。

私がいままで付き合って来た一人っ子と言うのは、ほとんどがマザコンなのではなく、ママが子供ベッタリのパターンばかりだった。

ある時は彼のママから電話が有り

『息子の机の手紙を読みました!高校生のクセに男子の名前を呼び捨てにするのは不良って事ね!』

と、一方的に怒鳴られた事も有ったし、彼の家に遊びに行くと

『高校生で、男子の家に遊びに行くのって普通じゃないでしょ!!』

と、追い返されたりもした。



なので、一人っ子のママと言うのが、どれ程干渉してくる物なのかは十分知ってたのである。




で、その当時付き合っていた彼に、ポロッと言ってみた。



『な~、ホンマにしつこいオッチャンやねん。結婚してくれって言うねんでー!!』



すると彼は























『そんなん、お前が決める事やからな…』



















( ̄◇ ̄;)エッ??







この後、急激に熱が冷めた。

なぜなら、正直な所、私は結構本気だったので、当然彼が

『なんや、そのオッサン!!俺が一発言うたろか!!』

と言ってくれると思っていたし

『お前は俺の女なんやからな!』

とも言ってくれると思っていた。





彼氏に熱が冷めた私には、毎日毎日、一日も欠かす事無く電話を掛けて来るストーカーのオッサンが残った。


ある日、傷心の私を気遣い、看護学校の同級生たちが遊園地に行こうと計画してくれた。

看護学校と言うのは、結構他府県から来ている子が多く、沖縄や北海道からなんて言う子も多く居た。


その頃はダブルループコースターなんて言うのがほとんど無かった時代なので、他府県から来ている同級生たちは、一度遊園地に行きたいと思っていたらしい。


そして、毎度の事で夜に電話の掛かってくるオッサン。

『明日の休みはどうするの?』と、しつこく聞くので、友人たちと遊園地に行く事を話した。


すると




















『僕も行く!!送り迎えも僕がする!遊園地代も全額僕が払う!!』




と言い出した。

この時に断っとけば良かったのだが、『全額払う!』に負けた。


『とりあえず友達に聞いてみる。』と一旦受話器を置き、友人たちに聞く。



すると、全員が

『払って貰いましょう♪送り迎えして貰いましょう♪』

と言う事になった。




友達とは一旦主要駅で待ち合わせ、そこからモノレールに乗って遊園地まで行く予定だった。

オッサンには、主要駅まで迎えに来て貰う様に連絡したが、朝、家を出ようとすると、既に寮の前に車でスタンバイしてた。



ヽ(^▽^@)ノ やぁ~





ε-(ーдー)ハァ








待ち合わせ場所に行くと、友人たちに物凄く愛想のいいオッサン。

そして、入園料を友人達の分を含めて5人分払ってくれた。

その上、乗り物券を1シートづつ買ってくれて

『足りなかったら、また買ってあげるから♪』

だった。




遊園地では、完全に荷物持ちとなり、そして会計係と化していたオッサン。

鹿児島から来ていた友人は、ダブルループコースターが物凄く恐かったらしく、降りる時点で号泣だった。







(o ̄∀ ̄)ノ■ これで涙をお拭き♪







号泣の友人に、サッとハンカチを差し出したオッサン。

友人達の反応は







オォォーーー!! w(゜ロ゜;w(゜ロ゜)w;゜ロ゜)w オォォーーー!!






帰りは喫茶店でお茶をして、その間にオッサンは友人たちを寮に一人一人送っていった。

最後の一人を送って行っている間に、私は帰ってやろうかと思ったが、みんなの分の会計がまだだったので、ココで帰ると全額私が支払う事になるから我慢して待っていた。


オッサンが戻って来たので、後はどこにも寄る事無く、真っ直ぐに寮まで送って貰い、戸口で

|寮|・x・)/バイ♪

だった。


私は完全にオッサンの事を『アッシー・メッシー・貢くん』だと思っていたので、何一つ感謝もしていなかった。

それよりか、そんなに惚れている私とデートが出来て、さぞや嬉しかった事だろうと、反対に感謝して欲しいくらいだった。



なんちゅう奴…。


翌日学校に行くと、既に教室がヤンヤヤンヤになっていた。



『団長の彼氏ってねー!すっごく優しいのよー!!』

(注・看護学校での私のあだ名は団長だった。笑)

『全部払ってくれてねー♪』

『送ってくれてさー!!』

『○ちゃんが泣いた時はハンカチ出してくれてー♪』


それを聞いたその他同級生たちは


(・0・*)ホ,(゜0゜*)ホ--ッッ!!!


と絶賛。

そこに私が現れたので、皆から

『あの後、どうしたの?』

と質問攻めだ。

しかし

『普通に、帰っただけだよ。戸口でバイバイって…』

と言うと、今度は

エェッ!?(* □ )~~~~~~~~ ゜ ゜

と、非難の嵐だ。



友人達は口々に

『あんなイイ人は居ない!!』

と言い

『あの人を彼氏じゃないなんて言うのは、人間的におかしい!!』

とまで言われた。

おまけに

『あんなに男前なのに!!』

とまで言われ、世間では男前の部類に入っている事が判明。

パーツ的にはOKだが、まとまると私の好みの顔ではない為。全くオッサンの事を男前だとは一度も思った事が無かった。




結構その頃は人生ピークのモテ期だったようで、毎日の様に看護学校への迎えが違う男だったりした。

一度はバイクで学校まで乗り付けて、『おい!かづぷー!!待っとるからなー!!』と大声で怒鳴られ、裏門から逃げた事も有った。

他クラスのムカつく女に結構男前の彼氏が居て、一度帰りが一緒になったので『飯でもどうだ?』と言うと着いてきた。

で、その男前の彼氏が、飯を食い終わって店を出ると

『この後、帰るの…?』

と言い出した。

目が、ホテルに行きたいと言っている。

で、

『ホテルって行った事有るの?』

と聞くと

『無い!』

と言う。

そして

『初めての相手になってくれないか?』

と言う訳だ。

スンナリそのままホテルに行った。

私が先にシャワーを浴び、相手がシャワーを浴びて出てくると、私はすでに着替えが終わり帰り支度をしてた。

彼は物凄く驚き

『エッ? (;゜⊿゜)ノ なんで??』

だったが

『初めての相手は、誰でもイイって思っちゃいけない。一生忘れられない人とするのが一番だよ。』

と、臭いセリフを私は吐いた。

なら、最初から行くなっちゅうの。

単に私はシャワーが浴びたかっただけだった。



次の日には一騒動だった。

私と彼とが繁華街に消えて行ったと、ムカつく女に誰かがチクッたらしく、ムカつく女は私に

『人の男に手ぇ出すんじゃねーよ!!』

と、喧嘩を売ってきた。

いい度胸だ。(笑)


男と言うのは女の浮気に対しては、女自身に怒るそうだ。

しかし、女と言うのは、相手の女に怒るらしい。

ムカつく女に突っ込まれ、私とホテルに行った事をしゃべっちまった彼。


ムカつく女は生徒たちが大勢居る校内カフェで言い出した。


散々文句を言ったムカつく女に

『うるせーよ!あんたの男が私に初めての女になってくれって言ったんだよ!!』

と怒鳴り返し

『文句が有るなら男に言いな!!』

と言ってやった。


男なんて、適当に遊んで貢がせて、ポイすればイイと思っていた10代である。

ふざけた奴だった。




それを友人達は全部知っていたので、余計にオッサンにしとけと、私を説得しだした。

それからは頻繁に私たちのイベントに着いて来るようになった。

どこかに行こうと思うと、オッサンは早朝から寮まで迎えに来る。

全ての会計は払ってくれる。

何を食べるにしても、必ず

『かづぷーちゃんは何食べたい?何でも好きな物で良いんだよ?』

と言ってくれる。












付き合ってる状態になっちまったのである。







オッサンはとっても真面目な奴で、私に手も出さないし迫っても来ない。

ただ単に、私と一緒に居るだけでニコニコしているのだ。


ハッキリ付き合うと約束した訳でも無かったので、結構オッサンに隠れて遊びに行ったりしたのだが、周りがオッサンのファンになっていたので、男遊びは完全に封じ込められていた。


と、オッサンとの付き合いが多くなると、毎週土日のどちらかに実家に帰っていたのが帰られなくなってくる。

すると当然父は激怒する。


有る日、『日曜には必ず帰って来い!!』と父からのお達しが有った。

オッサンに言うと、土曜の夜に送って行くと言う。

そりゃラッキー♪

交通費が助かる♪





そして土曜の夜。

オッサンとデートして、そのまま実家に送って貰った私は、実家のマンションの入り口でバイバイする気だった。



そこでだ。


オッサンが突然



『親御さんにご挨拶したい!』



と言い出した。



























とんでもない!!







何言い出すんだよ!!



私はだんぜん拒否したのだが、オッサンは

『大人の男として当たり前の礼儀だ!』

と言って聞かない。

『絶対に会わせて貰う!』

と言って聞かない。


『ウチのお父さん、メッチャ恐いよ…』

と言っても

『一度は会っておきたい!』

と言って聞かない。




私は渋々実家に電話を掛けた。


『お母さん?あのさぁ…。人連れて行ってイイ?』


『はあ??人って誰よ??』

(そりゃそうだ。友達でもなく、彼氏でもなく。『人』と言っているんだから不思議だろう。)

『まぁ…、男の人やねんけどね…』

『お父さんに聞いてみるわ…』

しばらくして

『一時間後に来てくれって言うとるで。』

『なんで一時間?マンションの下に居るんやけど?』


『とりあえず、一時間後にして!!』


『ハイ…』












一時間後に実家に行くと、満面の笑顔で迎えた母。

そして、今まで一度も見た事が無いくらい綺麗になっていたリビング。

そして、真ん中のテーブルの前に、デンとあぐらをかいて座っている、仁王の様な顔の父。









危うしオッサン!!



この続きは後日でまた。

ちなみに嫁はまだ熟睡中です。