最近、教会の友人との会話で

なんとも不思議な体験をした。

ある日、その友人が私に言った。

「信者Aさん一家、別の教会に

行くことにしたんだって」

へえ、そうなんだ。

 

 

少し驚いたけれど、どこの教会に

行くかは本人の自由だ。
私はAさんと特別親しいわけでもなく、

教会で会えば挨拶する程度。

だから、

「ああ、そうなんだね」

で話は終了。

 

 

そして私は、その話をきれいさっぱり忘れた。

 

 

ところが数日後。

休日にその友人から電話がかかってきた。

開口一番、

「こないだの話だけど……」

え? どの話?

「Aさんが別の教会に行くって話」

ああ、あれね。

 

 

すると友人が声をひそめて言った。

「実はあの話、Aさんまだ誰にも

話してないんだって」

そうなんだ。

「だから誰にも言わないでね」

言いませんよ。

いや、本当に。

 

 

そもそも私はAさんとそんなに親しくない。

仮にスーパーで偶然教会の人に会ったとしても、

「そういえばAさん、教会変わるらしいですよ」

なんて話題を切り出す状況が見えない。

むしろ、

「今日は牛乳安いですね」

の方が可能性として高い。

 

 

それにしても不思議だ。

秘密として扱うほど大事な話なら、

最初から私に話さなければいいのでは?

情報を配布した本人が、

後から回収に来るとは....

なんだか面倒だ。

 

 

 

私は何も言わなかったが、心の中では

「そんなに心配なら最初から配るな!」

と盛大にツッコんでいた。

ところが、この電話はまだ終わらない。

 

 

続けて友人が言った。

「あんた風邪気味なの?」

え?

「くしゃみしてたでしょ?」

してない。

一回もしてない。

風邪も引いてない。

電話越しに幻のくしゃみを検知する

能力でも身につけたのだろうか。

 

 

私は少々ムッとしながら、

「いや、してないよ。風邪も引いてないよ」

と答えた。

すると友人は、

「あっそ。それならよかった。じゃあ切るね。

まだいろいろやることがあるから」

と言って電話を終えた。

 

 

待ってほしい。

私は電話をかけてもいないし、

引き留めてもいない。

休日に電話をもらい、

秘密の口止めをされ、

存在しないくしゃみを指摘され、

最後は忙しい宣言を聞かされて終了。

 

 

なんだったんだ、この電話は。

まるで途中から脚本が変わった

ドラマみたいだった。

とりあえず私は決めた。

しばらく自分から連絡するのはやめておこう。

誰が言った、言わない。

誰が聞いた、聞いてない。

そういう話の登場人物になるのはごめんである。

 

 

 

平和が一番。

そして秘密は――

心配なら最初から配らないでほしい。