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夕暮れのニャン寺。
境内に、柔らかな風が流れていた。
モモ和尚は、縁側に腰を下ろしていた。
その横に、トラ住職が静かに座る。
しばらく、言葉はない。
モモ和尚が、ぽつりと口を開く。
「……旅をしていると、
いろんな別れに出会いますね」
トラ住職は、ゆっくりうなずくだけ。
「守れなかったものも、
置いてきた想いも、
全部、背中に積んだままです」
モモ和尚の声は、穏やかだったが、しっぽの先が、わずかに揺れていた。
トラ住職は、空を見上げる。
「……それで、よいのです」
モモ和尚が、少し驚いた顔をする。
トラ住職は続ける。
「置いてきたのではありません。預けてきただけです。想いは、ちゃんとそこに残っています」
風が吹き、境内の木々が、さわりと鳴った。
モモ和尚の目に、光がにじむ。
「……では、
私はまだ、間違っていないでしょうか」
トラ住職は、静かに微笑んだ。
「迷っているうちは、
まだ、道の途中です」
「道の途中にいる者は、
必ず、誰かの灯になります」
モモ和尚は、深く一礼する。
「……ありがとうございます」
トラ住職は、何も言わない。
ただ、そこに座っている。
夕焼けが、ふたりを包む。
その沈黙は、答えよりも、やさしかった。
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