ゴミ屋敷に眠るエルメス、シャネル…湊かなえ『C線上のアリア』が面白い

 

湊かなえさんの新作『C線上のアリア』を、

 

二晩続けて

夢中で読みふけりました。

 

楽天

Amazon

 

 

そこには、

介護という

避けて通れない「重い現実」と、

 

エルメスやシャネルといった

高級ブランドの

「永遠の定番」が放つ

 


上品で凛とした美しさが

同居していたのです。

 

父を看取った日々の記憶と

おのずと重なり合いながら、

 

色あせないものとは何か、

 

そして私が大切にしたい美学とはを

ふっと考えさせてくれた良書でした。

 

  介護ミステリーという言葉で手に取るまで時間がかかった

 

このところ夢中で読んでいた

長編ミステリー『C線上のアリア』

 

2025年2月に刊行され、

 

その翌月の日経新聞の書評で見かけた

「介護ミステリー」という文字に、

 

胸が少しざわついたのを

覚えています。

 

私にも、

一年半ほど

父を介護した日々がありました。

 

抗がん剤の影響で、

あんなに大きかった父が

骨と皮ばかりになり、

 

トイレの介助も

母とふたりがかり。

 

睡眠不足の頭で

「いつまで続くのだろう」と

途方に暮れ、

 

いざ旅立ったときには、

大きな悲しみと同時に

 

「やっと自分の生活に戻れる」と

安堵してしまった。

 

そんな自分を責め、

罪悪感という名の、

重いコートを羽織って

生きてきた気がします。

 

だから、

この本を手に取るには、

少しばかりの「勇気」が

必要だったのです。

 

  イヤミスではない読了後の希望幻想的で心が前を向く物語

 

ところが発売から一年近く経って

頁をめくってみると、

 

夢中になってとまらない。

 

 

そこにはどこか

小川洋子さんの物語のような、

 

幻想的な美しさも漂っていました。

 

読了後も、

湊作品でおなじみの

いわゆる

「読んだ後にイヤな気分になる」

ミステリーもの

(イヤミス)ではなく、

 

心がふっと、

ほんの少し前に向く感触。

 

  『C線上のアリア』のあらすじ

 

物語の舞台は、

山間に佇む「みどり屋敷」。

 

かつては丁寧な暮らしが

営まれていた美しい家が、

 

叔母・弥生さんの認知症とともに

「ゴミ屋敷」へと変貌してしまいます。

 

 

ヒヤリとする設定でありながら、

 

主人公の中年主婦、

美佐の

前向きで誠実な眼差しのせいか

 

筆致は不思議と温かい。

 

そこにあるのは、

単なる「汚れたゴミ」ではなく、

 

誰かが生きてきた「証」の堆積

だからでしょう。

 

  エルメスのスカーフ、シャネルの香水フォートナム&メイソンの紅茶ゴミ屋敷に眠る美が語る人生

 

みどり屋敷は、

主人公の美佐が

 

両親を交通事故で亡くしたあとの

高校三年間を、

叔母・弥生と過ごした思い出の場所。

 

美佐は

自分を救ってくれた

叔母の世話をしながら、

 

屋敷を

少しずつ片付け始めます。

 

祖母の形見の指輪と

 

楽天のプチプラで

高見えするお気に入りの指輪

 

 

 

 

その過程で見つかる金庫や、

屋敷に残された痕跡。

 

家族さえ知らなかった

叔母の衝撃的な過去と、

 

屋敷に秘められた大きな秘密が

しだいに明らかになっていきます。

 

なかでも心を奪われたのが、

 

屋敷に遺された

弥生の愛用品の美しさでした。

 

早くに亡くなった
弥生の夫・公雄が選んだという品々は、

 

どれも「永遠の定番」と呼ぶに

ふさわしいものばかり。

 

使い込まれて

開閉のたびに指が触れる部分だけ

金色が薄くなっている

 

 

 

金字で「Diary」と刻まれ、

月桂樹の葉が描かれた

赤い革表紙の日記帳。

 

 

イギリス製の美しい革の日記帳といえば、

やはりスマイソン


赤地に緑の植物が躍る、

エルメスのスカーフ

 

世代や時代を超えて愛される魔法の布


そして、

シャネルの香水「N°19」。

 

 

  香りが呼び起こす記憶祖母の遺品・シャネルN°19

 

これを読んで、

私も祖母の遺品である「19番」を

思わず取り出してきました。

 

 


創業者ココ・シャネル自身の

誕生日(8月19日)を

冠したこの香りは、

 

甘さや清潔感だけに逃げない、

凛とした強さを持っています。

 

ガルバナムのクールなグリーン、

アイリスの気品あるパウダリー。

 

手首につけると

幾つになっても、ほんの少し

自分が引き上げられるような…

 

背伸びしたような気分になるのです。

 

  村上春樹『ノルウェイの森』との関係不完全な人生の象徴「赤と緑」の物語

 

またこの物語には、

村上春樹さんの『ノルウェイの森』

重要なモチーフとして登場します。



「赤の上巻しか読まない男

 (主人公・美佐の夫)」

 

「緑の下巻しか読まない男

(美佐の学生時代の恋人)」


人生の半分しか見ようとしない

人間の弱さと切なさが、

赤と緑という補色の対比で、

鮮やかに描かれていました。

 

表紙もこのオマージュカラー

 

 

赤:

過去の情熱や事件、

血縁のしがらみ、

「生」の激しさ

 

緑:

現在の静かな生活、

介護(Careの日常)、 

  

そして

「死」や喪失が漂う

穏やかな絶望感

 

一見美しいけれど、

どこか不穏な世界が

 

鮮烈な反対色で

表現されているのです。

 

 

  「C線上のアリア」の意味「C」に込められた複数のキーワード

 

そして

その間に流れる「C」で始まる

単語たちの連鎖。

 

最初、私はこの本のタイトル

 

「G線上のアリア」

だと思っていたんです。

 

聞くと胸がゆったりと

開いていくようで

 

大好きなバッハのあの名曲。

 

でも、

「G」ではなく「C」なんですね。

 

バッハの「G線上のアリア」は、

 

バイオリンの4本の弦のうち

「G線(最低音の弦)1本だけ」で

 

演奏できるように

編曲されています。

 

けれど本作では、


「C」で始まる単語が

章を貫くように連なり、

 

Chain(連鎖)

Code(暗号・規約)

Cover(覆うもの・装丁)

Cabin(小屋・客室)

Change(変化)

Crime(罪)

Care(介護・配慮)

 

と...
その線の上で、

登場人物たちの独白(アリア)が

奏でられます

 

仕掛けの美しさにも、

センスの良さを感じます。

 

  過疎化の田舎で貫く美学刺繍、焼き菓子、永遠の定番

 

介護や田舎の山間部という、

一見「洗練」から遠い現実のなかで、

 

弥生さんは、

深紅のカシミヤのセーターをまとい、

 

フォートナム&メイソンの

香り高いダージリンを飲み

 

 

クリスマスローズを育て

 

 

刺繍を愛し


姪の帰宅時間に合わせて

クッキーやケーキを焼いていました。

 


⏬詳しく書いています❤️


たとえどこで暮らしても

 彼女の心の中には


常に「気品」という名の庭園と、

確かな文化、美意識があったのです。

 

  介護や遺品が残すもの故人の美学を受け継ぐ時間

 

父が逝って、3年。

 

ようやく「寂しい」と、

心から思えるようになりました。

 


介護は、

とても大変だったけど...

 

ただ苦しいだけの時間では

なかったと思います。

 

それは、

一人の人間が守ってきた「美学」を、

残された者がそっとすくい上げ、

丁寧に片付けながら

 

自分の中へ受け渡していくための

静かな儀式なのかもしれません。

 

⏬詳しく書いています❤️


  遺品とは物だけじゃないその人は自分の中で生き続ける

 

人が亡くなると、

 

肉体としての存在は、

この世界から消えてしまいます。

 

 

けれど

 

ふと口をついて出た言葉や、

自然と選んでいる好み、

ものの見方や判断の癖に、

 

「あぁ、父がここにいる」と

気づかされる瞬間があるんです。

 

その人は、

いつの間にか自分の一部になって

今も生き続けているのですね。

 

今夜も冷えそうなので、

温かい紅茶を

ゆっくり淹れようと思います。

 

 

ほんの少し、

父が好きだったブランディを垂らして。


皆さんも、

お気に入りの香水やスカーフを身につけて、

 

 

誰かの人生の「物語」に、

そっと耳を澄ませてみませんか?



最後までお読みいただき

とってもありがとうございました🫶

 

《いまここ》でした❤️

 

⏬いまここのROOM

 

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ぜひ遊びに来てください☺️

※すべて2026年1月27日執筆時の情報です。