午前十時の映画祭15
言葉なき放浪が、心を震わせる
映画「砂の器」
1974年 松竹 143分
<監督>
野村芳太郎
<脚本>
橋本忍、山田洋次
<音楽>
芥川也寸志
<原作>
松本清張『砂の器』
<キャスト>
加藤剛、島田陽子、丹波哲郎、森田健作、緒形拳、松山省二、加藤嘉、笠 智衆、渥美清、殿山泰司などなど豪華俳優陣

<内容>
ある日、国鉄蒲田操車場構内で殺害死体が発見された。
被害者の身許が分らず、捜査は難航した。が、事件を担当した警視庁刑事・今西(丹波哲郎)と西蒲田署刑事・吉村(森田健作)は地道な聞き込みの結果、事件前夜、被害者と酒を飲んでいた若い男の存在に行き当たる。
今西と吉村の2人は東北なまりの“カメダ”という言葉を数少ない手掛かりに、男の行方を追う。
しかし2人の執念の捜査もなかなか実を結ばず、犯人へと繋がる有力な情報は得られない日々が続いた。
いよいよ迷宮入りかと思われたとき、小さな新聞記事がきっかけとなって、捜査は急展開を見せ始めた
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日本映画史に残る名作!
7/5トホーシネマズ上大岡 午前十時の映画祭15にて鑑賞。言わずと知れた松本清張の同名小説の映画化ですが、TVドラマとしても何回か制作されています。
過去に記事を書いていますが、加筆などしてさらっと再度アップです。
ただし、この作品あれこれ言わず鑑賞してもらうのが一番でしょうね。日本映画史に残る名作のひとつ。
少し前に昔からのブロ友「ワンダ」さんが企画した、あなたが選ぶ「昭和映画(邦画)総選挙」のなかでも第2位に選ばれていました。
ちなみに1位は「七人の侍」でした。
私のブログを観ている方だったら、多分今作品を一度は観ているかと思いますが。でも推理ドラマですからネタバレはしないでおきましょう。
この小説を映画化するにあたって、橋本忍そして山田洋次のお二人はシナリオ作りに苦労されたようです。その甲斐があってでしょうか、見事に映像、音楽、語りが融合した展開で観ているものの心をうつ作品になっていると思います。
殺人事件を追う刑事と、成功してスポットライトをあびる音楽家が、途中までけっして交わることなく並行して展開されていきます。
松本清張の独特の推理小説ミステリー感、謎解きも満載されていて面白い。
そしてハンセン病が背景にあるのと、方言(東北訛り)がこの事件に重要な鍵を握っています。
小説より映画を先に観ましたので、この映画を大昔観た時に、東北弁と似た方言が今回の舞台である出雲地方にもあるのだと驚きで記憶にインプットされた思い出があります。
▼(音楽と映像の融合)
この作品のいちばんの見せ所といってもいいシーン。
特に印象的なのは、犯人の生い立ちと父親との放浪を描いたシーン。ほとんどセリフがなく、芥川也寸志によるオーケストラとピアノコンチェルトが流れる中、親子が海岸を歩くシーンは圧巻でした。
言葉では語れない悲しみや孤独が音楽によって語られ、観る者の心に深く染み渡ります。まるで音楽が“もう一人の語り手”のように感じられました。

私も初めて観たときから、その場面が強く記憶に残っています。
▼(物語の背景と社会的テーマ)
この作品の根底には「宿命」というテーマが流れています。
そして、ハンセン病という社会的背景が物語に深く関わってきます。
犯人の父親はハンセン病患者であり、かつては遺伝性の病と誤解されていました。そのため、村から追われ、親子で放浪の旅に出ることになります。

これは当時の「無癩県運動(むらいけんうんどう)」という政策とも関係があります。
無癩県運動とは、ハンセン病患者を摘発・強制収容し、県内から患者を“なくす”ことを目的とした社会運動です。
日本だけでなく、世界各国でも患者を隔離するコロニーが作られた歴史があります。誤った知識が生んだ悲劇でした。
このような社会情勢の中で、故郷を捨てざるを得なかった親子の姿が、物語の核心にあります。
この映画は前述したように、ハンセン病を題材にしています。そして「宿命」がテーマ。

放浪した親子は、放浪途中で親切な駐在所の警察官(緒形拳)の世話になります。
父親はハンセン病の施設へ入れられ子供と離れ離れになります。
▼(演技と感動の瞬間)
加藤嘉さん演じる父親(本浦千代吉)が、今西刑事(丹波哲郎)と面会するシーン。

写真に写る人物をみせられる。そこには離れ離れになっていた息子が写っている。
「この人を知りませんが」
と今西が問う。

「あぁぁぁ~っ! 知らねっ、知らねっ、そんな人知らねえぇっ!」
と叫ぶ本浦千代吉。
愛する息子を守るために、涙ながらに「知らない」と言い張る「慟哭」と呼ばれるほどの迫真の演技は胸に突き刺さりました。凄かったですね。

緒形拳さん演じる駐在所の警官も、親子に優しく接する姿が印象的で、島田陽子さんの初々しさも作品に彩りを添えています。
映画『砂の器』は、推理ドラマとしての面白さに加え、社会的テーマと人間ドラマが見事に融合した、日本映画史に残る名作です。
放浪のシーンでは、涙する人も多いはず。私もその一人でした。
この作品は、ただのミステリーではありません。人間の宿命、社会の偏見、そして親子の絆を深く描いた重厚なドラマです。
半世紀近く前の作品でありながら、今観てもまったく古さを感じさせず、時代を超えて私たちの心に訴えかけてきます。
まさに“日本映画の金字塔”と呼ぶにふさわしい一本。
また映画館で観ることで、その世界観により深く浸ることができました。
5点満点中4.2
(画像全てお借りしました)














