人工関節について
変形性関節症の治療において、保存療法で改善されない場合に、有効な治療法の一つとして樹脂や金属、セラミックスなどでできた人工関節を、障害の起きた関節と入れ替える「人工関節置換術」を施される。国内では膝だけで年間約7万件の手術が行われている。この件数は社会の高齢化に伴って増え続けている。
しかし人工関節には年月がたつと「ゆるみ」が生じ、患者によっては10~20年で再手術が必要になるという大きな弱点があった。
弛みは、人工関節の関節面に使用している高分子材料であるポリエチレンの摩耗粉を、マクロファージという細胞が異物として認識して取り込むことがきっかけで起こる、人工関節周囲の骨の破壊(骨吸収)が主因である。
そこで、ポリエチレンの摩耗粉を減らし、かつ摩耗粉が骨吸収を引き起こさなければ弛みを阻止できると考え、東大研究グループがナノテクノロジーを用いて創製した、ヒトの細胞膜成分と同じ構造を持つ高分子材料 MPCで関節面を覆った人工関節を開発した。
この技術は、人工関節の寿命を飛躍的に延長する長寿命型の人工関節の開発につながり、不具合を来した関節の機能改善に貢献するばかりでなく、若年齢の患者さんにも積極的に人工関節手術を行えるなど、治療方法の選択自体を根本的に変える大きな可能性もあるとしている。
現在は、日本メディカルマテリアル株式会社を加えた産学連携チームを立ち上げ、実用化に向けた最終段階の研究が進んでいるようである。