新・昭和純愛物語〜後編 | 全国No. 1短編小説家ー中国地方の観光&グルメレポ

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るるぶとかタウン情報おかやま、winkなどに載ってるスポットばかりアップしてます。メディア記載の場所に実体験したレポかな(笑)

ベトナムへ旅立つ前日
三原駅近くの喫茶店「マキシム」で 二人は
熱く そして切なく語り合った。



「どおしてもベトナムに行くのね」


「あぁ ワイは 必ず 戻ってくるから。父が生きているか確かめたら 戻ってこようと思う。

そん時 親父に ワイらの結婚を認めてもらうんじゃ」


良太郎は 飲みかけの すっかり冷めてしまったカプチーノコーヒーを飲み干した。 


花子は 何度も 行かないで とか ウチも一緒に行くと 良太郎を説得した。


しかし 喫茶店を出て 最後になるかもしれない 宿でも 良太郎は 断固として連れの男の知り合いとベトナムに行くことを変更したりしなかった。


その夜

二人は激しく愛し合った。

二人の目には 快楽と哀しみの涙が こぼれ落ちることもあった。


「花子  おまえを泣かせてばかりでごめんな。

でも 必ず 君と最初に出会った あの柿の木のところに行くから。

日付は 10月30日の16時だ。

案外 あと数ヶ月後だし 悪くないよね?」


花子の頭を撫でながら優しい口調で良太郎は言った。


「確かに……

じゃあ ウチ  柿の木の下で待ってるから。

必ず帰ってきてね良太郎。」


花子は 良太郎の厚い胸にくるまった。


「あぁ ワイは必ず帰ってくるから

だから 今が

最後かもしれない  だなんて

言わないぞ」


「ねぇ 

今の良太郎の気持ちは 歌に たとえるなら

どんな曲が浮かんでるの?」


ピアノ演奏など音楽に関心のある花子は良太郎に唐突に質問した。



「そうだなぁ。

本当は 花子を魔法で小人にして

ワイのポケットに入れて

一緒にベトナムに行けたら良いなと思ってる。

明日の夕方には

電車で もう

中国地方を離れて

ワイは ベトナムに向かっていく

あぁ 明日の今頃は

ワイは 連れと 汽車の中だろう」


そして

良太郎は

今の気持ちにふさわしい曲を

口ずさんだ。









そして

翌日の夕暮れ時


良太郎は 三原駅から汽車に乗ることになった。


出発の時刻が刻一刻と近づく。




「良太郎

きっと 帰ってきてね」


「おぅ!

約束は守るよ花子」



最後の時が近づく数時間前


こんな時に限って お互い

まだまだ語り尽くせない言葉は

あったはず

それでも

カタコトのような 言葉しか出てこない。




そんな中 電車が来たので


良太郎は手を振りながら 電車に乗った。


花子は


良太郎に力一杯手を振って送り出した。



(泣かない 泣かないんだからウチ……

笑顔で 良太郎さんを送らなきゃ)



電車は どんどん花子の視界から遠ざかっていく。






それから どれくらい 年月が経っただろうか???





約束の柿の木の下で10月30日の16時に花子は

毎年のように 良太郎の帰りを待っていた。


だが 彼は来なかった。


雨の日も風の日も

花子は 

毎年 10月末に約束の場所へ

向かった。


でも 良太郎は 戻ってこない。


「あきらめないわ ウチ。

あきらめないで 待つわ

ずっと 待つわ  わたしまーつわ いつまでも

待つわ。」




そう

花子は

88歳になっていた。

その時

花子は重い心臓病を患っていた。

足も悪くなり杖が必要だった。

そして時に心臓の発作を起こすこともあった。


おぼつかない足で

その年も10月30日の16時に 約束の柿の木の所へ行こうとした。


ビューーーッ



強い風が 柿の木の方から吹いている


「晴天なのに

台風?

おかしな天気じゃのぉ」


花子が柿の木の方を

怪訝な表情で見回すと


そこには




なんと




同じく80代後半くらいの

男性がいた。




「あなたは

もしや

良太郎さん?」









「うん ワイじゃよ。ずいぶんと

待たせてしまった。

ごめんよお。」


「ほんまに 良太郎さん

今の今まで どうしてたんじゃ?」


柿の木の方から ひょっこり身体を出して良太郎は言った。


「親父を追ってベトナムのBARに行った。

すると ベトナムのBARのマスターは 他人の空似だった。

どうやら 親父は そのBARで カメラマンとしての息抜きに よく行ってたそうなんじゃ。

でも ベトナム戦争の いざこざに紛れて 父親は命を落としたらしい。

それで 知人が見たのは BARのマスターに 一時期 親父が憑依してた  から 親父に見えてた時があったらしい  まあ よーわからんけどね真相は……」


「なるほど……でも 良太郎さん。

あんたは

どうして今の今まで 日本に帰れんかったん?」



「それはね

ワイも親父の後を継いだ 戦場のカメラマンとして

ベトナム紛争の様子に取り憑かれ

色んな写真を撮ってたのじゃ。

でも いざこざに巻き込まれて

目に怪我をして


弱視となった。

全盲では ないが 生活に それ以降ずーっと不自由しとった。 だから

花子に迷惑かけたくないし

男として かっこ悪いから日本に帰れんかったんじゃ」


「そんな 理由だったのね

でも もう これからは

一緒に日本で

暮らせるよね 良太郎さん」



「それが そうもいかんのじゃ。

ワイは

近年、わずろおてしまい

病死したんじゃ。

じゃからこれは死ぬ数年前の姿のワイの姿じゃ。」


花子は きょとーんとしている。


「そう

約束を守るため

ワイは 幽霊となってでも

ここへ来たんだ。


そして 花子。

君も

ここに来る前に 発作で意識が飛びそうになったはず。


実は もう 花子の心臓は 止まってた


じゃが 約束のここへ どうしても こないと いけんので

無き意識のまま

花子は

ここに来てしもうた



「てことは

ウチも 幽霊?」



「そういうことじゃ

じゃが

しかし……」


良太郎が 天に祈りを捧げた。


すると 晴天の霹靂!?


大きな虹が出現した。



さらに虹の光により


みるみるうちに



良太郎も花子も


あの頃の姿へと

どんどん若返っていくではないか!!!









さあ 花子

ワイらわ

今度は天国で ずっと ずーっと

仲良く幸せに暮らそうなぁ。



えぇ良太郎さん。

約束の地にウチを 迎えにきてくれてありがとう。