私の名前は「みふゆ」と言います。
音大の教授をしております。
旦那はBARのマスターをやっております。
私には2人の子供がいます。
長女の 「のあ」が中三で 受験生です。
長男の「レオン」が小学6年です。
私は心身ともに疲れきった状態でした。
理由は夫「ひでと」にあります。
ひでと との出会いは 当時 SNSブームの 先駆けともなった「モバゲー風」の 映画好き集まれオフ会 だった。
集まり自体は 数回しかなかった(集まって 飲み会のような集まりで 映画にちなんだトークをする)という内容だった。
集まり会で ひでとに歳も近いし 当時流行っていた
(韓国映画)だの(冬のソナタ)だの(猟奇的な彼女達など
映画オンリーな話題で 意気投合ー
そして 結婚ー
2人の子供も授かったが 映画の話以外は ひでと とは徐々に噛み合わなくなっていった。
そこで 旦那は鬱憤を溜めていたのだろう
BARで メンヘラの若い彼女を造り
週に一回くらいしか帰ってこなくなってしまった。
たまに帰ってきても 口論ばかり……
この結婚は 映画オフ会でのノリと勢いだけ 突っ走りすぎたのだろうか???
でも 受験を控えた のあのため
もうすぐ中学に上がる レオンの ためにも離婚という結末だけは避けるよう頑張っていました。
週一(週末の土曜日)帰ってくる時は 何食わぬ顔で
「帰ったぞぉーー」と 堂々と帰ってくる旦那。
それを嫌な顔一つせず 「パパーおかえりなさい」と言ってあげられる子供達は私よりずいぶん大人に見えたものです。
私も子供達に旦那と口論してるのを見せるのは よくないと思い 旦那には 顔がひきつる思いだけど普通に接しました。
旦那は「家庭をこんな状態のままにしてはいけない」と 何度も口論の中で言ってたが それは その場凌ぎの言葉じゃないことはわかっていた。
旦那の浮気相手のサチさんは片親家庭で育ち、親は借金地獄 あげく サチさんに 八つ当たりしまくり たまらず サチさんは当時 付き合っていた彼氏と同棲したらしい。しかしサチさんの 彼氏が事故に合い亡くなられた。
なので
サチさんは心を病んでしまった。
だからBARで親身になって話を聞いてくれる 旦那に惚れた。
そして旦那も心優しい人なので サチさんを 放っておけなかった。
いつしか サチさんのことを好きになり旦那はサチさんと交際をはじめて今に至る。
旦那は サチさんには既婚者だということは伝えていない。
なぜなら もしサチさんが ひでとが既婚者だと知ったら心を病んでるし 不安でたまらない時はODしたりリスカしたりするので ひでとは サチさんに本当のことが 言い出せないんです。
旦那も 凄く悩んでいたに違いない。
そんな月日がどれくらい経過しただろうか
私は地元のイオンモールで(映画サークルの仲良かった女友達ユミ)に ばったり会った。
そして カフェで 旦那のことや子供のこと 色々とユミに相談した。
ユミは注文していたアイスコーヒーを私の飲んでるホットコーヒーの乗ったトレイに置いて
意味深な言葉を言った。
「時計を戻したら帰れるのかな?愛し合ってたあの時へ ごめんという言葉も 愛してるという言葉もまだ伝えてないことが多いのに
心に焼きついた あなたの写真 どうしたら捨てられるの?
優しい微笑み 暖かい言葉とまなざし そして愛してると言った あの日の告白」
「ち、ちょ ちょい ユミったら
何言ってるのよ〜
急に 詩人にでも なったわけ??」
ユミの言った言葉 さらりと言ったようだが 私の記憶、そしてハートに めちゃくちゃ響いた。
さらに そのあと ユミの言った言葉が伏線なら
それを回収すべきことが起こった。
ユミは現在ミニシアターで働いているので 特別 無料招待チケットを持っていたのだった。
それは 「僕の彼女を紹介します」の無料招待チケットだった。
4枚の招待チケットが入っていた。
随分前に上映された韓国映画だったけど ユミの働いているミニシアターでリバイバル上映されるとのことだった。
土曜日の夜 ちょうど旦那もいるので
ダメ元で 旦那や子供達の前で 「明日の昼
突然だけど 久しぶりに家族で映画館に行かない〜」と言って (僕の彼女を紹介します)の招待状を
見せた。
「行く行く〜」 と のあ。
「韓流いいねぇ パパも行くなら ぼくもいくよ」
と レオンは言った。
「そうなん? なら 僕も行きます。」
やはり夫は顔が 半分 しぶったが レオンも行くとのことで 一緒に次の日 映画館に行くことが決定した。
親子4人で出かけるなんて 本当に何年ぶりなのだろう??
それが 奇しくも 「僕の彼女を紹介します」とは………
映画はチャン・ジヒョン演じるヨ・ギョンジンが奔放に振る舞う そして思い込みの激しい女性を演じていた。
そして劇中歌も「Stay」などのオールディーズが流れることも。
何より後半の恋人を亡くしたヒロインの必死で犯人を追い詰めるシーンからの X JAPANの「Tears」は 今見ても涙が どめどめなく溢れてきた。
それと 同時に 旦那のプロポーズしてきた日を思い出してしまった。
そう……
旦那がプロポーズしてきた日は15年程前か…
彼と交際して 一年記念日だった。
あの日 旦那と「僕の彼女を紹介します」を見たんだった。
そしてショッピングモールを 僕の彼女を紹介しますの内容もだけど音楽が神すぎるねーとか彼と盛り上がっていた。
すると 彼は長いトイレに行ってたっけ?? 15分以上待たされた。
そして その時 彼のバッグから なにやらリボンみたいなのが チラリと見えた
なので 本当に トイレに行ってたの?って聞いた私。
「なんか 食べすぎたかな ハハハ」と笑っていた彼。
その後 街も綺麗に見渡せる 星の瞬きも美しい有名な展望台のある山へ ひでとと2人行ったっけ
(もともと天体観測も私は好きだったので その山へ星を見に行きたいと前々から言ってたの)
「綺麗ねえ この山から見る景色。
そして キラキラと絵に描いたような星達。」
「だろう〜 でもね まだ まだ 天体観測って 奥が深いよーー
僕だって まだまだ 君の 奥の奥なんて わかりゃしないさ」
「なにそれ? 気の利いた たとえね 」私は ふふふと彼を見て笑った。
「今はまだ無理だけど いつか 君にはピクセンの天体望遠鏡を プレゼントするね」
「えっ それ 高いっしょー いいよ いいよー
しなくても」
確かにピクセンの天体望遠鏡は高いので嬉しい反面 彼には悪いなあと思って その場は 断ったのを覚えている でも いつか 買って欲しかったな
結局
今の今まで 彼は 天体望遠鏡を買ってくれなかったので
そのあと また彼と 昼間に見た映画の話で盛り上がった。
「死んだら風になって ミョンウは ギョンジンを助けたね?
でも 僕は ミョンウのような風にはならない。
なぜなら君を 優しく包み込む 風になりたい。
君がピンチの時も ピンチを吹き飛ばせる風になりたい。
君を ずっとずっと包み込む 穏やかな風となり君を守りたい
だから
だから
僕と 結婚してください。」
ひでとは トイレ行くふりをして
実は こっそり カバンにしまっていた
指輪を箱から出した。
それと同時に 「僕の彼女を紹介します」のサントラも 買ってくれてたのか
それを出してきた。
もちろん もう そんな素敵な告白をしてきた
彼のプロポーズを断るわけには いかず
より彼に惚れた私は 「YES」と 言った……
あの日のことを思い出して 涙が滝のように流れていた。
上映中に彼の方を向くと
目に涙が溜まっているが
なんとか 耐えてるように見えた。
あれから 2人でカラオケに行く時は
私は劇のEDで流れるYoumeの「風でもいいの」を歌い 彼はX JAPANの「Tears」を歌うのが定番となった。
さて 映画館を出るとすぐ、旦那は どこかへ出かけて行きました。
行き先はわかっていましたが 子供達は誰もそれを口にしませんでした。
その日 旦那から メール一つありませんでした。
次の日もメール一つありませんでした。
そして その次の日も旦那から連絡一つありませんでした。
いよいよ旦那とは 劇ED曲の「風でもいいの」の歌詞のようなことが現実味を帯びてきてるようで
寝る前に 色々思い出しては 泣けてくる日々を過ごしていました。
そして さらに次の日
それは私の誕生日の日でした。
あいかわらず旦那の帰ってこない毎日が続いていて子供達と夕食をとっていました。
別に誕生日だからといって何かを期待していたわけではありません。
むしろ自分の誕生日なんて気にかけてないので たまたまカレンダーを見た時に思い出し あわてて夕食を
ちょっと豪華にしてみただけでした(笑)
子供達は なにやら食事後も スマブラ? モンスト? ガチャガチャとゲーム音楽が わずらわしく耳に響く 誕生日なのに帰ってくることもないし連絡一つよこさない旦那にも いらついてた私。
いろんなものが溜まってたんで ついに子供達にキレちゃった。
こらぁーうるせぇんだよ
ご飯食べたなら はょ2階あがれよ
たまには 部屋の片付けでもしときなさい。いつもだらしないんだから
突然の私の怒鳴り声に 子供達は あわてて部屋を飛び出して2階の自室へ戻っていきました。
やっちまったなアタシ……
子供達だっていっぱいいっぱいで 頑張ってるはずなのに 絶対に怒鳴らないよう努力してたのに
(子供達にも こんな姿見せてしまうなんて 旦那は帰らないし )
誰もいなくなった食卓で 1人自分を責めました。
ごめんね。 本当にごめん。
落ち込んでたら 「おーーい」
のあが 階段から中途半端に降りながら 手招きして私を呼んでいる。
私は 複雑な表情を浮かべていた。
「2階 片付けたから 見にきてよ」
のあが 言った。
のあが笑顔になりそう言ったので
私は黙ってうなづき2階にあがりました。
後編に続く






