時は令和元年〜
京都の祇園に 今にも 潰れそうな「ショウワヤ」という喫茶店の話です。
祇園周辺には 八坂神社とか高台寺、知恩院などの有名な観光スポットもあり
昭和22年創業の「ショウワヤ」も 当時は栄えていた。
京都観光の立ち寄りスポットとして新聞などにも多数取り上げられていたそうな。
しかし 祇園周辺には レトロな喫茶店も その後 増加したようだ。
さらに新世代の象徴とも言うべきオシャレなカフェも21世紀から 増え続けていった。
なので「ショウワヤ」は 令和になり 今や閑古鳥状態となっていたのである。
「ショウワヤ」
看板も一部 剥げてしまっているようだ。
朝の8時オープンなのに
その日も 結局
夕方まで数人しか お客様の入りはなかった。
カウンターのショウワヤを愛する古くからの常連客が帰ろうとした時に
田中勇(タナカ イサム)という
厄介な客が やってきた。
「一見すると この大パフェは うまそうに見えた。
しかしオレの予想通りだったな。
ソフトクリームもシュークリームも この近くの京極商店街の業務用スーパーとかで手に入れてるっしょ!?
」
田中の 失礼な口調が 店内に響いた。
マスター・ケンの娘(美月)は 表情が怒りと悔しさと悲しさで 歪んだので 咄嗟に食器を拭いて
あえて田中からの視線を逸らした。
だがマスターのケンは 違った。
「おっしゃる通りです。
全て 地元のスーパーで 果物やシュークリームなども買ってきたものを利用させていただいております。」
と 思わぬ田中の発言に動じずに言った。
「令和にも なって 祇園周辺では どんどん 和や洋を取り入れたレトロな喫茶店も増えてきている。
ソワレのゼリーポンチや「ぱんなり」のスイーツ風のトーストセットとかね。
そういう喫茶店は 生き残る。
だが ここは どうだ?
スーパーで買ったものを 食わすの?
個性もない。
ただ 戦後から続けているだけだと思うぞ。」
大パフェを 不機嫌そうに食べながらケンに問いかける田中。
「確かに その通りだと思います。
昭和から続く先代が出していたメニューを私は
令和に なっても
当たり前のように 当時のレシピや食材で
お客様に提供してます。
ですが この京都祇園周辺においては ウチが どこよりもリーズナブルに お客様に 提供しているという自信はあります。」
ドーーン!
(田中勇は テーブルを 拳で 少し強めに 叩いた)
「言い訳すんじゃねえよ。
安けりゃ ええっ?
はぁ? そんな理屈通ると思ってるんかい?
なんか このパフェ、ただ でかいだけで 全て既製品みたいだし
もお いらんわ!
もお 帰るわ!」
結局、田中勇は 半分以上
大パフェを残して店を出た。
店を田中が 出て行ったのを確認して美月はケンに言った。
「お父さん〜 今の お客様
いったい何様なのっ
失礼しちゃうわね。
二度と 来るなって 感じよね」
ケンは そのあと文句も言わず テーブルを拭いていた。
煽り客に対して
特に動じている様子もなかった。
「確かに、カレーのルーそのものは
フィレ肉とか なんかええの使ってんのかな?綺麗に刻んでいるよね?
玉ねぎも丁寧に刻んでいるようだ。
だが 具がねえし ご飯そのものが 古い奴か!?
ご飯そのものが まずいので 具がないルーが
単なる 汁かけにしか 思えなくなってきたわ。
はぁあ もったいないねぇ」
またしても来店して悪態を吐く田中。
「………ムッ」
美月は さすがにイラついたので田中に一言言ってやろうと 田中の方に歩を進めようとした。
しかしケンは美月の腕を 軽くひっぱって無言で
落ち着きなさいオーラを放っていた。
先代から続く特製カレーそのものの味は
よかったからか
その日は 田中は
それ以上は文句を言わず店を出て行った。
美月「あいつ また来るとは……なんなん?
ライスが まずいとか 言いやがって。」
ケン「うちには 客も少なくて 確かに
お米は 古いのを そのまま使い回してる
彼は それを瞬時に
言い当てた……
いったい 何者?? まぁ 稼ぎがないので 当然 ウチは新米を買えないのも あるけどね」
平和ないつもの日々が続いた
そんなある日
再び彼はやってきた。
「家で 誰でも作れるフレンチトーストにKALDIのチョコを 少し加えたくらいで
本日のフレンチトーストって 提供するたぁ ふてえやろうだなあ。
多くの人は これで ボリュームあるし安いし
満足するかもしれねぇな。
だが 既製品を あの時注意したのに
まだ使っているのに 腹が立ったぞ。
満足どころか 不快感しかしないわ!」
そう言いながらも コーヒーも後から頼んで
田中は言った。
「コーヒーは悪くない。
なんか甘すぎず 香りも良い。
どこか懐かしい香りがする。
郷愁を感じる香り。
脳を刺激する 香り
気持ちを高揚させて
どことなく 笑顔になれる味がする。
後口も口内に 気を感じる。
…光のさす 黄色やオレンジ色を イメージさせるコーヒー。
これは悪くない」
「ありがとうございます。先代から受け継いだコーヒーを 評価してくださり 嬉しいです。」
ケンは深く頭を下げて喜んだ。
「コーヒーだけは評価に値する
コーヒー だ、け、 は!」
「だけとは なんなんですか!!」
ついに美月は 軽く反論した。
「フッ…」
不気味な笑みを浮かべてコーヒーを飲む田中。
そして20分後
会計の時。
田中は「ショウワヤ」に対して
脅しとも言うべき発言をして店を出て言った。
不快感MAXな美月。
店を出る前の田中のサングラスの奥に注目したケン
次回「ショウワヤ」は どうなるのであろうか
後編に続く。





