時は2019年5月初期。
地球という異世界では令和元年となった年でもある。
リンは メルヴィン戦で体内の魔法の元となるマナを相当使いすぎたためか、20代も後半になってからは魔法が思うように使えない 総合的に魔力が弱まったのを実感していた。
ある爽やかな緑香る 五月晴れの海が見える船着き場の親水公園にリンは ジェイを呼び出して 深刻な表情で こう言った。
「なんだい リン? オレ達 あのメルヴィン戦から5年後 リンが18の時に結婚して ずーっと子宝に恵まれてないことに嫌気がさして別れ話を この海に向かって言おうなんて オチじゃないよね?」
「からかわないでよジェイ。別れ話なら いつでもレンガ造りの ウチで お茶でも飲みながら するわよ。
なぜ海が見える公園に あなたを呼び出したかは とりあえず これを見てほしいからなの。」
はぁぁああーーーっ! 海の水よ 大津波となり我に力を与えたまえ〜
エンドレスウェイブ。
これはリンが使える 本来なら 戦艦さえ 沈めてしまうほどの大魔法だが、今のリンだと 大波など 起こせず
単なる高波を起こす力しか残っていないのをジェイに見せたかったようだ。
「こ、これは」
ジェイは 驚きで 思わず 瞼をぎゅつとつむり また大きく目を見開いた。
「あたしのマナは 枯れかけている 今 もし魔女メルヴィン程のものがラパスギアに攻めてこられたら 前みたいに魔法で対応できない。」
「なーに落ち込んでるのですか!リン。私に任せて。
このオレは かつて メルヴィンを秘奥義な魔法で 倒したことを忘れてないかな?」
海の穏やかな波と五月の晴れ渡った空を見上げながらリンの肩にそっと手を置いたジェイは得意げに答えた。
あれから剣術より 魔法に力を注いだジェイは今や学校の先生となり 化学や魔法を専門に指導する資格者となっていた。
しかも メルヴィン戦での あの特大魔法を使った後は3日も寝込んだが 今は マナの消耗により 翌日か翌々日に筋肉痛が激しく起きるくらいですむようだ。
三十路超えたジェイなので 本人は年かな〜とは言っているが。
そして 数年前からマナの減少に気づいてたのかリンはラパスギアの酒場街の奥の木のぬくもりを感じるログハウスでメイド喫茶を営むものとなっていた。
メイド喫茶という概念は たまに コズミックファンタジアの世界の どこかで異界と通じる穴が開くらしく
その穴から来た人間が 東京の秋葉原から来たユニークな 客がメイド喫茶って 萌え〜だと へんなことをリンに伝えていたのだった。
なので 単なるログハウスカフェから 今や すっかりメイド喫茶に生まれ変わった店内は 「萌え映えインスタ映え」という店になって 連日のように 長居する お客様で賑わっていた。
異界の穴から 召喚された 女の子二人が
これからの物語の中心を作るのかもしれない。
アイドル目指してオーデイションなど受けまくっていた桜井雅18歳〜
岡山出身。アイドルグループに数年前は所属していたが事務所とのトラブルにより 現在はソロアイドルとして 主に地下ドルとして活動している。
歌声やダンスなど評価され 岡山から東京のアイドルフェスからオファーを受けて フライトしてたら 飛行機が落雷により墜落した。
そこで墜落死するかわりに 死なずコズミックファンタジアに召喚された女の子だ。
そして時は戦国時代〜人並み外れたアクロバティックな扇子を持った攻撃や舞踊技、スピードを備えた くノ一の「五月雨舞」21歳がいた。
本来なら戦なら武将しか参加できないが あまりの身のこなしの良さと人間離れした戦闘力の持ち主として舞は 様々な戦に参加していた。
慶長20年大阪夏の陣の五月のある日、天王寺・岡山合戦にて 家康側に付いていた舞は秀吉側の武将に 生捕りにされ
縄で縛られて処刑される瞬間に身体が光り出して処刑を免れ
コズミックファンタジアに召喚されたそうだ。
桜井雅と五月雨舞は コズミックファンタジアのドワーフの村で 様々なクエストを こなしていった。
「ドワーフ村から離れたイシスの塔にいる仙人の修行をクリアし 潜在能力を引き出してこい」や「ドワーフ村の近くのエルフの里にて人間離れしたダイヤモンドの身体を手に入れる魔石をエルフ長を説得して ゲットせよ」や「隣街の宿場町にサイクロプスが現れた!退治してくるように」など 理不尽な依頼の数々だったようだ。
しかし その依頼を 雅と舞は 人間離れした不思議な力でこなし さらに人間離れした潜在能力を開花していったのだった。
二人の友としての絆も 苦楽を共にするたびに強くなっていった。
そんな2019年5月の ある日 ドワーフの長シルバは 舞と雅を呼び出して こう言った。
「舞に雅よ! もうお前達は存じておると思うが、サイクロプスやケルベロス、伝説の魔物ヒュドラまでが コズミックファンタジアで 人間を襲うことが増えてきたようじゃ。」
「ワシも サイクロプスを倒した時には 村人から 本来ならおとなしい魔物が凶暴化してきたのは 久しぶりと聞いたぜよ。」
舞は 独特の口調でドワーフの長に言った。
「伝説の魔物ヒュドラって 確か 無人島ダラムに封印されし魔物として今や忘れられてたはずですよね?」
だんだん このコズミックファンタジアの世界に慣れてきた雅も いっちょ前に 数週間で 色々学んだ知識を得ているんだという自信のある発言をシルバにしてみた。
「伝説の魔物ヒュドラの封印を解いたのは まさか古文書にも書かれておる 2004年ラパスギアで倒された魔女メルヴィンが生きており解いたのかもしれぬのじゃ」
「でも メルヴィンの姿を目撃したものは 誰もいないんですよね?」
「そうなんじゃ〜。魔女族は完全に死ねないと霊体で生き残るものもおってな 強い肉体を求めて霊体でさまよっているという 噂も耳にしたことがある」
「耳にしたことがあるってことじゃね? ぼっけえきょーてえ話じゃなあ。ワシが そのお化け魔女ごと しばき倒してやるのじゃ!」
「とりあえず コズミックファンタジアの世界で最強と呼ばれているのは ラパスギアのジェイとかリンという人間らしいぞよ。 そして そなたらと同じ異世界から召喚されてくる人間とかも この世が災いに包まれた時に救われると この古文書の予言にも書いておるよ。」
シルバは分厚い古文書を 舞と雅に見せたが
「シルバさん、こんな古文書を信じても それに左右されるばぁじゃが まあ旅行気分で ワシらラパスギアに行ってくらぁよお。」
舞は いつもながら女の子らしくない岡山弁風な喋りでシルバに言って 雅とラパスギアに旅立って行った。
ラパスギアでは 雅と舞は魔法や科学、体術も 評価され学校に入校し それ以外の歴史、数学なども学んでいった。
特に魔法と体術で顧問のジェイとは 考え方 嗜好品、雰囲気など 不思議と雅はジェイに意気投合していった。
そして教師のジェイも雅に心を寄せていった。
ジェイは リンには その事を隠していた。
バレたら リンに なんて言われることか…
学校の授業の後〜出来の悪い生徒がいて 特別レッスンして遅くなった と 学校帰りに雅と 放課後の教室で 話したりする日は リンに いつも そう言い訳していたジェイ。
ジェイは愛する妻リンを確かに 愛してる。
しかし 自分の性格的に 元ヤン風なリン激情的な内面のあるリン、なんでも ぶっきらぼうに 押し付けるリン…
とは 対照的に おひとやかで 女の子らしい雰囲気と清楚な雰囲気、落ち着いた丁寧な喋り方、溢れる優しさ など 妻にない魅力と さらに若さも兼ね備え どんどん潜在能力が開花していく優秀な 雅にジェイは 心惹かれていた。
妻のリンも 夫ジェイがいるが 妻のリン見たさにメイドカフェに来る男性に 口説かれて 営業時間後に お客様と飲みにいったという話は妻本人は喋らないが 街の人々から小耳に挟んだことはあるジェイ。
雅の事を思えば思うほど 心は苦しくなるばかり。
いっそのこと次の休みの日に リンに嘘ついて 雅と 雅が、この世界で 鍛えられたというドワーフの村を訪問すると 見せかけてデートする事に決めた。
ある6月の週末〜 ジェイは 雅に 今度の休みは二人で雅の育てられたドワーフの村へ一緒に行こうと誘った。
「先生 私 すっごく嬉しいです。 しかし奥さんとか大丈夫でしょうか?問題ないなら ぜひ ドワーフの村に案内したいと思うのですが 無理なら 私、時々 放課後 こうして先生と話すだけでも 心踊るので満足できますよ。」
満足できますよと言いながらも 俯いて 内心は 物足りなさを醸し出してる ウブな姿の雅が そこにはいた。
「私は妻には このことは 適当に ごまかすから問題ない。 何より 君といる時間を大切にしたいんだ。
君の 鍛えられた村ってやっぱり私としては見ておきたいんだ。君をより理解したいんですよ。」
ジェイは 今や教師となってるので 17歳までの ヤンチャさは 喋り方からして もうなくなっているようだ。
いや、本人は 年たがら落ち着いてきたと言っている。
帰宅してリンにジェイは こう言った。
「この日曜なんだけど オレちょっと気分転換に ドワーフの村に行ってくる。 なんか 最近 魔物とか あちこちで人間やエルフとかドワーフの村の近くでも目撃されて 死傷者も出たっていうじゃない? 人々の平和パトロールを兼ねて出かけてくるね。」
もっともらしい会話で なんとかリンを丸め込むジェイ。
「魔物には 直接手を出さない方が良いとは思うけど〜あたし的には」
「いちおう コズミックファンタジアには オムツ大魔王という 人間から魔物に転生した 変な怪人が 不思議な術で どんどん魔物を集めてるって噂も聞いたことはあるよ」
「だよねジェイ! なんでもオムツ大魔王は 自身の部下ならぬ てなづけた魔物を殺した人間とかには 必ず制裁に 魔物を複数派遣して 行ってるって言うじゃない マジ うぜえよなあ」
思い出しエピソードを 言いながら 舌打ちを連発するリン。
「まあまあまあ 落ち着きなよ。
オレ達が魔物を殺さなければ オムツ大魔王も 自ら攻めてくることもないだろうし」
などなど 適当にリンを ごまかし その週末の 6月のラベンダー咲き乱れる ドワーフの村まで ラパスギアの馬車には乗らず ラパスギアのワイバーンという 翼の生えた小型のドラゴンみたいな人を襲わない魔物に 雅とジェイは乗ってドワーフの村に 向かってた。
しかし
ドワーフの村近くで 大変な異変を目の当たりにした。
助けてくれーーっ!
うぎゃあっつつつ
伝説の魔物ヒュドラが ドワーフの村を襲っていた。
それと同時に骸骨の形をした剣士(悪霊の騎士達)が 村人達と戦っていた。
「ま、まさかヒュドラが… 伝説の魔物ヒュドラが…私は 教師として ヒュドラの伝説を知っているので その怖さも知っています。」
ジェイは 明らかにワイバーンから 降りても 狼狽えていた。
「先生、ヒュドラって この世界に詳しくない私だから よく わからないのですが 先生でも 倒せない化け物なんですか? 許せないヒュドラ… 先生が おじけづくなら私一人でもヒュドラを止めます。 長老 無事でいてください。」
雅は 普段見せないような表情で 悪霊の騎士を体術で軽く倒しながら言った。
そして どんどん 体長20mはあるヒュドラに近づいて行こうとしている。
「先生は 先生でも うううっ 待て! ヒュドラに あなた一人で やらせはさせない!」
ヒュドラとか 超大ボスとは 出くわしなくないと思ってた ジェイは 答えに詰まった。
何よりせっかくのデートが台無しである以上に 雅の育てられたドワーフの村が こんなにされていて なんとしてもヒュドラを 仕留めねばという気持ちが強かった。
なので 悪霊の騎士達を剣を抜いてさばきながら ヒュドラの元へ雅と進んで行った。
しかし 悪霊の騎士の数が多すぎる…多勢に無勢か
雅もジェイも 体術、剣術、魔法と消耗を抑えてヒュドラの前まで進んだ時には 相当 HPもMPも減っていた。
ヒュドラは 数個の顔それぞれで 炎を吐いて攻撃したり 尻尾で ジェイを吹き飛ばす。
雅もシールド魔法を唱えるが そのシールドを突き抜ける威力だ。
ジェイも 大技魔法〜あの魔女メルヴィンを倒した魔法を唱えると 勝ち目はあると見えるが いかんせん消耗しまくってるし 意外に素早いヒュドラの攻撃のため 秘奥義魔法の詠唱の隙が作れない。
そんな時に 一つの影が現れた。
「ジェイ先生 不倫しておるんじゃのお ええ身分じゃなあ」
アクロバティックな動きで奥義から炎を出しながら攻撃する その女の子は 五月雨舞だった。
「舞、どうして ここに?」
「雅ちゃん の死ぬ夢を昨日見たんじゃ。しかも それはドワーフの村で。だから 今日は 一人で買い物に隣街に行くのキャンセルして こっちに 自転車使ってきたんだワシ。」
「まあ 舞さんの悪夢は現実となりそうです。私のマナも今は消耗しすぎて ちょっと魔法が使えないんです。ヒュドラの硬い身体に剣も効かないし。」
「おまけにワシの自慢の体術も 効いてないようで ワシも困っておるんじゃ。」
「では 私達って ここが墓場になるんですか? もう元の世界に戻れないんでしょうか? こんな異世界で私 死ぬの嫌だ!!!!」
「私は嫌だ!!」
秘奥義 「不協和音速拳」
急に 閃いた 雅の 空中高く舞い上がりヒュドラの身体に蹴りを連発させる 可憐な足技。
最後に ヒュドラの硬い首を一つ 超強力なハイキックで斬り飛ばしてしまった。
やったのかーー
ジェイは叫んだ。
ククク…… オモシロイ ワレヲ ココマデ タノシマセテ クレタ ニンゲンハ ヒサシブリダ レイヲ ツクスゾ
クラウガ ヨイ
「エターナルフレア」
ヒュドラの残りの首を持つ口から 激しい炎の渦が
ジェイ達を襲う
逃げても逃げても 炎の渦が発生するようだ。
「くっ きりがない… 」
ジェイは 己のマナの回復が 思った以上遅いので その己の弱さにムカついていた。
「ワシの最期の秘奥義の出番じゃなあ!」
「私がマナを鍛える修行を もっともっとしておけば こんなことには… あれをやるんですね 舞。」
ジェイは 叫んだ。
「雅に先生、今までありがとう! 楽しかったよ。
ワシの最期の秘奥義よーーみといてぇよお」
舞は 光の粒になり 光の力はエネルギーになり
ヒュドラを道連れにして
大きな爆発と 共に 舞とヒュドラは 跡形もなく消えていった。
「舞ちゃーーーん」
雅は 廃墟となったドワーフの村で バラバラになった舞の死を受け入れられないでいた。
この世界で唯一無二の親友だった舞。
苦楽をドワーフの村で共にしてきた友。
死なんて嘘だといいのに そう思った。
(そういえば先生は禁断の術を研究してるとか……ネクロマンサー術? 力はネクロマンサーという死霊姿で復活するなら数倍以上パワーアップし… 運が良ければ元の姿と人格になる あの禁断の術、しかし ネクロマンサー化した力は 他の見えない霊体に憑依される危険性もあるという 恐ろしい禁断の術 ネクロマンサー術があるよね???)
次回、ジェイはネクロマンサー術を拒むのか使用してしまうのか…


