中学受験という道のり、本当にお疲れ様です。
プロの講師として長年、多くの受験生と保護者様を見てきましたが、最も指導が難しくなる瞬間は、保護者様が感情的になってしまうときです。

感情的になるのは、あなたが未熟だからではありません。そこには、私たち人間なら誰でも持つ、根深い心の仕組みが働いています。

あなたの怒りを感じる根本原因は、「こうあるべき」という強い信念が裏切られたと感じる瞬間にあります。

「受験生なのだから、自ら進んで勉強すべきだ」「親が何度言ったことは、すぐに実行すべきだ」。この「べき」が破られると、私たちは子どもの行動を「悪意」や「反抗」といった内面的な資質に結びつけてしまい、結果として怒り(叱責)が生まれてしまうのです。

心理学的罠
あなたの怒りは「決めつけ」から生まれている
心理学では、他者のネガティブな行動を見たとき、状況的な理由(疲労、不安、体調など)を軽視し、その人の内面的な資質(やる気がない、だらしがない、反抗的だ)に原因を決めつけてしまう傾向を「根本的な帰属の誤り」と呼びます。

いわゆる心理的認知バイアスの一種ですね

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例えば、お子様が勉強中に鉛筆をカチカチと鳴らし、集中力が続かないとき。あなたは無意識に、「集中力がない、受験への覚悟が足りない子だ」と内面に原因を決めつけているかもしれません。この決めつけこそが、感情的な叱責へと繋がります。

こうした時に「理解の意味付けを変える」手法は、この認知バイアスを意識的に修正するものです。

感情的な「決めつけ」を、意識的に「なぜだろう?」という探求の形に変えること。つまり、お子様の行動を「反抗」ではなく、「なぜ、今、集中できないのだろう?」という冷静な「疑問」として捉え直すことが、私たち保護者の指導の質を高める鍵となります。


私も講師になりたての時は、よく怒鳴り散らしていました。生徒をなんとかしなきゃという思いからの言動でしたが、強い叱責によって伸びる成績には限界があることにあるとき気がつき、「意味付けを変える」手法に切り替えました。

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🤝 アドラーの視点
怒りを捨てると「支配」から「勇気づけ」に変わる

心理学者アルフレッド・アドラーは、怒りとは「相手を思い通りに動かしたい(支配したい)」という目的を達成するための手段だと考えました。


感情的に叱責することは、一時的に子どもを従わせる力はありますが、それは恐怖による「支配」です。子どもは「怒られないこと」を目的に行動するようになり、自ら考える主体性を失います。

あなたが「なぜだろう?」と問いかけ、行動の裏にある真の目的を探り始めると、指導は一変します。

例えば、お子様が問題集を適当に解いてしまうのは、実は「失敗を恐れている」という目的(どうせ完璧にはできないから適当にやろう、という勇気くじき)かもしれません。


また、質問されても「わかった」と答えてしまうのは、「無能だと思われたくない」「親の期待を裏切りたくない」という不安が隠れているかもしれません。

その目的が分かれば、指導者の行動は「なぜ適当にやるんだ!」という支配的な叱責から、「完璧じゃなくていいよ。間違えた問題から必ず学べるよ」といった建設的な「勇気づけ」に変わります。

「理解の意味付けを変える」ことは、指導者の感情を鎮めるだけでなく、指導そのものを「支配」から「勇気づけ」へと質的に進化させるための鍵となるのです。

 保護者自身のストレス軽減と自己肯定感
この手法は、子どもの指導改善だけでなく、あなた自身の心の健康にとっても極めて重要です。
「疑問」のモードに入ることで、脳は闘争(怒り)から分析・探求へと切り替わり、怒りの感情そのものが湧きにくくなります。

これにより、ガミガミ叱った後に感じる「また怒ってしまった」という自己嫌悪から解放されます。
「なぜだろう?」から入って根本原因を特定し、建設的な対話に成功すると、「親として、指導者として、問題の核心を解決できた」という成功体験が得られます。この成功体験こそが、あなた自身の自己肯定感を高め、「私は子どもを正しく導ける」という自信につながるのです。

最後に
お子様の行動にイラッとしたとき、一瞬立ち止まり、深呼吸をして、心の中で唱えてみてください。
「これは、なぜだろう?」

このシンプルな一言が、あなたとお子様の関係を、そして受験の結果を、より良い方向へ導く鍵となります。

人間ですからイライラすることもあるのが当たり前ですし、子どもの言動、特に受験という高い目標を真剣に掲げているのならば尚更のことです。

私は生徒を叱ろうかなと思った時は必ず、この子を良くしようと思って、自分はこの子を叱ろうと思っているが、その前に、自分が叱ろうと判断した原因にずれや誤りがあるのではないかと考えるようにしています。

そして、「なぜ(なんで)」「どうして」という疑問詞を使わないように話しかけるようにしています。

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授業中に私語が多い子の例

授業後に


さっき、授業と関係ない話を何度もしていましたが

君は授業中に、授業と関係ない話をしてはいけないことを知っていますよね。


授業に集中したい他の生徒の迷惑になることも知っていますよね。


「どうすれば」授業と関係ない話をやめられるの?

先生は協力したいから、授業中に君がおしゃべりしちゃう理由を教えてくれないかな。




最初に2回、生徒が「はい」と答えるクローズドクエスチョンを行い、イエスを2回取ります。これは返事しなくてもいいです。

次に「どうすれば」という疑問詞で必ず始め、〜できる?の形式で「やめてほしいこと」を伝えます。

協力したいから理由を教えてほしいと問いかけます。

大抵は、謝るか「もうしません」と言いますので深追いはしません。「じゃあ、次は直してくれるね。」で終わります。

黙ったままの場合、塾では時間制限があるので、しばらく様子を見て、終わらせますが、家庭では、何か理由をいうまで逃さないのがいいでしょう。

塾では、私の見た目もあるかもしれませんが、大体は、同じ質問を3回する間に改善されます。

お試しあれ