おいで おいでよ 青の国
薄れることのない 青の国
荷物はおいて 裸足でおいで
ここでは 誰もが 愛される
おいで おいでよ 青の国
思い出そうよ
はじまりの国
ーー 青の国 written by 優河『Tabiji』 より
*「青の国」のスキャットのところ、CMに使われているようです。
優河ちゃんの『青の国』…
久しぶりに、全身の細胞が震えた歌です。
この歌を初めて耳にしたとき、
空から清らかな音の水粒が降り注いで
すべてが洗い流されたような
真っさらな赤ちゃんに生まれ変わったような気持ちになりました。
こういうオリジナル曲も素晴らしいけれど、
優河ちゃんヴァージョンの Moriartyの「Jimmy」 や、
Leonard Cohenの「Hallelujah」などのカヴァーも大好きです。

そして、
今夜は、
『シュール アルーン』について…
童女のような彼女が、
小さなライブハウスの 小さなステージに静かに佇み、
朗読を 交えて
アコースティックギターを爪引きながら
この歌を歌うと…
不思議、不思議、
ゆらゆらと蜃気楼のように、
物語のセピア色の映像が浮かび上がります。
その映像の中の 一点 の "赤" だけが、
火のように、血のように、叫びのように、鮮烈で、
消えない残像となって心に残る…
いつまでも "赤" が 心に痛い…
この歌は、
アイルランドの古い民謡ですが、
遠い西の果ての島の何代もの人々の声が
波のように折り重なって、
東の果ての島国の 今の日本に 響いてくる…。
戦争の歌です。
シュール アルーン…という神秘的な響きは、
ゲール語なのだそうでして、
ライブの後で、
彼女が、ゲール語のスペルを
私に教えてくれました。

魔法の言葉が綴られた
彼女の素敵なノート…
朗読用の大切なノートの
空白の頁に
Suil A Ruin … と書いて
ピリリと破って 切れ端をくれました ・:,。☆

『siúil a rún』とは、
アイルランドで、昔々から歌い継がれた伝承曲。
この歌は、年代を経てさまざまなヴァージョンがあり、
たしかな原曲原詞、由来は不明なんですね。
しかし、
恋人を故郷に残し、アイルランドの若者が
フランスへと戦争に赴く…
生きて再び帰ることのないであろう若者との別れを
嘆き悲しむ女性の歌であることはたしかです。
17世紀、清教徒革命の影響による動乱のさなかにあったアイルランド。
プロテスタントイングランド軍がカトリック勢力を抑えることを名目に、
アイルランド征服を行い、カトリック系住民の土地を奪うなど、
実質的な植民地化を強行しました。
アイルランドの若者たちは、小作人として奴隷のように暮らすより、
傭兵として他国の為に戦う事を選び、故郷を後にしました。
後に彼らはルイ14世の軍やハプスブルグ家の為に戦う事になります。
彼らは、越冬する雁の群れに自らを例え、
「ワイルドギース wild geese」と称したと言います。
彼女の恋人は、ワイルドギース のひとりだったのかもしれません。
歌中のペチコートを〈赤く染める〉…とは、
欧州の古い風習を暗喩しているようです。
たった1日、閏年の2月29日に、
女性から結婚を申し込むことができるとされ、
また、色のついたペチコートを身につけるのは、
既婚女性だけに限られたそうです。
Siuil A Run
I wish I was on yonder hill
もっと遠くの丘まで行けたらいいのに
'Tis there I'd sit and cry my fill
そしたら思う存分泣けるのに
Until every tear would turn a mill
涙で水車が回るほどに
I'll sell my rock, I'll sell my reel
糸まき棒を売るわ。糸まきも売る
I'll sell my only spinning wheel
一つしかない糸ぐるまも売る
To buy my love a sword of steel
愛しいあなたに鋼の剣を買ってあげる
Siúil, siúil, siúil a rún(Walk, walk, walk, my love)
行って。もう行って。愛しい人よ
Siúil go socair agus siúil go ciúin(Walk calmly and walk quietly)
そっと静かに出て行って
Siúil go doras agus éalaigh liom(Walk to the door and flee with me)
戸口まで行ったなら、私を連れて逃げて
Is go dté tú mo mhúirnín slán(And may you go safely, my dear)
愛しいあなたが安らかでありますように
I'll dye my petticoats, I'll dye them red
ペティコートを染めるわ。赤く染める
And round the world I'll beg my bread
世界じゅうを物乞いしてまわる
Until my parents shall wish me dead
親に「死んだほうがまし」と思われるほどに
I wish, I wish, I wish in vain
望んでも、望んでも、望んでも無駄なこと
I wish I had my heart again
それでもあなたを取り戻したい
And vainly think I'd not complain
ただ「この苦しさを口には出すまい」とむなしく思うだけ
But now my love has gone to France
愛しいあなたはフランスへ行ってしまったのだから
to try his fortune to advance
武運をためすために
If he e'er comes back 'tis but a chance
戻ってくるなんて想像もつかない
Siúil, siúil, siúil a rún(Walk, walk, walk, my love)
行って。もう行って。愛しい人よ
Siúil go socair agus siúil go ciúin(Walk quietly and walk peacefully)
そっと静かに出て行って
Siúil go doras agus éalaigh liom(Walk to the door and flee with me)
戸口まで行ったなら、私を連れて逃げて
Is go dté tú mo mhúirnín slán(And may you go safely my dear)
愛しいあなたが安らかでありますように
◇ ◇
そして、この歌はアイルランド移民とともに大西洋を渡り、
アメリカの独立戦争の頃から口承で伝えられました。
英語に取って代わられ、失われつつあるゲール語ですが、
アメリカでも、「シュール・アルーン」という美しい響きは、
スキャットのように歌われ、そのまま残ったのですね。
Diane Taraz
ニューイングランド ボストンを拠点とする伝統的民族音楽歌手
http://www.dianetaraz.com
Johnny's Gone for a Soldier
Here I sit on Buttermilk Hill
バターミルクの丘に座り
Who can blame me, cryin' my fill
私が泣くのを誰が責められるだろう
And every tear would turn a mill
涙で水車が回るほどに
Johnny has gone for a soldier
ジョニーは戦争に行ってしまった
Shule, shule, shule aroon
シュール、シュール、シュール、アルーン
Sure, ah sure, and he loves me
たしかに、たしかに彼は私を愛している
When he comes back we'll married be
だから彼が戻ったら結婚するんだ
Johnny has gone for a soldier
ジョニーは戦争に行ってしまった
Me, oh my, I loved him so
ああ、私はこれほどに彼を愛していたのか
Broke my heart to see him go
彼が行って私の心は砕けてしまった
And only time will heal my woe
ただ時だけが私の悲しみを癒すのだろう
Johnny has gone for a soldier
ジョニーは戦争に行ってしまった
I'll sell my rod, I'll sell my reel
糸巻き棒も糸巻きも売ろう
Likewise I'll sell my spinning wheel
糸車も売ってしまおう
And buy my love a sword of steel
愛しい人に鋼の剣を買うために
Johnny has gone for a soldier
ジョニーは戦争に行ってしまった
I'll dye my dress, I'll dye it red
ドレスを染めよう。赤く染めよう
And through the streets I'll beg for bread
町じゅうで物乞いもしよう
For the lad that I love from me has fled
愛する人は私から去ってしまったのだから
Johnny has gone for a soldier
ジョニーは戦争に行ってしまった
◇ ◇
『siúil a rún 』の変形ヴァージョンは、
たくさんありますが、
もっとも よく知られているのは、
PPMの 『Gone the Rainbow』でしょうか。
Peter, Paul, & Mary - Gone the Rainbow
(Chorus)
Shule, shule, shule-a-roo, (Siúil, siúil, siúil a rúin) ※ゲール語
Shule-a-rak-shak, shule-a-ba-ba-coo. (Siúil go socair agus siúil go ciúin)
When I saw my sally babby beal, (Siúil go doras agus éalaigh liom)
Come bibble in the boo shy lorey. (Is go dté tú mo mhúirnín slán)
(Chorus)
Shule, shule, shule-a-roo, Walk, walk, walking secrets ※英語
Shule-a-rak-shak, shule-a-ba-ba-coo. Walk quietly and silently walking
When I saw my sally babby beal, Walk to the door and escaped with me Come bibble in the boo shy lorey. It may you go, my darling
◇ ◇
赤狩りと闘った 〈ハリウッド10〉の映画人のひとり、
トランボ監督の『ジョニーは戦場に行った』も、
『siúil a rún 』の魂を受け継ぐ名作なのではないでしょうか。
The Hollywood Ten
アルヴァ・ベッシー (脚本家)
ハーバート・ビーバーマン (映画監督・脚本家)
レスター・コール (脚本家)
エドワード・ドミトリク (映画監督)
リング・ラードナー・ジュニア (ジャーナリスト・脚本家)
ジョン・ハワード・ローソン (作家・脚本家)
アルバート・マルツ (作家・脚本家)
サミュエル・オーニッツ (脚本家)
エイドリアン・スコット (脚本家・プロデューサー)
ダルトン・トランボ (脚本家・映画監督)
「ジョニーは戦場へ行ったという映画は、
戦争でこういうことになるよ、ということ以上に、
言いたいことが言えない!
言いたいことが伝わらない!
言いたいことを言っても潰されてしまう!
トランボ監督自身が赤狩りで味わった体験を
手足を奪われ身動きが取れなくて
口がきけないというジョニーに例えてるんですね。」
「言いたいことが言えなくて、
何もできなくて、
世の中に自分を弄ばれるなら、
ジョニーと同じなんですね。」
「世の中がおかしい!という時に、
おかしい!と
言えないならば、
ジョニーとどう違うのか」
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