『 金のボタン 』 (一)
あるところに 古い帽子をかぶって
ぶかぶかの上着をきた 小さなネコが いました。
小さなネコは お父さんとふたりで 村から少しはなれたところに
くらしていました。
ネコたち おやこは ちょっとかわったみどりの毛の色をしていたので
村の 黒やしろ 茶色や灰色のネコたちが おっかながったからです。
けれども ある日 お父さんは年をとって死んでしまいました。
ひとりになった小さなネコは 家のそばの年中みどりを茂らせている
大きな木のふもとに おはかをたて 家をたたんで
お父さんが好きだった古い帽子をかぶり
ぶかぶかの上着をきて 旅にでることにしたのです。
その日も 小さなネコは ひとりで夕焼けの道をあるきながら
風の歌をきいていました。
風は 何万年もの旅の物語を歌ってくれるのです。
風は どこかで産まれた子ネコを祝うときは やさしい声で
むごい戦をなげくときには おそろしい声で
毎日 千の歌を 千の声で歌います。
旅をするうちに 風の歌をすっかり愛してしまった 小さなネコは いつか
風のとおってきた道を 飛んでみたいと夢みるようになりました。
ちょうどお腹がすいていたその夕べ
風は たいそういい匂いもはこんできてくれました。
そして その歌は 一日でいちばんの幸せの歌でした。
小さなネコは うっとりと ききほれ お腹がすいていたのも忘れるほどでした。
風の歌が いちだんと盛り上がり 美しい裏声になった そのとき
きていた上着のいちばん下の ボタンがとれて おっこちてしまいました。
お父さんの上着は とても古いのでボタンを縫い付けた糸も古くなって
切れてしまったのです。
ころころころ・・・ でも小さなネコは少しも 気づきません。
ころころころころ・・・
金のボタンがころがっていった そのさきで
一匹のカラスが きょろきょろ目玉で それをみていました。
このカラスは 光るものを とても愛していました。
夜 山でねむるとき きらきら光る星をながめながら
いつか あの星を 自分のあたまに飾ったら
さぞかし美しいだろう。
それに カラスの黒い羽根でも 黒い夜のなかを
迷わず飛んでいけるだろうと 夢みていました。
そして 風の道を飛ぶことを夢みる小さなネコと
星を頭に飾ることを夢みるカラスは
ここで 初めて 目と目をあわすのです。
---- つづく ----
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