テレビの見過ぎで脳が縮む?!「座りっぱなし」でも内容によって脳への影響が違う | みのり先生の診察室

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「座りっぱなしは体に悪い」

これはもう、多くの人が知っていることだと思います。

長時間座っている生活は、肥満や糖尿病、心血管疾患など、さまざまな病気との関連が指摘されています。

そして最近では、

「座っている時間が長いと認知症リスクも高くなるのでは?」

という研究も増えてきました。

ところが今回、とても興味深い論文を見つけました。

なんと、

同じ“座っている”でも、テレビを見て座っているのと、仕事で座っているのとでは、脳への影響が違う可能性がある

 

 

 

というのです。

これはなかなか面白いですよね。

 

 

1700人以上を20年以上追跡

 

今回の研究では、米国の大規模疫学研究「ARIC Study」に参加した1,712人が解析されました。

研究開始時の平均年齢は約53歳。

まず

・テレビをどのくらい見るか
・仕事中にどのくらい座っているか

といった生活習慣を調査。

そして約22~24年後にMRIを撮影して、脳の状態を詳しく調べました。

つまり、

50代頃の座り方と、70代頃の脳の状態との関連を調べた

というわけです。
 

 

テレビをよく見る人は脳に好ましくない変化

 

その結果、テレビを見る時間が長い人ほど、

・脳の白質病変が多い
・前頭葉の容積が小さい
・後頭葉の容積が小さい
・アルツハイマー病と関連の深い脳領域の容積が小さい


という関連が認められました。

ここで出てくる「白質病変」という言葉。

MRIを撮ったことがある人なら、

「白い部分がありますね」

などと言われたことがあるかもしれません。

白質病変は、脳の細い血管の障害などによって生じる変化で、加齢とともに増える傾向があります。

多くなるほど、将来的な認知機能低下や脳卒中、認知症などとの関連が指摘されています。

つまり、

テレビをよく見る生活をしていた人ほど、20年以上経ってから脳に好ましくない変化がみられた

ということになります。

 

 

ところが「仕事で座る」のは結果が違った

 

ここからが面白いところです。

仕事中によく座っていた人では、逆に

・白質病変が少ない
・頭頂葉が大きい
・後頭葉が大きい

という関連が認められました。

特に男性では前頭葉も大きい傾向があったそうです。

あれ?

同じ「座っている」という行為なのに、なぜ結果がこんなに違うのでしょう?

 

 

大切なのは「座って何をしているか」かもしれない

 

テレビを見るという行為は、多くの場合、座って画面を眺めるだけ。

もちろん番組の内容にもよりますが、基本的にはかなり受動的な行動です。

一方で仕事中は、

・文章を読む
・考える
・書く
・判断する
・計算する
・人と話す
・問題を解決する

など、座っていても脳はかなり使っています。

つまり今回の研究から考えられるのは、

「座っている時間の長さ」だけではなく、「その時間に脳を使っているかどうか」が大切なのではないか

ということです。

 

 

運動不足だけでは説明できなかった

 

ここも重要なポイントです。

「テレビをたくさん見る人は、単に運動不足だから脳に悪かっただけでは?」

と思いますよね。

ところがこの研究では、運動量などの影響を統計的に調整しても、テレビ視聴と脳の変化との関連が残っていました。

つまり、

単純に“運動していないから”という理由だけでは説明できない可能性がある

ということです。

 

 

「座りっぱなし=全部悪い」ではない?

 

これまで健康情報では、

「座っている時間を減らしましょう」

と言われることが多かったと思います。

もちろん、長時間ずっと座り続けることが健康に良いわけではありません。

血流の問題もありますし、筋肉を使わない時間が長くなることによる代謝への悪影響もあります。

でも今回の研究を見ると、

座っている行動を全部ひとまとめにして考えるのも違うのかもしれない

と思いました。

同じ2時間座っているとしても、

テレビをぼーっと2時間見るのと、

本を読む
文章を書く
勉強する
楽器を弾く
将棋や囲碁をする
手芸をする
誰かと会話する

という時間では、脳への刺激は全く違います。

 

 

「体を動かす」だけでなく「頭を使う」

 

認知症予防というと、「運動しましょう」という話が必ず出てきます。

もちろん運動はとても大切です。

でも脳も使わなければ衰えていきます。

だから私は、

体を動かすことと同じくらい、日常生活の中で頭を使うことも大切

なのではないかと思います。

特に仕事をリタイアしたあと。

それまで毎日、

人と話す
予定を立てる
判断する
文章を書く
数字を見る

といった作業をしていた人が、急に一日中テレビを見る生活になったらどうでしょう。

身体活動だけでなく、脳への刺激も一気に減ってしまいます。

これは認知症予防を考える上でも、結構重要な視点ではないでしょうか。
 

 

だからといって「テレビを見ると脳が縮む」とは言えません

 

ここは誤解のないように書いておきます。

今回の研究は観察研究です。

したがって、

テレビを見る
↓
脳が萎縮する

という因果関係が証明されたわけではありません。

また、テレビを見る時間や仕事で座っている時間は自己申告によるもので、正確に何時間測ったという研究でもありません。

しかも生活習慣を調査してからMRIを撮影するまで20年以上あります。

その間に生活習慣が変わった人も当然いるでしょう。

また今回調べたのは、実際に認知症になったかどうかではなく、

脳容積や白質病変といったMRI上の変化

です。

ですから、

「テレビを見ると認知症になる」

と結論づけるのは早すぎます。

 

 

テレビを消して何かやってみる

 

それでも今回の研究は、日常生活を考える上で一つのヒントになると思います。

家に帰ったらとりあえずテレビをつける。

朝起きたらテレビ。

食事中もテレビ。

一日中テレビがついている。

そんな生活をしている人も多いのではないでしょうか。

もちろんテレビを見ること自体が悪いわけではありません。

好きな番組を見て笑ったり、ニュースを見たり、映画を楽しんだりすることも大切です。

ただ、

「何となくテレビをつけっぱなしにして、ぼーっと眺めている時間」

が何時間もあるのであれば、そのうち30分でもいいので、

本を読む
誰かと話す
文章を書く
勉強する
趣味をする
散歩する

そんな時間に変えてみてもいいかもしれません。

 

 

脳も使わなければ衰える

 

今回の研究を一言でまとめるなら、

「座っているかどうかだけでなく、座って何をしているかも重要かもしれない」

ということ。

健康のためには、

体を動かす。
そして頭も動かす。

どちらも大切ですね。

年齢を重ねても、

「考える」
「学ぶ」
「人と話す」
「新しいことをする」

ことをやめない。

これも脳を元気に保つための、大切な生活習慣なのかもしれません。

【参考論文】
Sedentary behavior domains and brain magnetic resonance imaging markers: The Atherosclerosis Risk in Communities Study
Alzheimer's & Dementia, 2026
PMID: 42429220

 

 

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