脱肛術後に病院から出勤した女性 | みのり先生の診察室

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肛門科専門医の女医がつづる
お尻で悩める人へのメッセージ

今日のブログは閉鎖した診療所のオフィシャルブログに掲載していた記事をリライトしてお届け致します。

 

院長が執筆した記事なのですが私のブログで大切な記録として残したいと思います。

 

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院長の佐々木巌です。 

 

入院で手術を受けた方の経過を、記事にさせていただきます。   

 

元にしたのはこの方からいただいたお手紙です。 

 

大変な長文でしたので、入院中の詳細が分かりました。 

 

本来でしたらお手紙を原文のまま掲載したいのですが、医療広告ガイドラインに準拠して症例報告として掲載します。   

 

で、タイトルにある通り、この方は入院中に出勤されたのです(苦笑) 

 

決してお勧めする訳ではないのですが、ま、そんな方もおられる、という例です。

 

脱肛で入院手術を受けられた70代女性

患者さんは70代の女性、当院から徒歩10分程度のところに長年勤務されている方でした。   

 

20数年前から肛門のでっぱりを自覚し、でっぱるたびに押し込む、ということを繰り返してこられました。 

 

どうしようもなくなったら受診して手術しようと考えて、そのままにしておられたのです。 

 

2~3年くらい前から、年に数回出血し、そのたび1週間ほどで止まるということがはじまりました。 

 

しかし受診の2ヶ月くらい前から始まった出血は、1ヶ月近く経っても止まりません。 

 

出血量も毎回多量で気分も滅入ってくるし、貧血も心配で、とうとう受診することにしたということでした。   

 

この方が当院を選んだきっかけというのが面白くて、 

 

以前、天満橋の近くで、遠方から来られたように見受けられる老夫婦に「大阪肛門病院に行きたい」と道順を聞かれたことがあった。その時「こんなわかりにくいところにある病院にわざわざ訪ねてくるなんて・・」という印象だった。 

 

ということ。(当時は大阪肛門病院という名称でした) 

 

そうして当院の名前を思い出し、ブログを探し出して共感し当院への受診を決められたそうです。   

 

初診では脱肛と出残り便秘と診断し、排便の管理・止血坐薬による治療を開始しました。 

 

治療により出血は軽快しましたが、脱肛に対しては十分な効果がありませんでした。   

 

2回目の診察のときに、 

 

「できてしまった痔核はなくなりませんが、棺桶まで持って行く、という人もいますよ」 

 

と申し上げたところ、 

 

「私は、機嫌のいいおばあさんになりたいと思っています。身の回りのことをすることもおぼつかなくなった時に、大出血や脱肛の処理等の心配をしなくてもいいように、不安材料は取り除いておきたいのです。」 

 

と明快なお返事で手術を希望されました。 

 

なるほど、手術を迷っているなら急ぐことはないのですが、手術の決心をしているのなら早い方が良い

 

年齢を重ねると加齢による不具合から手術が出来ない場合もある、とお話ししました。 

 

当院では手術を即決するのはお勧めしておりませんので、ご帰宅のうえ熟考していただくことにしました。 

 

後日、手術を決めたらご連絡をいただくという約束だったのですが、結局帰宅途中で家に着く前に決心、その場から電話をいただき、手術の運びとなりました(笑)。

 

麻酔のこと、手術中のこと

この方、麻酔の注射が痛かったようで・・。 

 

こんな風におっしゃっていました。 

 

「麻酔の注射は痛かったです。麻酔はチクチクする、と思い込んでいたのですが、実際はチクチクでは終わらず、『チクチク、チクチク、ヂクヂク・・』と何度も続くんですね!

 

うわっ、痛!と思い、しかも呼吸を意識しすぎて、意識すればする程、次は吸うのか吐くのか考えて息を詰めるという悪循環のミニパニックに陥りました(笑)。

 

看護師さんが『トン・・・トン・・・』とリズミカルに、柔らかく、ゆっくり背中を叩いて下さるリズムに助けられて落ち着きを取り戻し、何とか普通の呼吸に戻る、と言う状態を、繰り返していました。

 

私はうつ伏せに寝ていただけなのですが、その状態で、浅い呼吸でアップアップしていることがわかって、適切に助けて下さった看護師さんに本当に感謝しています。 

 

この患者さん、以前受けた別の手術で過呼吸になったそうで、今回はそうならないように、と相当緊張しておられたようです。 

 

手術が始まったらちゃんと麻酔が効いて痛くはなかったそうです。 

 

ただ、柔らかくて重いものに「ドーンドンッ」と押されているような感覚があったとおっしゃっていました。

 

手術後と当日のこと

本当に緊張していたらしく、手術を終えて病室に帰るために身繕いをしている時、しばらくガクガク震えておられました。 

 

震えることで緊張の固まりが溶けて行く気がした、ということです。   

 

術後しばらくしてから手術医(私です)がお部屋を巡回します。 

 

その時、余りに普通の様子だったので「ヒマだったら4階の図書館に行ったら?」とお勧めしました(笑)。 

 

ご本人はなんとなく「部屋で休んでいるもの」と思っておられたようで、「え?良いんですか?」と、さっそく4階の図書館に行ったそうです。   

 

さて、気になる痛みですが、手術後は、痛み止めを飲んでいただきます。 

 

当院では基本的に痛くない人にも飲んで頂きます。 

 

この方の場合 「ジーンとするような痛みこそありましたが、思わず顔をしかめるような痛みとは無縁でした。」 とおっしゃっていました。   

 

また手術当日の夜は眠気に勝てず夜9時頃に寝てしまったそうです。 

 

眠気に勝てずというのは、 

 

早く寝る → 眠前の下剤を飲む時間も早くなる → 夜明け前に初回の排便 

 

初回の排便は痛いと聞いているし、夜明け前に出たらどうしよう・・という恐怖で、せめて消灯の夜10時まで頑張るつもりだったそうです(笑)。   

 

ちなみに、その夜3時頃に目が覚めたそうです。 

 

でも下剤のせいではなく、ナースコールが「ポーン」と音がなったためだったとか。 

 

「玄関のインターホンの音?」と一瞬思ったけれど、ご自身がナースコールのボタンに当たってしまったのだ、と気付いたそうです。 

 

結局約6時間、自宅で寝ているかと錯覚するほど眠りこけていたらしいです(笑)

 

手術翌日

手術の翌日、術後最初の排便は「さぞ痛いのだろう」と身構えておられたそうですが、幸い大した痛みではなかったとのこと。 

 

いつも手術直後に切除した痔核をお見せするのですが、その様子から肛門はオソロシイことになっているはず、と考えおられたようで、「あらら?!その割には痛くない」と拍子抜け?したようです。 

 

この方も通例通り翌日に外出許可したのですが、コンクリートの道路はコツコツとオシリに響いたそうで、診療所のあるブロックを一回り散歩してコンビニに寄っただけで戻って来られました。

 

診療所の廊下はオシリに響くことはなかったそうです。

 

スリッパだからでしょうか? 

 

この日、痛み止めは早朝3時過ぎに飲んだのも含め、3回飲んだそうです。

 

術後2日目

図書館の本を読んで過ごしておられましたが、まっすぐ座るよりもちょっとずらした方がラクチンだったようです。

ご本人によるとまともに座れないことはないものの、その方が楽」とのことでした。

 

術後3日目に出勤!

術後3日目、勤務先から「急ぎの仕事があるから来られないか」との要請があったとご相談がありました。 

 

ご本人は「タクシーで往復して1時間くらい仕事をしたい」とおっしゃったのですが、私は「経過も良いですし往復とも歩いたら?」とお勧めしました。 

 

結局、往きはタクシー、帰りは徒歩で、2時間余り、普通に働いて来られました。

 

術後4日〜退院まで

術後3日目~4日目頃、それまで痛くなかった部分にピリピリとしみるような痛みを感じる様になったというご相談がありました。

 

ちょうど持続麻酔が切れる時期にあたるため、問題なしと判断しました。   

 

色々とイベントを催した時期ですが、院内コンサートも楽しく参加されました。 

 

もちろん食事毎の、入院患者さん同士での会話も楽んでおられるご様子でした。   

 

あと退院前日にはみのり先生によるTRE指導がありました。 

 

TREとはエクササイズの一種、つまり運動ですね。 

 

手術直後に運動なんてできるかどうか心配する患者さんも多いのですが、この方は「ここまで動いても大丈夫という動きを具体的に確認できて安心した」ということでした。   

 

実はこの時期、良好な経過とは裏腹にあれこれと心配事の相談が多かったこの患者さん。 

 

後から、こんな風におっしゃっていました。   

 

「今考えると、無闇にあれこれ心配になっていた時期でした。 

 

その時々の状態が、手術後の経過としては普通の状態なのか、普通ではないのか、の判断がつかず、細かいことでも不安になり、入院中は毎日、退院してからも、診察を待ちかねて質問をし続けました。 

 

手術後のオシリに慣れていない為の不安や麻酔が切れ始めた為の症状等々、その都度、丁寧に対応して下さったのですが、普通に起こる症状であるにもかかわらず、空騒ぎした患者だったと、手術後1ヶ月半ほど経った今では少し反省しています。 

 

『少し』にしたのは、今後もどうすればよいかわからないこと、不安なことがあれば、相談に駆け込むに違いないと思いますので。」

 

 

次回に続きます

この患者さんには 「もっと早く受診しておけばよかった」 と言っていただきました。 

 

ありがたいことです。 

 

でも、私はいつも思うのです。 

 

そんな風に思っていいただける今が、ちょうど良い時期だったのではないでしょうか」   

 

次回は長文になったこの記録に少し解説をつけたいと思います。

 

 

 

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