長い間、息子の髪は私が切ってきた

息子は生まれてから

美容室に3~4回くらいしか行ったことがない

 

 

 

不登校になって5年の間に

1回だけ美容室に行ったが

私は息子が髪を切り終えるまで待っていたし

息子もそれを当たり前としていたと思う

 

 

 

私がカットすると毎回マッシュな髪型になる

だから数年間、同じ髪型の息子

 

 

中学生になったことと

私の行きつけである1席のみの美容室の

アラサーの気さくな美容師さんが

人柄も技術も信頼できると感じていたので

 

 

「そろそろ美容室で髪切らない?」と

息子にやんわりと勧めてみた

 

 

「別にいいけど」

意外に息子はあっさりと承諾した

 

 

事前にネットで「中学生 男子 髪型」で検索

息子と相談しながら

夏らしく短めな髪型を選ぶ

「これ、いいじゃん」なんて言いながら

 

 

 

「不登校あるある」な

予定していた当日のドタキャンに

ならなければいいけど、という心配は

1ミリも必要なく

 

 

 

最近買ったショルダーバッグに

財布やスマホを入れて

時間より早く準備を終えた息子

 

 

 

道順を教えながら

歩いて一緒に美容室に向かう

 

 

お店に到着した後

美容師さんに髪型の画像を見せてから

「1時間後くらいに迎えに来ます」と伝えて

私は一時帰宅した

 

 

自宅で1人になったのは数年ぶりのこと

息子が脱ぎ捨てていった部屋着が

ソファに転がっているのを見て

不思議な気持ちになる

 

 

寂しくもなく

嬉しくもなく

「無」な感じだった

 

 

そろそろ迎えに行こうを家を出たところで

息子から「終わった」とLINEが来た

「まだ家を出たところ」と伝えると

「帰る」と一言の返信

 

 

灼熱の午後、美容室までの道のりを

まだあの「無」の感情のまま歩く

 

 

 

ちょうど長い真っすぐな道に差し掛かった時

豆つぶみたいな人影が見えた

息子だ、一瞬でそう分かった

 

 

 

歩いてくるその姿は

家の中で見ている彼とは少し違って見えた

 

息子は途中で

私も歩いて来ていることに気づくと

小さく手を振ってきた

 

 

そして少しだけ早歩きになって

こちらに向かってくる

 

 

そこでやっと私は「嬉しい」という感情が湧いた

ああ、私は嬉しかったのか

それにやっと気が付く

 

 

 

道の途中で合流すると

短く爽やかな髪型になった息子が笑っている

 

 

 

「美容師さんに『お母さんのこと、待つ?』って聞かれたけど、

『場所わかるし、帰ります』って言って帰ってきた。

めっちゃいい人だったよ。シャンプー気持ち良かった」

 

 

 

大人に対して不信感の強い息子が

おそらく初めて大人を「いい人」と認定した

 

 

 

1人で道を歩くのも

親不在のまま、外で時間を過ごしたのも

バリカンで髪を切ったのも

本当に久しぶりだったと思う

 

 

 

ほんの少しだけ

背中を押してみることも必要だと実感した

 

 

この日は息子が

世界とちょっぴり仲直りできた日になった

ああ、嬉しいかも