それは私が新入社員だった頃の話。
父方の祖母の四十九日の法事の日。僧侶の読経が続く中、だんだん読経の声が遠ざかって行く。まるで透明のバリアを張られたように視界も悪くなる。怖くなって何か声を出そうとするが、出ない。
このままだと私、死んじゃう?と思った瞬間、隣にいた母が私の肩をバシバシ叩いた。
後で聞くと、私の様子がおかしかったからこれは金縛りだと思い、とにかく断ち切ろうとして叩いたという。
母は祖母が来ていて、何かを伝えたかったのだろうと言った。しかし、私は祖母と会う機会が少なかった。正月の挨拶ぐらいだった。会えば話もまあまあはずむのだが。伝える相手を間違ったのではないのか?
それ以来、金縛りの経験はない。あれは何だったのか。不思議でならない。