優斗は、3年に進級した。文科系を選んだクラスはそのままの持ちあがりのため、メンバーはそっくりそのままであるが、教室だけは旧校舎の1階になった。
担任の教師も変わらず、結局3年間同じ担任となり、まったく変わり映えがしない。
3年生にもなれば、杏子の言うようにそろそろ本気で受験に備えなければならないかなと優斗も思うのであるが、一方では、あと1年で楽しい高校生活も終わってしまうのかと思うと級友たちとバカなことをしながらもっと遊びたいという気持ちもあった。
杏子は、あれからどんな気持ちでいただろうか。どんな顔して登校してくるだろうか。自分は、どんな態度で接したらよいのだろう。
案外、気持ちが変わって、まだ付き合おうとあっさり言ってくれないかなと淡い期待を抱いているのが本音であった。
朝のホームルームが始まると、改めて担任のあいさつがあった。杏子はまだ来ていない。杏子はどうしたのだろう。別れ話をしたので、バツが悪くなったのだろうか。
休み時間になると橋口が話しかけてきた。
「杏子どうしたの?」
「知らない」
優斗は、面倒臭そうに答える。
「知らないって、何も聞いてないの?」
「聞いてないよ」
「加奈子! 加奈子は杏子のこと知らない?」
橋口が他の女子と談笑していた加奈子に声をかける。二人はまだ付き合い始めたばかりなのに加奈子に対してもうおれの女みたいな偉そうな態度をしている。
「私も知らないよ。どうしたんだろうね」
加奈子もほんとに知らないようだ。今日の今日だから加奈子だって知らないだろうと優斗は窓の外を見る。
「優斗、電話してみれば?」
「いいよ。明日になれば来るんじゃないの?」
「なんか、冷たいじゃん」
「だって、俺たち別れたんだもん」
「え?」
驚いて大きな声を上げたのは加奈子の方だった。
「どうして?」
加奈子が喰いついてきた。
「どうしてって、向こうから別れようって言い出したんだ」
「ええ、そうなの?どうしたんだろう?何かあったの?」
「知らないよ。何もない。何もないけど一方的に言われた。ああ、そうそう、受験勉強に専念したいんだとか・・」
「ええ?そんなあ・・・」
加奈子は、橋口に何か言いたそうであったが、ほんとかなあと訝しがりながら女子の輪に戻っていった。
今度は橋口が急に手で口を押えながら小声で訊いてきた。
「杏子とどこまでいった?A?もうCくらいやったんだろう?」
橋口はにやけている。
「何もしてないよ」
「え?何もって、Aもしてないのかよ」
「ああ、Aはした。1回だけね」
「何やってるんだよ。何か月付き合ってると思ってるんだ。きっと、それだよ。何もしてくれないから飽きられたんだよ。勉強なんて、言い訳だよ」
「そうかなあ?」
そう言えば、なんとなく杏子の方が積極的だったような気がする。そうなのか?橋口が言っているとおりなのか?ならば、これからだってまだ間に合うはずだ。
明日、杏子が来たらもう一度話し合ってみよう。優斗は、微かな希望が湧いてきた。
「ところで、橋口たちはもうやったのか?」
今度は、優斗の応酬だ。
「俺たちか?俺たちはまだだよ。まだ、日が浅いし、いきなりってわけにはいかないだろう。ガツガツするとみっともないしな」
そう言って、橋口は笑った。
橋口とそんな話をしているうちに優斗は少し元気が出てきた。
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本日取り上げるアルバムは、EMMYLOU HARRISの『WRECKING BALL』(1995年)である。
エミルーの18枚目のスタジオ・アルバムで、タイトル曲はニール・ヤングの作である。
他にも有名なところではボブ・ディランやルシンダ・ウィリアムス、ジミヘンの曲まで取り上げている。
ダニエル・ラノワという人のプロデュースで原曲を彼なりに再構築したような作品に仕上がっている感じで、これまでのカントリー・ロックとは一味違う。
一曲目の「Where Will I Be」を聴いた瞬間、JAZZ?と思ったのは、ドラムにブライアン・ブレイドが参加していたからか。でも、曲調はまったくジャズっぽくないけれど(笑)
「Wrecking Ball」には、ニール・ヤングもバック・ボーカルで参加。ルシンダの「Sweet Old World」ではルシンダ自身もアコギでサポート。ここでもニールがバック・ボーカルとハーモニカで参加していて、アルバムの中では一番気に入った曲である。
「Goodbye」というスティーヴ・アールの曲もいい。このアルバムも聴きこむとジワジワと良くなってくる作品かなと思う。
Emmylou Harris - Wrecking Ball - 1994-02-10 [remastered] - YouTube
