もうじき3学期も終わろうとしている。今年はどうやら優斗もスムースに進級できそうである。

 杏子との関係では、初キスができたことで精神的に余裕ができたものの、それ以上の進展はない。考えてみれば、キスのタイミングも杏子のモーションのおかげだし、そもそも付き合い始めたきっかけも奈良の室生寺で杏子が傘をさしかけてくれたことだった。

 これでは男として情けない。

 次の“段階”は、必ず自分がリードするんだと心に決めていた。

 一方、橋口も、やっと熱意が伝わって加奈子と付き合い始めていた。

 

 優斗は、春休みになったらアルバイトをしようと考えていた。毎月、親から小遣いはもらっていたがすぐにレコードを買ってしまい、月末には金欠状態でヒーヒーしていたのである。

 杏子と付き合い始めてからは、デート代に費やすために欲しいレコードも我慢していた。アルバイトで稼いだら、デート代のほかにレコードにも回したい。欲しいと思ってたアルバムがたくさん溜まっていた。

 過去にもアルバイトは経験していた。友だちの母親が勤めている冷凍食品の生産工場で募集しているからとやったことがあった。優斗の仕事は、段ボール箱を組み立ててラインに流す担当であった。さほど辛いものではないが、ゆっくりやっているとすぐに足らなくなりラインをストップさせてしまうので、結局、ベルトコンベアーに追い立てられる毎日であった。

 農機具の工場にも行ったことがあった。これもラインに入る仕事だったので、モタモタしていると迷惑をかけてしまうので大変だった。ただ、この工場では昼食が提供され、従業員と一緒に食堂で食べさせてもらえたのでそれが楽しみであった。

 

 春休みの前半、優斗はアルバイトに専念した。

今回のバイトは吉本が探してきたもので、橋口と3人で行くことにしていた。

 仕事の内容は、建設業の日雇いであった。吉本が探してきたにしては肉体労働できつそうだ。しかも、服も汚れるだろうから、あの吉本が続くかどうか優斗は訝しがった。

 実際、やってみると意外に楽であった。高校生相手のためか、建設業とはいえ主に現場の後片付けや掃除くらいだった。

 バイト先の会社は、通学で利用している駅から数分歩いたところにあった。

 朝の8時までに行くとそれぞれ現場に割り振られ、終わって戻るとその場でその日の給金がもらえるのである。正に日雇いである。

 優斗たちのような高校生は珍しく、ほとんどが中年以上の作業着を着た男性ばかりであった。割り当てられる現場もほぼ毎日違う場所で、優斗たちが同じ現場になることは稀だった。

 朝、指示されると会社の従業員と一緒に車に乗り込み現場に向かう。時には、ヘルメットとスコップを持たされ電車に乗っていくこともあった。

 世は高度経済成長期の終焉を迎える頃であったが、団地の建設は続いており中層住宅の建設現場が多かった。階層ができあがったところの端材やごみを掻き集め、トラックまで運ぶ仕事がほとんどで、午後早くに終えて休んでいる時間も多く、比較的楽であった。

 一回だけ、基礎工事の現場で生コンを運ぶ作業をやらされたことがあった。生コンをミキサー車から通称ネコと呼ばれる一輪車に入れて、鉄筋を組んだ基礎部分に流し込む作業である。

 家の農作業で多少の肉体労働は経験していたが、梯子板の上をバランスを取りながら重たいネコを操るのはなかなか難しい。よろけて、危く大事な生コンをこぼしそうになったことも何回かあって、その度に近くの職人が助けてくれた。さすがにその現場は疲れた。

 それでも、仕事が終わって会社に戻れば現金で一日分の賃金がもらえる。これが魅力だった。それに、気が向かなければ休んでもいいし、いつでも止められるのだ。春休みの短期にやるバイトとしては、丁度いいと思った。

 橋口はまじめに一生懸命働くので、職人からも褒められていたようだが、案の定、吉本は2日で辞めてしまっていた。

 優斗は、春休みの前半、休みなく出勤したので、それなりの軍資金が調達できた。これを使い、この休み中に杏子とどこかへ出かけたいと考えていた。

 

 

 

 

 

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 さて、本日取り上げるアルバムは、JAMES TAYLORの『MUD SLIDE SLIM』(1971年)である。



 

 ジェームス・テイラーの3作目のスタジオ・アルバムである。

 

 JTを聴いていると心が穏やかになる。

 歌詞の意味は翻訳アプリで訳してみることもあるが、積極的にはそれをしないでサウンドだけで楽しんでいる。

 バックは、ダニー・クーチマーやラス・カンケルなどお馴染みのメンバーにキャロル・キングも全面的にサポートしている。ジョニ・ミッチェルもバック・ボーカルで数曲参加している。いずれもアコースティックなサウンドが心地よい。

 

 キャロル・キングの「You've Got a Friend」とダニー・クーチマーの「Machine Gun Kelly」を除いて全曲テイラーの作品である。

 

 ちなみに、「You've Got a Friend」は、テイラーにとって唯一のビルボード・チャートの1位を獲得した曲である。

 

 「Mud Slide Slim」、「Hey Mister, That's Me up on the Jukebox」、「You Can Close Your Eyes」、「Long Ago and Far Away」、「Highway Song」などいい曲が揃っていて、聴けば聴くほど染みてい来る。

 

James Taylor & Carole King - You've Got A Friend (BBC In Concert, 11/13/71) - YouTube

 ※キャロルキングと


 

You Can Close Your Eyes (HD) - James Taylor & Carly Simon - YouTube

 ※こちらはカーリーサイモンと