遊園地が楽し過ぎて、帰るのがいつもより遅くなってしまった。杏子の家は、門限が厳しいらしい。
優斗は、杏子と一緒にその駅で降りて、杏子がバスに乗るまで見届けてあげようとした。
駅前のバス停は、いつもよりかなり混んでいて、乗客の列が長く繋がっていた。
何だろう。
待っている人に訊けば、何かのトラブルのようでかなり遅れているとのことであった。
「困ったな。どうしようか」
優斗が思案気に眉を寄せると
「優斗は帰っていいよ。大丈夫だから」
杏子は、そう言って微笑むが無理しているのが優斗にはわかった。
「私、歩いて帰るよ」
「え?家まで歩くの?」
優斗は驚いて顔の前で手を振る。徒歩で帰るには、小一時間かかりそうである。
「門限には間に合うから、大丈夫」
「じゃ、送って行くよ」
「ええ? 私なら大丈夫よ。優斗が帰るの遅くなるから」
「いや、危ないよ。それに、うちは門限無いから大丈夫。さあ、そうと決まったら行こう」
そういうと、優斗は杏子の手を引いてさっさと歩き出した。
駅から少し離れると店舗や街灯が減って、辺りは急に暗くなった。やっぱり、送ることにしてよかったと優斗は思った。
「今日は、楽しかった。ありがとね」
杏子のテンションは、遊園地からまだ引きずったままだ。
「うん、楽しかったね」
実のところ、優斗はへとへとだった。杏子に引っ張りまわされた挙句、苦手なジェット・コースターにも乗らされて、特に観覧車での情けなさに、内心、意気消沈していたのである。
「今日は、月が明るいね」
杏子が見上げた夜空にはほぼ満月に近い月が浮かんでいて、幼い二人を煌々と照らしていた。
しばらく歩くと、杏子の家近くの交差点まで到着した。すると、突然、赤信号を無視したスポーツカーが猛スピードで走ってきたのである。
優斗は、反射的に杏子をかばうように両手で抱え込むと、一瞬、二人は抱き合う形になってしまった。
優斗が「危ねえな・・」と言おうとすると、ふいに杏子が顔を寄せてきた。優斗はそのまま自然に杏子の唇に重ねていた。杏子の唇は、柔らかく温かい。甘い香りもした。
唇を話すと杏子は照れ臭そうに微笑んだ。
優斗は我に返ると急に周りを見渡してソワソワしだす。誰にも見られていないことを確認すると改めて余韻を引き戻そうとした。
優斗が繋いでいた杏子の手を離し、肩に回すと、杏子は空いた手を優斗の上着のポケットに入れた。
「あったかい」
しばらくこうしていたかったが、すぐに杏子の家が見えてきた。
「ここでいいよ」
杏子が立ち止まる。
「じゃあ、また、明日。気をつけて帰ってね」
「わかった。お休み」
杏子は、玄関のドアの前に立つともう一度振り返り、優斗に手を振った。
優斗も手を振ると、杏子が家に入っていくのを見届けてから踵を返した。
(やったぜ)
自然にスキップが出る。心を躍らせているとバスが優斗を追い越していった。
(あ、駅までの奴だ)
「あ、乗ります~!」
優斗は、バスに手をあげながらバスを追いかけて走った。
ффффф ффффф ффффф
昨日の雪はサラサラでふわふわ。溶けるのも早かったので雪かきせずに済んだ。
溶け始めた雪を慌ててかき集めていたかみさん。何をするかと思えば雪だるまをたくさん作っていた(笑)
さて、本日取り上げるアルバムは、秦基博の『コントラスト』(2007年)である。
私の好きなスガ・シカオもかつて所属していたオフィス・オーガスタのシンガーソングライター。彼のファーストアルバムである。
彼の作る楽曲、特に詞は青春時代の心境とシンクロする部分が少なくなく、聴いていると若い頃を思い出して、いい歳したオヤジがせつなくなるのである(笑)
大好きなシンガーの一人である。
ちなみに今回の投稿は、「僕らをつなぐもの」からインスパイアされて書いた。
大袈裟かも(笑)
秦 基博 - 「僕らをつなぐもの」 Music Video - YouTube
秦 基博 - 鱗 (うろこ) / THE FIRST TAKE - YouTube

