吉本秀一は、優斗にとってはとっつきにくい印象であったため、無意識に距離をとっていた。

噂によると、吉本は、中学校時代はかなりヤンチャをしていたということである。小学6年の時に父親を交通事故で亡くし、中学校に入ってから悪い連中と付き合い始めたらしいが、何かの事件があってから心を入れ替えて勉学に励むようになったとのことである。

 そんな過去があったからなのかも知れないが、時折、陰のある表情をするときがあり、優斗はそれを見逃さなかった。

吉本は、沼田浩美とは仲が良かった。優斗が沼田と弁当の件で絡んでいるのを見ていて、いつしか吉本の方から声をかけてきた。

「斎木は応援団辞めたの?」

「うん、もう辞めた」

「何で辞めたの?」

「まあ、いろいろと思うところがあってね」

 優斗は、詳細に理由を説明するのが面倒くさくて、答えを濁した。

 そこへ沼田が割り込んできた。

「え、なに?優斗、応援団だったの?」

「知らねえの?ほら、去年の文化祭、体育館で演技やってたじゃん」と吉本。

「え、そうなんだ。おれはうちで寝てたからな」と沼田は笑う。

「優斗が応援団だったとはな。イメージわかねえよな」

沼田がまた笑う。

「もういいよ」

 優斗が元応援団だったことは意外に知らない連中も多かった。“全国区”だとばかり思っていたが、少し思いあがっていたのかもしれない。そんな自分が恥ずかしかった。今では応援団の話を持ち出されるといい気持ちがしない。

 ふと、沼田の後ろの方から視線を感じた。現役応援団員の田村徹がこちらの様子をうかがっていたのである。優斗は話題を変えようとしたが、なおも吉本が続ける。

「応援団、続けていればよかったのにな。かっこいいじゃん」

 吉本が真顔で言う。

「そうでもないよ」

 優斗は、そう言った瞬間、しまったと思った。田村がまだこっちを見ていたのである。

 

 田村は、今も団員を続けていた。田村に対しては先に辞めてしまった後ろめたさがないと言えば嘘になる。

 他の男子たちが“斎木”と名字を呼び捨てにするのに対し、田村だけは、なぜか未だに優斗を君付けで呼ぶのである。それは、一年の時から変わらない。一方、沼田だけは最初から名前で呼んでいる。

 それは自分に対する“親近感”や“距離感”みたいなものを表しているように優斗は感じていた。

 

 

 

 

 さて、本日取り上げるアルバムは、ALISON KRAUSSの『FORGET ABOUT IT』(1999年)である。

 



 アリソン・クラウスは、アメリカのカントリー・シンガーでフィドル奏者でもある。

彼女の作品を取り上げるのは3回目だったと思う。

 

 ユニオン・ステーションというブルーグラス中心のバンドとの活動が多いようであるが、今回取り上げたのは彼女のソロ・アルバムである。

 

ソロ・アルバムでは、ポップな感覚で、全体的にゆったりとした穏やかな曲が多く、囁くような優しい声に癒されるのである。アコースティックなサウンドも心地よい。

 

曲は自分で作ることは少ないようで、バンドのメンバーやこのアルバムでは、マイケル・マクドナルド、トッド・ラングレン、アレン・レイノルズ、ダニー・オキーフェらの曲を取り上げている。

 

お気に入りの曲は、「Stay」や「It Woudn’t Have Made Any Difference」、「Empty Hearts」、「Ghost In This House」、「It Don’t Matter Now」